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大臣の辞任でささやかれた「国会議員の特権」とは

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●国会議員の「特権」についての一般論

甘利明大臣が金銭スキャンダルで辞任する騒ぎの前後で、気の早い向きから「大臣は衆議院議員だから国会開催中は逮捕できない」ゆえに、捜査関係者はどう動くのかという憶測も流れました。まあ甘利氏の場合はあくまで疑惑段階なので、不祥事そのものは置いておいて、国会議員(衆議院議員と参議院議員)にどのような特権があるのかを振り返ってみましょう。

まず、話題の不逮捕特権についてです。議員活動を保障するという目的で、国会議員は国会会期中に逮捕されません。院外での現行犯逮捕は除きます。どうしても逮捕したければ国会終了を待つか、裁判所が逮捕状許諾請求を内閣に行います(書面)。ここで「だめだ」と判断されれば逮捕は不可能になります。「いい」となったら閣議決定をして議員の所属する院に逮捕許諾決議案を示します。まず、議院運営委員会での審査となります。この際、捜査側は議運に捜査情報を知られるので、それを嫌って許諾請求をしないケースもあります。議運が否決したら請求も却下。過半数の可決で本会議に上程されて採決し、過半数の賛成で決議となり逮捕が可能となるのです。

 

●法務大臣の「指揮権発動」もある

法務大臣が検察を指揮する「指揮権発動」で許諾できなくなる場合もあります。唯一の例が1954年、いわゆる「造船疑獄」を調べていた東京地検特捜部が、佐藤栄作自由党幹事長(衆議院議員)を収賄容疑で強制捜査したいと決め最高検察庁が許諾請求しようとしたのに対して、犬養健法務大臣が検事総長(検察トップ)に「重要法案の審議中である」という理由で逮捕の延期と任意捜査への切り替えを指示しました。佐藤幹事長を目にかけていた吉田茂首相の意向を受けての判断と思われます。

また会期前に逮捕された議員であっても、所属する議院の釈放要求決議があれば会期中は釈放しなければなりません。決議には議員20人以上の連名で、理由を述べた要求書を議長に提出しなければならないと定められています。現憲法下では例がありません。

他にも特権はあります。不逮捕と並んで有名なのが免責特権で、憲法51条は「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」とあります。

1985年、民主党の竹村泰子衆議院議員が、ある精神病院の院長が女性患者にレイプや強制わいせつをしている様子を生々しく指摘して大臣の見解をただしました。渦中の病院長は「死をもって抗議する」としたためた遺書を残して自殺。妻が竹村議員と国を相手取った国家賠償法による損害賠償を請求しました。1審の札幌地裁と2審の札幌高裁は免責特権を認めて原告敗訴、最高裁も免責特権そのものには触れないまでも棄却して確定しました。

もっとも憲法は同時に「両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする」(58条2項)と「院内」の懲罰は定めています。何でもやり放題とはいきません。

では院内で殺人や傷害など「松の廊下」のような事件が起きたらどうなるのでしょうか。議長が、院内の警察権を執りおこなう国会職員である衛視や、場合によっては警察に拘束させる命令を下せます。必要と判断すれば警察へ引き渡します。

 

●歳費(給料)特権は「公の性質」

最後に歳費(給料)特権。正式な歳費の月額は約130万円。期末手当の約635万円を加えると年収は約2200万円。当選回数は関係ありません。

これが高いかどうかの議論はさておき、国会議員には歳費以外のお金もたくさん出されます。文書通信交通滞在費が月額100万円(年間1200万円)。「公の性質」を帯びた「文書」「通信」「交通」「滞在」に使うとあるものの、それ以上が明文化されておらずきわめてあいまいです。そうでなくとも国会議員は1)月4回往復分の航空券(2)月3回往復分の航空券とJRパス3)JRパスのみ、の1つを選択できます。JRパスを使えばすべてのJRがただ。1)は沖縄県のように選挙区にJRがない議員。2)は選挙区間の往復に航空機が必要な議員が申請できます。かつてでしたら遠距離や海外の電話は長話したら途方もないカネがかかりましたが、今ではメールやスカイプを使えば事実上無料に近くなっています。しかも非課税の上に領収書の提出もいらないというブラックボックスです。年間1200万円を何に使ってもわからないというのでは、国民は納得できないでしょう。

さらに法律を作るための研究などに充てる立法事務費が議員1人につき月額65万円が会派に、年間約320億円の政党交付金が政党に入ってきます。これらはただちに議員個人の収入とならないものの、おそらく数百万円はもらっているでしょう(政党交付金を拒否している日本共産党を除く)。合計すると4200万円程度は確実に入ってきているはずです。

都心の一等地に10万円を切る月額家賃で住める議員宿舎(東京23区に自宅がある議員は除外)も用意されています。先進国で完備しているのは日本ぐらいです。

さらに政策秘書、公設第一秘書、第二秘書の3人を雇えます。いずれも国費から給料が出て、3人合わせて年間2000万円から2400万円ぐらい支払われています。公設第一と第二は資格が要らないのでちゃっかり家族を据えている場合もあります。こうなると実質的な給与でしょう。全国会議員で360億円ぐらいになる計算です。

※記事の内容は執筆者個人の見解であり、早稲田塾の公式見解ではありません。