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補欠選挙

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●1議席に国内から注目

衆議院京都3区選出の宮崎謙介議員が女性スキャンダルで辞職し、後を決める補欠選挙(補選)が2016年4月24日投開票で実施される運びとなりました。

公職選挙法は

9月16日から翌年の3月15日までに必要が生じたら4月第4日曜日に投開票

3月16日から9月15日までに必要が生じたら10月第4日曜日に投開票

と定めています。宮崎議員は2月に辞職したので16年の4月第4日曜日すなわち24日に行われるのです。この日は15年6月に死去した北海道5区の町村信孝議員の後を決める補選も実施されます。公職選挙法の規定通りであれば去年の10月第4日曜日が投票日のはずでしたが、ちょうど14年総選挙の「1票の格差」を巡る裁判が進行中で原告は「選挙無効」も訴えていたので見送り、最高裁の判断が出たので4月の補選となりました。

衆議院と参議院の議員が死亡や辞職などで「欠けた」場合に空白を埋めるため原則として行われます。任期は前任者の残りを務めます。せいぜい1人か2人を選ぶ程度で717人もいる国会議員の勢力図の大勢に影響はありません。ではどうでもいいかというと……これが大違いなのです。「たった1議席」でも国会議員を選ぶのでテーマは国の政策となります。となると衆議院であれば全国475議席を一斉に決める総選挙より「たった1議席」ゆえに日本中の注目が集まるのです。各党もトップを選挙区に送り込むなどヒートアップするのが通例です。結果として政権を揺るがす事態へと発展したケースも過去にありました。


●死守か奪還かが見どころ

補選のみどころはまず「議席死守か奪還か」です。基本的に前の議員が所属した政党の公認・推薦候補が勝たないと「負け」です。補選が行われる理由が前議員の死去や病気などによる任期中の引退、自治体首長選挙出馬に伴う辞職などであれば比較的たやすく「死守」できます。死去の場合は「弔い合戦」の旗も振れますし。町村氏のケースはこちらにあたります。町村家は国会議員としては2代に渡る名門で、娘婿(むすめむこ)を自民党が公認しました。野党は無所属の池田真紀候補を擁立し、民主、維新の党、共産、社民などが推薦します。

自民としては絶対に勝たなければならない選挙です。池田候補を応援する野党にとっては勝利して野党統一の力を全国に発信したいところです。

一方で「政治とカネ」など不祥事に起因して前任者が辞める、といった経緯をたどると話は違っています。後任候補へ風当たりが強くなるからです。ゆえに後任候補は勝って「みそぎを終えた」とするか、対立候補が勝って「国民は不祥事を許していない」と満天下に叫ぶかの戦いとなります。「国政への影響」も判断できます。宮崎議員のケースはこちらで同じ選挙区で先の総選挙で敗れ、比例区で復活当選している民主の候補が立候補しています。自民党本部は「到底勝ち目はない」と踏んで不戦敗にする予定です。仮に候補者を立てて敗れたら北海道で勝っても「1勝1敗」なので、候補を立てず「1勝1不戦敗」の方が、ダメージが小さいと判断したもようです。

過去にあった政局の節目ともなった補欠選挙の例を挙げてみます。


●税制や汚職事件で野党勝利

1987年3月の参院岩手補選では、当時の中曽根康弘首相が言い出した「売上税(今の消費税に相当)導入」にほぼ「反対」を唱えただけで日本社会党(当時の野党第一党)候補が圧勝して「(当選は)中曽根さんのお陰です」と皮肉られ(岩手ショック)、それもあって売上税撤回に追い込まれました。

1989年2月、自民前職の死亡にともなう参院福岡補選では、社会党公認候補が当時の竹下登政権が導入を進めていた「消費税導入」と前年に発覚した「リクルート事件」に嫌気して自民党候補に完勝しました。

1992年3月の参院宮城補選は、労働組合の中央組織「連合」を基盤とした候補が大接戦の末に自民党公認候補らを退けて初当選しました。東京佐川急便事件などの相次ぐ政治家のスキャンダルに県民の怒りが爆発し、当時「とりあえず自民に」が当たり前だった宮城での勝利は連合の山岸章会長が「スリルとサスペンス」と振り返るほどの激戦でした。89年と92年の結果は、背景に関税貿易一般協定(GATT。今のWTOの前身)のウルグアイ・ラウンド(1986年~94年)で迫られていた「コメ市場の開放」に定まらない姿勢をみせていた政府・自民党に農家が批判的な視線を向けていた点で共通します。

自民党前職が市長選立候補のため辞職して行われた2008年4月の衆院山口2区補選は、民主党公認候補が自民党新顔を破って議席を奪取しました。民主党候補はガソリン税などの道路政策、いわゆる「消えた年金」問題、告示日から保険料天引きが始まった「後期高齢者医療制度」を攻撃材料にして、自民党王国の山口で金星を挙げました。翌年に実現する民主党政権を予感させる結果でもありました。


 

 

※記事の内容は執筆者個人の見解であり、早稲田塾の公式見解ではありません。