早稲田塾
GOOD PROFESSOR

一橋大学
大学院 商学研究科

花枝 英樹 教授

花枝 英樹(はなえだ・ひでき)教授 1947年東京生まれ。76年一橋大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。76年関東学院大学経済学部専任講師。79年同助教授。87年成城大学経済学部助教授。88年同教授。96年一橋大学商学部教授。00年より現職。主な著作に『経営財務の理論と戦略』『戦略的企業財務論』(いずれも東洋経済新報社)『企業財務入門』(白桃書房)などがある花枝教授のHPはこちら→http://obata.misc.hit-u.ac.jp/%7Ehanaeda/

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「企業を知る」ことは「社会を知る」こと

一橋大学のシンボルである附属図書館時計塔
一橋大学附属図書館2階に花枝研究室がある

「一橋大学の特徴といえば、各学部間の垣根が低いことでしょうか。たとえば、商学部に在籍する学生でもほかの経済学部や法学部・社会学部の興味ある科目を履修できます。そして、それが単位に認定されるようになっています」

そう語ってくれたのは一橋大学大学院商学研究科(商学部)教授の花枝英樹先生。学際的な知識が求められる時代にあって、上記の制度は学生たちに好評だ。花枝先生は商学部の経営講座に所属する。同講座については次のように語る。 「現代社会における企業の役割はますます重要になってきました。企業活動が国の経済を動かす元になっていますから、『企業を知る』ことは『社会を知る』ことになります。この経営講座では、企業経営の実務的な分析と同時に、理論的な分析の面から企業や社会についてより深く研究しているのが特徴となります」

その花枝先生自身の専門は「企業財務」(コーポレート・ファイナンス)である。はたして、どんな学問分野なのだろうか?

「企業の経営について分析するためには、人・物・金・技術・情報などいろいろな面から分析する方法があります。このうちお金の面から企業活動を分析するのが企業財務の研究となります。企業活動の元手となる資金(メーカーでしたら原材料購入や設備投資の資金等)が必要となりますが、それらをどのように調達しているのかを中心に調べて分析していく研究分野ですね」

日々変化する経済環境に則したライブ感・現実感

一橋大学附属図書館の建物細部

企業の資金調達の方法には①株式や社債の発行②金融機関や公的機関からの融資・借り入れなどがある。市場や株価の動静などを考慮しながら、この研究で対象となるのは、現実の企業が実際に行なっている企業財務である。日々変化する経済環境をにらみながらの分析で、そのライブ感がたまらない魅力とも話す。

日本のこれまでの企業財務の歴史をみると、高度経済成長期までの金融機関主導による銀行依存から、バブル経済期を中心とする株式による調達のエクイティ・ファイナンス(equity finance)、そしてバブル経済崩壊による負債圧縮という経過をたどってきた。このあたり、02年に花枝先生が著した『戦略的企業財務論』に詳しい。バブル経済崩壊から「失われた10年」をへて、日本の企業の財務の望ましいあり方を提言したものだ。

「企業の財務構造は株式(増資・内部留保)と負債がほど良いバランスであることが望ましいとされます。どちらかに片寄っていたり、あるいは負債がまったくないというのも健全とはいえません。『失われた10年』を経験した日本企業はいま、銀行にベッタリと依存するのでなく、かといって株式だけに頼るのでもなく、バランスの取れた財務構造に向かっていると言えます」

バブル経済の崩壊からはや10数年、長期低迷不況ともいわれるなか日本の企業財務は花枝先生の提言した方向にどうやら向かいつつあるようだ。

また、先ごろ話題になったIT企業によるテレビ局乗っ取り騒ぎの例のような、企業のM&A(買収・合併)も企業財務の研究範疇という。そんな自身の研究について語る花枝先生は、大きな声で質問にも当意即妙、じつに明解だ。

資金調達や投資方法から企業の価値を計る

雨けぶる夏の日の一橋大国大キャンパス

一橋大学商学部のゼミ演習は3・4年次の学生が対象で、花枝ゼミでは例年10人前後のゼミ生を受け入れている。3年次では、前期にファイナンス(企業財務と運用)の基礎知識を学び、後期は英語文献講読とグループによるケーススタディーを行なう。

「英語文献の講読については、これからのビジネスマンには英語の素養が必須になりますから、原書の専門文献を読んで英語力を身につけてもらおうということです。うちのゼミ生たちも、卒業後は大半が企業に就職してビジネスマンになっていますからね」

その卒業生の就職先だが、金融関係やメーカー関係の大企業に就職する人が大半で、なかには公認会計士になる人もいる。いずれにしても就職希望者は100%就職を果たしているそうだ。

「ケーススタディーのほうは、現実の企業についての“企業財務”あるいは“企業価値”などをグループ研究します。各企業が公表している財務のデータを各種データベースから引き出して、それらを分析研究していくことが中心になります」 ちなみに、05年度は自動車メーカーの日産自動車やM&Aで成功している日本電産などが分析研究されている。こうした3年次のグループ研究は4年次の卒業論文につながることになる。

「ゼミでの研究については私のほうからの押し付けにならないように気を付けています」

と前置きしつつ、花枝先生はその指導方針を次のように語った。

「ゼミは一般授業と違いまして、知識を一方的に伝えるところではありません。ゼミ生が自分から考え、主体的に研究に取り組むところだと思います。ですから、あまり私のほうから指示することはしないで、研究テーマもゼミ生たちが自由に選ぶようにしています」

近年は学部卒業後に大学院進学する学生が増えており、花枝先生自身もさらに専門知識を深めるためにと大学院進学を積極的に援助しているという。そして、企業財務を学ぶことの意味については次のように話してくれた。

「企業財務の研究といいますと、企業のお金の出し入れを損得勘定の面から計算してどうしたら儲けられるかばかりを考えていると思われがちです。そうではなくて『財務の面から見た企業の行動を分析する』というのが研究の基本なのです。各企業の資金調達や投資方法から企業価値を計っているわけです。そこをぜひ強調しておきたいですね」

実際の企業活動を例にして現実に即して行なわれる研究はすこぶる面白いとも語る。企業活動の研究に興味があって特に企業財務に関心のある高校生諸君は、一橋大学商学部入試の難関をぜひ突破してほしい。そして、この花枝先生の研究室の門を叩くべし!

こんな生徒に来てほしい

商学部における研究対象は産業や企業について主に扱うことになります。現代社会で非常に大きな役割を果たしている産業や企業を分析研究することは、現在の日本や世界、あるいは将来の日本や世界を理解することにつながります。実務的なことを学ぶので就職に有利だといったイメージもありましょうが、そういったことだけではなくて、商学部で学ぶということについて高校生なりにちゃんとした観点をもってきてほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。