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GOOD PROFESSOR

早稲田大学
社会科学部

早田 宰 教授

そうだ・おさむ1966年東京生まれ。90年早稲田大学政治経済学部卒。93年同大学院理工学研究科建設工学博士課程単位取得退学。94年東京都立大学工学部助手。95 年早稲田大学社会科学部専任講師。97年同助教授。02年より現職。03年英バーミンガム大学都市・地域研究所名誉研究員。04年中国・北京大学環境学部訪問研究員。主な著作に『まちづくりの科学』(鹿島出版会)『持続可能な都市の「かたち」と「しくみ」』(東京都立大学都市研究所)『地域協働の科学』(編著・成文堂・近刊)などがある(いずれも分担執筆)。早田 宰 研究室のwebサイトアドレスはhttp://www.f.waseda.jp/sohda/

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幸せに暮らせる「環境づくり」としての都市研究

都市・地域研がある120号館「早大研究開発センター」

さまざまな社会問題について複合的・総合的に理解したうえで解決への道を探っていく――早稲田大学社会科学部はそんな学部として定評がある。学際的な研究を標榜する学部としては日本最古の歴史も誇る。

同学部教授の早田宰先生はまだ30代という若々しさだが、この学際的学部にうってつけのような存在だ。なにしろ早大政経学部で政治学を学んでから、大学院では建築学を学び、また福祉問題にも詳しいというマルチプルな学才を誇る。 そんな早田先生の専門は「都市計画」と「公共政策」。それぞれどういう研究分野なのかまず聞いてみよう。

「従来の都市計画や公共政策には、公共の福祉や生活者の利便性に配慮しつつ都市機能を高めるために新しいモノを建設する意味合いが強くありました。しかし現在は、新しいモノをつくるというよりは今あるものを守りつついかに活用するかを考える潮流に変わってきています」

「日本で都市問題をテーマとするとき、いわゆる土建業と行政によるセットとして捉えられがちです。ところが欧米先進国では、市民・国民が幸せに暮らすための環境づくりという面から発想されることの方がもはや主流になりつつあります。公共の福祉政策の一環という考え方なのですよ」

と早田先生は熱ぽく語ってくれた。目下の研究テーマは「都市再生政策の国際比較」と「都市政策とまちづくり組織論」だという。

競争原理だけでない「日本型都市再生」とは?

早大研究室のある「早稲田大学14号館社会科学部棟」

「都市再生については、地方都市などの人口減少における活力低下の問題、あるいは都市構造が古くなったための造り替えの問題などがあります。イギリスを中心にしたヨーロッパやアメリカ・中国などの国々の事情と比較しながら、こうした諸問題について日本らしい都市再生の方向を探っています」

ここで「日本らしい都市再生」とは何なのだろう? 競争原理と伝統的福祉政策を乗り越える「公正な競争」のなか、生活の問題も絡めつつそこに住む人々が愛着をもつことができる――そうした地域の特性を生かしたコミュニティーの再生こそが重要と語る。

その具体的なフィールドとして、いま早田先生は川口市(埼玉県)のまちづくり支援活動にもかかわっている。かつて「キューポラのある街」といわれ鋳物を中心にした地場工業の街として栄えた川口市だが、現在は高層マンションが林立する東京のベッドタウンに変貌しつつある。

「いま川口市では、そうした新築マンションに入居してきた新住民と古くからの住民とのあつれきが大きくなっています。そこで我々も同市のまちづくり運動に参加して、新・旧住民や行政担当者などとともに街の将来像がどうあるべきか話し合っています。都市再生の問題については、当事者同士が集まり話し合って協働で取り組むことがとにかく重要です。川口市は住民のニーズが非常に高くて、今後が期待されます」

こうした産・官・学それに民を加えた協働型の川口まちづくり運動は、パートナーシップを育みながら順調に展開しているという。

自ら「チューンアップ」できる自由さが魅力

シミュレーション模型を前に説明してくれる早田先生

いかにも若々しい早田先生だが、気負うことなくひたむきに研究に向かう姿が取材中も自然とうかがわれてくる。さまざまな社会問題に学際的なアプローチで挑む早大社会科学部だが、同学部の特徴について早田先生は次のように語る。

「この学部には用意された〝おすすめメニュー〟というのがありません。何を学ぶのかは学生たち自身が自分の責任で選択し、自分でいわばチューンアップしていくことになります。そのためか、ここで学ぼうという学生は最初の心構えからしてちょっと違っているような気がしますね。早大生のいい気風を色濃く残している――そこらが社会科学部の一番の特徴といえるでしょう」

また、ひとつの対象をさまざまな切り口から研究できるのも同学部の特色とも。

「たとえば都市問題について研究する場合この学部でしたら、行政をはじめ福祉・環境・経済・法律など自分が関心のある視点から研究に取り組むことができます。そこも、ほかの学部にはない特色ですね」

ゼミ生全員が「気になる街」探しに繰り出していく

社会科学部のゼミ演習は2年次から始まる。早田ゼミでは例年10~20人のゼミ生を受け入れている。

「まず、2年次ではゼミ生全員にどんどん街に出ることを求めます。個人的に気になる景観や良い環境の街とか何か問題のある街などを探し出し、後日それぞれがリーダーになって他のゼミ生を案内して見学し、それぞれのテーマについて全員で討議するスタイルです。1人ひとりのゼミ生がリーダーを務めることで、空理空論ではない街についての感覚がみんな身に付くようになりますね」

さも楽しそうなゼミの様子が伝わってくる。3年次になると統一テーマが提示され、それに沿った個別課題を設定して研究がなされていく。05年度は先の「川口市のまちづくり」がテーマだが、じつは04年度の台東区(東京都)をテーマにした研究で大きな成果があったという。

「04年度3年次のゼミで台東区の職人について調査研究しました。職人といいますと昔かたぎの人が多いと思われがちですが、いまではインターネットで注文を取ったりしてその実態は変わってきています。そうした変貌する職人の姿と街づくりについての研究内容がある出版社に認められて、『職人の居るところ』(トランスアート刊)という単行本として刊行されました。ゼミ生たちにはいい思い出になったようです」

さらに4年次になると、卒論に向けた個々の研究ということになる。そのあたり学生たちへの指導方針について早田先生は次のように語ってくれた。

「ゼミ生たちの研究へのかかわり方には、①学生時代の研究として純粋に追いかけたい②お金抜きのライフワークとして研究したい③この知識で生活していく――の3つの選択肢があると思います。①②の関わり方でもちろん構わないわけですが、2年次のフィールドワークなどいろいろ経験する中で、できれば③にハマるような人が輩出してくれないかなぁと思って指導しています」

それも、ゼミ生自らが学究への道に自然に進むようになってくれればと語る。強制的にテーマや方法など押しつける気持ちはない。大切なテーマに自ら出会ってつかんでくれれば――。何といかにも早大社会科学部らしい自立性の高い指導方法ではないか。

こんな生徒に来てほしい

どんな人が来てくれてもいいですよ(笑)。自分はダメ人間だと思っている人、何かほかで失敗した経験のある人、口べたな人――など誰が来てくれてもいいです。要はやる気!人はだれでも失敗します。その失敗からどれだけ復活できるかが人生勝負なわけで、やる気を失わない人なら誰でも大歓迎します。自分にとって楽しいといえる何かがあって、それをみんなに伝えたいという気持ちのある人なら、なお結構です。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。