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GOOD PROFESSOR

慶應義塾大学
総合政策学部 大学院 政策メディア研究科

岡部 光明 教授

岡部 光明(おかべ・みつあき)教授
1943年香川県生まれ。68年東京大学経済学部卒。68年日本銀行入行。94年に同行を退職するまでに、ロンドン事務所副参事・金融研究所参事など歴任。この間71年に米ペンシルベニア大学大学院MBA取得。90年より日本銀行からの派遣で、米・オーストラリア3大学の客員教授および教授を歴任。94 年より現職。

著作は『総合政策学の最先端Ⅰ(編著)』『大学生の条件 大学教授の条件』(ともに慶應義塾大学出版会)、『環境変化と日本の金融』(日本評論社)など多数。
岡部先生のホームページhttp://web.sfc.keio.ac.jp/~okabe/

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情報技術革新を切り口とした金融研究

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス正面

慶應義塾大学SFCは藤沢市(神奈川県)の緑豊かな湘南丘陵に広がる伸びやかなキャンパスである。モダンな建物で構成されたキャンパス内は、まるで近未来世界にでも迷い込んだような印象だ。

ここの総合政策学部で教鞭を執る岡部光明先生は「金融論」が専門である。先生の前職は日本銀行金融研究所参事で、公定歩合の策定など日本金融政策の中心にいた人だ。

「金融論というのは経済活動にかかわるお金の流れを切り口にして、経済を見ていく学問分野になります。つまり、お金がもつ機能を維持するための制度を、経済理論、法律などの制度、テクノロジー、それに経済の歴史などから考えていくものです。非常に幅広い面からとらえる必要があり、そこがむずかしいところであり、また面白いところですね」と岡部先生。

先生は、ITをはじめ情報技術革新がもたらす経済への影響という面から金融を研究している。

「情報技術の革新は、従来からの金融取引の形態を革命的に変えています。たとえば市場に情報が集約されることで、銀行に頼らなくても資金の調達ができるようになりました。その一方でリスクも生じています。これまでにない新しい金融手段や決済の方法、あるいは銀行・証券・保険の各業界の領域を越えた金融商品の登場など、現行法ではまだ適用できない問題も増えています。そうしたことに対応した新たな制度づくりが必要になるわけです」

そうした制度づくりが岡部先生の目下の研究課題ということになる。このほか「日本経済論」「比較経済システム」も研究分野で、隘路(あいろ)にある日本経済の打開については次のように語る。

「もはや、大量生産・大量消費によって企業規模を拡大していく時代ではなくなっています。効率のいい企業経営、新しい製品を次々に生み出せる仕組みが求められます。そのためには金融システムを変えて、リスクを伴う製品開発などにも資金がちゃんと流れるような制度をつくることが必要ですね」

これまでの担保主義による安全優先の銀行投資を中心とした金融システムではなく、市場を中心にする新たな資金の流れをつくり出すこと――それが景気低迷の打開につながるだろうと説く。

岡部先生は要点を整理して、非常にわかりやすく説明してくれる。元日銀マンといえば冷徹でクールな人物像をイメージしがちだが、その温かい人柄がうかがえる。

SFCにはレディメイドのコースなどない

岡部光明先生の教授室のあるΚ(カッパ)館

慶應義塾大学SFCには「環境情報」と「総合政策」の2学部が設けられている。だが、実際にはふたつを画する壁は低く、両学部はほとんど融合しているといっていい。SFCでは基本的にゼミ制を採らず、代わって教員が主宰する200にも及ぶ研究プロジェクトが用意されている。学生たちは自らの興味や関心に沿って、学部を越えてプロジェクトに参加できるのだ。

「SFCの特徴の第1は自由度の大きさです。学生は従来の学問領域の枠にとらわれずに、政治学から経済学・社会学・コンピュータ、さらには色彩論・音楽論までひとつのキャンパスで学ぶことができます。特徴の第2は研究プロジェクト制を採用していることです。プロジェクトに参加できるのは原則的に2年次の学生からですが、目的意識と意欲があれば1年次からでも参加できます」

SFCの特徴を岡部先生はそう語る。多様な選択肢が用意され、そこから自由にチョイスして学べるSFC。非常に魅力的なのだが、またそこには落とし穴も潜んでいるとも語る。

「SFCにはレディメイドのコースがあまりありません。自分から積極的に“これをやろう”というものを見つけないと、4年間幅広く学んだつもりでも、何も身に付かないということになりかねません。学生にとってはむしろ厳しいキャンパスでもあるわけです。ここで学んで得られる成果と満足度は各人の努力の“関数”だともいえます」

岡部先生が主宰している研究プロジェクトは2つ。「情報技術革新と金融業」と「情報技術革新と日本経済」の2つである。

「私の研究プロジェクトでは、まず標準的文献の精読から始めて、経済・金融の基礎知識を身に付けてもらいます。それに並行して、学期ごとに各自のテーマでタームペーパー(学期論文)の提出を義務づけています。この論文に優秀なものが多くて、それがプロジェクトの成果にもなっています」

各学期の優れた論文はWeb上に全文が掲載され、慶應義塾大学湘南藤沢学会から冊子として刊行される。プロジェクトに参加している学生たちにとって、それが大きな励みなっているようだ。

国際性を備えた学生教育に全力を注ぐ

さて経済・金融が専門の岡部先生だが、実はもうひとつ別の専門がある。それは「大学教育論」である。
「一般に大学教育では、大学院教育が重要という風潮があります。しかし、私は学部で学ぶ4年間こそが重要だと考えています。学部学生の時期というのは、頭脳が柔軟、知識吸収力が旺盛、また感受性もみずみずしい。人生のうちでもっとも貴重な4年間だといえます。この時期をいかに過ごすかで、その後の人生が決定的に変わってきます。ですから私は学部学生の教育に全力を注いで、大学院のほうはやや手を抜いているかもしれません(笑)」

その学部学生に大学4年間で身につけてほしいのは、ハウツーでない本物のスキル。そのキーワードは「国際性」だという。

「ここでいう国際性とは、英語ができるというような意味ではありません。その条件の第1は明晰な日本語で高度な伝達能力をもつこと。第2はインテグリティ(integrity)。他人および自分に対して嘘をつかないこと。第3は自分のなかに羅針盤をもって、自分で道を切り開ける自立心をもつこと。この3つが国際性の条件で、それらを備えた人材を育てたいと思っています」

学部学生への指導に意を注ぐ岡部先生。こんな先生の薫陶が受けられれば、実りある4年間が送れることができるに違いない。

こんな生徒に来てほしい

高校生の段階から「これをやるぞ」という具体的なテーマをもつ必要はありません。ただ大学に入ったら、意欲と好奇心をもって自分のテーマを見つけてください。それも1・2年生のうちにぜひ探し出してほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。