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GOOD PROFESSOR

学習院大学
理学部 化学科

村松 康行 教授

村松 康行(むらまつ・やすゆき)教授 1950年静岡県生まれ。74年学習院大学大学院修士課程(化学専攻)修了。77年独ゲッチンゲン大学理学部地球化学専攻博士課程修了。77年同大学地球化学研究所研究員。78年放射線医学総合研究所入所、04年まで在籍。その間に国際原子力機関(IAEA)国際公務員および千葉大学客員教授にも就く。 04年より現職。92年科学技術庁長官表彰。04年地球化学研究協会学術賞(三宅賞)受賞。

主な著作に『放射線と地球環境』(編著)『放射線と人体』(共著・いずれも研成社)などがある。

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地球環境微量元素やアイソトープ分析研究の第一人者

ICP-MS質量分析に取り組む研究室での村松先生
村松先生の教授室・研究室のある理学部南1号館

学習院大学理学部化学科教授の村松康行先生は、前職の放射線医学総合研究所(放医研)在職中から環境や地球における微量元素やアイソトープの分析研究に携わってきた。自身の研究テーマについてはこう語ってくれた。



「分析化学の技術を使って、環境や地球に存在するほんの少量の元素であるヨウ素やセシウム・ウラン・希土類元素などについてその分布状況などを調べております。そうして得られたデータを解析することで、地質形成の過程や元素の生物進化へのかかわり、あるいは環境中での物質循環などが解明されることになります」



村松先生はこの分野での世界的な研究者として知られる。たとえば、環境中のプルトニウムの同位体測定法の開発において大きな貢献をしている。またヨウ素の濃縮機構については、それまでの定説を先生の研究が覆すことになった。



「ヨウ素(ヨード)は医薬品などにも使われる人類にとって重要な元素です。世界の4割のヨウ素を産出しているのが日本で、しかもその大半が千葉県の房総半島の地下深くから採れます」



なぜ房総半島の地下に大量のヨウ素が埋蔵されているのか――。従来は、ヨウ素が海藻中に多く含まれていることから、太古の時代にこの地域に海藻が繁茂し、それが累積してヨウ素が濃縮したというのが定説であった。



「しかし、放射能年代測定によってこの地域のヨウ素の年代は約5000万年前と非常に古いものであることを見いだしました。この結果から、海洋プレートの沈み込みに伴って海底堆積物中にたまっていたヨウ素が濃縮されたという説を立てました。房総半島の付近では太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込んでいます。また、ニュージーランドや中米の沈み込み帯においても高濃度のヨウ素を含んだ地下水が産出することが分かってきました」 この説は01年に国際学術誌に論文発表され、新説として海外からも高く評価された。04年には、このヨウ素研究を含めた数々のこれまでの先生の功績にたいして地球化学研究協会学術賞(三宅賞)が贈られている。



「化学の研究に携わっていますと心がわくわくするような現象に出会うことが多いですね。これまでに人類が存在を確認した元素は110種類あって、それぞれの元素が面白い個性をもって地球や宇宙を循環しているわけです。そこにはまだまだ不明な点もたくさんあり、新しい発見の機会も多い分野だと思いますね」



非常に真摯でまじめな人柄をうかがわせる村松先生だが、こと研究の話になると身を乗り出すように熱く語ってくれる。研究の虫のような先生だといったら失礼になるだろうか……。

46億年におよぶ地球史を踏まえた環境問題の論議を

学習院大学目白キャンパス正門

村松先生自身も学習院大学理学部化学科のOBだ。OBかつ教授の立場から、同学科の特徴について話してもらおう。



「この学科の学生定員は50人ですが、それに対して教員が10人おります。ですから学習環境はかなり恵まれていると思います。卒業研究も学生ひとり1テーマが原則で、グループ研究は原則ありません。教育内容的には化学の基礎知識習得と実験の重視が特徴です。化学を通じてサイエンスの一端にふれて理解を深め、自分自身の道を切り開いていってほしいですね」



学生たちが愉しみながら学ぶ姿は、先生が学生だったころから変わらない学習院化学科の特徴だそうだ。ただ、いまの学生には「集中力に欠けるきらいがある」と苦言もチラリと出た。



さて4年次学生の卒業研究だが、4年次の学生は各教員の研究室に振り分けられ、そこで1年間卒業研究に励むことになる。各研究室に振り分けられる学生はそれぞれ5人前後だ。



04年度開設の村松研究室でも、初年度6人の学生を受け入れてスタートした。ここでもひとり1テーマの原則が踏襲され、「微量元素の分析」や「環境および地球での物質循環」に関連する研究のなかから各人に合ったテーマが選ばれる。



ちなみに04年度の卒業研究のテーマには、「メタンハイドレートが産出する海底堆積物中の元素分布」「微生物への元素の取り込み」「大気中炭素-14の経年変化」――等々が並ぶ。学生たちへの指導方針として心掛けていることについては、次のように話してくれた。



「まず、元素分析を切り口にして自然を見る目を養ってほしいですね。さらに環境問題については、現在の問題だけではなく、古環境から現在・未来までを通して考えてほしい。とかく環境問題では、現在の平均気温が『1度上がった』『1度下がった』ですとか、局地的な汚染問題など現象的なことばかり騒ぎたてる傾向があります。地球には46億年の歴史があり、我々が地球上で生活するのはほんのわずかな時間にしかすぎません。学生のみなさんには、地球が刻んできた長いタイムスケールを考えながら、それぞれの環境観を持てるようになってほしいと思います」

地球上の物質循環解明のキーワードは?

モダンな建物や校舎が特徴的な目白キャンパス

そのためには学生の側も、ただ教えてもらうという姿勢ではなく、自分が主体となって学ぶ姿勢を身につけてほしいとも語る。そこで、ふたたび村松先生の話は研究のことに戻る。今後取り組むべき研究テーマについては――。



「微量元素のなかには100万分の1%以下しか含まれていないものもありますから、わずかな試料で精度の高い分析ができるように分析方法に改良を加えたいと思っています。さらに微量元素やアイソトープの分析結果から、環境あるいは地球上での物質循環の研究を進めてみたい。対象は『岩石から生物まで』ですが、とくに微生物はバイオマスも大きく、今後の物質循環解明において重要なキーワードになるでしょう」

こんな生徒に来てほしい

ここの化学科の特徴は実験を重視していることですので、実験の好きな人に向いているでしょう。それに、自然のなかで起こる不思議なことを探求してみたい人に来てほしいですね。また化学の分野では、国際的な研究協力がますます必要になっています。将来、国際的な舞台で活躍したいと考えているような人にもいいでしょう。




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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。