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GOOD PROFESSOR

獨協大学
外国語学部 ドイツ語学科

矢羽々 崇 助教授

やはば・たかし1962年岩手県生まれ。87年上智大学文学部ドイツ文学科卒。89年独ミュンヘン大学マギスター(修士課程)修了。94年上智大学大学院博士課程修了。博士(文学)。94年獨協大学外国語学部専任講師。00年より現職。主な著作に『ドイツ語はじめの一歩まえ』(DHC)『CD・初めてのドイツ旅行会話』(NHK出版)『詩作の個人性と社会性 ヘルダーリンの詩「追想」』(近代文芸社)などがある。

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語学系志望者への実践的提言

矢羽々研究室がある獨協大学中央棟
ある夏の日の草加キャンパス全景

母胎となる「獨逸(ドイツ)学協会学校」から数えると、獨協大学は建学120年を超える伝統校。埼玉県草加市にキャンパスを置く同大学は独自のカリキュラムで行なう外国語教育に定評があり、とくに実績のあるドイツ語教育では他の追随を許さない。今回紹介する矢羽々崇先生は、そのドイツ語学科で教壇に立つ。まず、同学科の特徴をアピールしてもらった。

「なんといっても規模の大きいのが特徴です。1学年の定員が7クラス180人弱あり、ドイツ語学科としてこれは全国的にも最大規模になります。教員の数も多く、ネイティブ・スピーカーを含めて60人近くが在籍しています。ただドイツ語を習得するだけでなく、そのドイツ語を使って、言語や文学のみならず環境問題や経済・歴史・文化などについても学べるようになっています」 そこでドイツ語の習得についてだが、矢羽々先生は00年から03年までNHKラジオの「ドイツ語講座」で講師を務めた。この道の屈指のエキスパートである先生はドイツ語習得に向けての留意点を次のように語る。

「ドイツ語は英語といわゆる兄弟語ですが、英語を学んだときと同じイメージで学習にのぞむと戸惑うことになるかもしれませんね。英語では名詞における性の区分けが厳密ではありませんし、文法も比較的単純化されています。それに対してドイツ語は規則が多く複雑で、語尾変化や格変化なども覚えるのがかなり大変です」

「ただドイツ語習得の過程であまり文法にとらわれ過ぎるのもよくありません。むしろ何を伝えたいのかを明確にすることが重要で、文法の多少の不備は聞くほうに補ってもらえばいいのです。わたしたち日本人が外国人の話す日本語を補いながら聞いてあげるようにですね」

一方ドイツ語では規則性さえ覚えてしまえば、例外が少ないので後は比較的容易になるともいう。矢羽々先生自身の専門は「近現代ドイツ文学」。そのうち19世紀初頭の詩人ヘルダーリンを中心にしたドイツロマン派の研究をしている。

「ヘルダーリンの詩にはドイツ語の力強さを表現したものが多いのです。これは、古代ギリシャ語の構文や発想をドイツ語のなかに取り込んで詩作しているからです。ところが、発表当時は『狂人の詩』などと評価されませんでした。評価されるのは彼の死後のことで、ギリシャ語を取り込んだことでドイツ語の表現を豊かにしたといわれています。音がぶつかり合って力のある言葉になっているところに私も魅力を感じています」

自身の研究について語る矢羽々先生の口調は淡々として静かそのもの。だが、そのことばの端々からは熱い情熱が伝わってくる。非常に誠実な人柄とともに……。

大学で学ぶべきは「知識を身につける技術」

キャンパス前庭に建つ「建学の碑」

獨協大学ドイツ語学科のゼミ演習は2年次から始まる。ただ2年次は基礎演習で、各教員が主宰する専門演習がとれるのは3・4年次の学生が対象となる。

これまで矢羽々ゼミでも3年次以降のゼミ生を受け入れているが、じつは矢羽々先生は05年度の1年間は国内研究休暇にあたり、獨協大学での講義やゼミはお休みしている。そこで04年度までの例から話してもらった。

「わたしのゼミも初期のころは『ドイツロマン派の小説』などの大きなテーマを立てて、いわゆる大学のゼミらしくやっていました。ただ、いまの学生の読書量ではそうしたゼミは成立しないことに気づきまして(笑)、数年前から少し方針転換をしました。人間の根源的な問題である『読む』(03年度のテーマ)『書く』(同04年度)などを通して私たちの日常のなかにある文学をとらえ直したらどうなるかといったテーマにするようにしています」

こうして研究テーマを変更したことで、ゼミ生たちも自分たちの身近な問題として考えるようになり、ゼミ活動がさらに活発になったという。また、ゼミ生がそれぞれドイツ語で文章を書いて装丁から製本までを手作りした本のコンクールをしたところ、全員が熱中して大いに盛り上がったという。

矢羽々先生の人柄もあって、和気あいあいとしたゼミの雰囲気が伝わってくるようだ。そうした学生たちへの指導方針については次のように語る。

「自発的に動ける学生を育てたいですね。研究テーマを自分で見つけ、資料等も自ら探して来られるようになってほしい。ただ注意してほしいのは、インターネットなどで得られる情報は断片的で間違っていることも多いことです。また、大学で学んだことが社会に出てから直接役立つことは案外少ないものです。大学で学ぶべき最大のことは、知識を身につける技術(あるいは資料から必要な知識を読みとる技術)――そうした技術を学ぶことだと思っています」

語学に王道なし! 原書を読む努力を惜しむな

獨協大学草加キャンパスまでの通学路

最後に、外国語習得をめざす高校生諸君に次のようなヒントを矢羽々先生は与えてくれた。

「語学を学ぶのはスポーツに似ています。スキーや水泳の理論書を100回読んでも、滑れたり泳げるようにはなりませんね。語学もまったく同じです。まず、実際に顔の筋肉や手足を動かしながら口に出して話してみることです。頭で考える前に自然にことばになって出る『ことばの筋肉化』を図ることが大切となります」

「一方いまの語学教育は会話が中心になり過ぎてしまい、『読解』が軽視されている傾向があります。日常会話程度の外国語習得であれば原書など読む必要もないでしょう。でも専門的なディスカッションや研究をするためには、しっかり原書を読んでその背景や知識・語彙を身につけていないと話にもなりません。日常会話より上のステップをめざすのであれば、遠回りに見えても原書を読む努力を惜しまないことです」

語学系への進学をめざす者にとっては身に染み入るサゼスチョンであろう。その矢羽々先生。満を持して、06年4月の新学期から獨協大学外国語学部の教壇に復帰する。

こんな生徒に来てほしい

先ほども話したように語学はスポーツに似ていますから、その「スポーツ」を愉しむ意欲と好奇心が大事になります。あらゆることを「知ってやろう」「見てやろう」という意欲、それもそんなに剥き出しの意欲でなくていいですから(笑)チラッとでも持って進学して来てほしいですね。それに、大学は4年間で出るのが当たり前などと決めつけることもありません。留学したり遊んだりボランティアをしたりして、5~6年かけていろんなことに挑戦してみるのも悪くないと思いますよ。じつはドイツの学生は大学に6~7年在学するのが普通なのです。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。