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GOOD PROFESSOR

早稲田大学
社会科学部

黒川 哲志 教授

くろかわ・さとし
1965年大阪生まれ。89年早稲田大学政治経済学部卒。94年京都大学大学院法学研究科博士課程単位認定退学。94年帝塚山大学専任講師。97年同助教授。00年米デューク・ロー・スクール訪問研究員。03年早稲田大学社会科学部助教授。04年より現職。主な著作は『環境行政の法理と手法』(成文堂) 『はじめての行政法』(共編・成文堂)『環境法入門』(共著・有斐閣・最新刊)など。

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環境問題規制への環境法からのアプローチ

いつの世も早稲田大学を象徴する大隈講堂

早稲田大学社会科学部は、複雑化する社会問題を学際的なアプローチによって研究解明していく学部としてつとに知られる。今回紹介する黒川哲志先生は、この学部の特徴について1つのテーマを複数のバックグラウンドから追究するところと説明。さらにこう補足してくれた。

「学生に社会人の方の多いのも社会科学部の特徴のひとつでしょう。社会人の方はみなさん熱心ですから、それに引きずられて若い学生諸君も授業中の私語がなくなって真剣な雰囲気になります。教えている私たちも緊張して授業に力が入ります」

「また、社会科学部の学生はみんな経済学はじめ社会学・心理学・法学などの基礎を学んでいます。だから、専門の講義を高度な内容から始めてもみんな付いてこられます。これも他の学部にはない特徴でしょうね」

黒川先生はまだ40代ほやほやの気鋭の研究者だ。その専門は「環境法」と「行政法」。 まず、環境法のほうから簡潔に説明してもらおう。

「環境をよりよくするためにどのような規制を講ずることが必要で、どのような規制をすればうまくいくのかを考えるのが環境法の研究になります」

このうち黒川先生が研究しているのはマーケット(市場)原理を活用した環境規制だ。

「力ずくで押さえ込んで環境問題を規制しようとしても、お金がかかるばかりで効率も悪くなります。それぞれが自発的に環境をよくするために動くような仕組みを考えることが重要で、これが現在の環境法政策の中心的な考え方になっています。たとえば環境にいいことをしたら得になり、逆に環境に負荷を与えるようなことをしたら損をするような仕組みですね」

こうした考え方を制度化した施策には、環境保全に役立つ商品に表示が許される「エコマーク」がある。そのほか、環境汚染の疑いのある化学物質を使用する事業者にその使用状況を公表させる「PRTR法」などもある。

「こうしたマーケット原理を使った規制のよいところは、環境にやさしい商品などの情報が市民に提供されることです。消費者がそうした商品を優先的に購入するようなり、そうした消費者側の動向を受けて企業側も環境に配慮した行動をとるようになっていくことです」

現在、黒川先生らは二酸化炭素の排出量の規制施策について研究中だ。すでに実験段階に入っており、制度化される日も近いという。

先生のもうひとつの専門である行政法については――。行政手続法や行政事件訴訟法などに代表される行政法のうち、さまざまな許可制度のシステム構築について研究している。

取材の質問に対して、ことばを1つひとつ選びながら黒川先生は丹念な受け答えをしてくれる。年齢的には若い先生だが、あまねく世事に精通しているような非常に落ち着いた感じが印象に残る。

環境問題全般にわたる白熱のディベート

黒川研究室のある西早稲田キャンパス14号館「社会科学部棟」

早稲田大学社会科学部のゼミ演習は2年次から始まる。年度によって違うが、黒川ゼミで受け入れているゼミ生は平均すると7~8人ほど。ゼミ授業は2年次が単独で、3・4年次は合同で開かれるという。

「2年次のゼミでは、シラバス(講義計画)に挙げてあるテーマからゼミ生がそれぞれテーマを選んで調べてもらいます。その結果をゼミで発表したうえで全体ディスカッションをするスタイルで、環境問題全般に関する基本的知識を身に付けてもらうようにしています」

ちなみに05年度は「車による大気汚染」「湖の水質汚濁」「ゴミ処理問題」等々のテーマが先生のシラバスには挙げられている。

「また3・4年次のゼミにおいては、ゼミ生が自由にテーマを選んで発表し、翌週のゼミにおいてそのテーマについて徹底的にディベートします。それを1年間繰り返すスタイルとなります」

ここでのディベートというのは、設定したテーマについて参加者を肯定派と否定派に分けて討論して優劣を争うもの。じつは毎年夏休みに同志社大学のゼミと合同合宿し、そこで大ディベート大会を開くのが恒例になっているのだ。

「このディベート大会は双方3年次のゼミ生が中心になります。やるからには負けたくないですから、新学期早々の4月から準備に入って備えます。ただ、うちのゼミ生は7~8人なのに対して、相手は30人からの大所帯ゼミですから、どうしてもうちのほうが劣勢に回ってしまいますね(笑)」

今年05年のディベートテーマは「琵琶湖のブラックバスのリリース禁止条例の是非について」。今年から中央大学のゼミも参加することになったそうで、大いに盛りあがったであろうことが想像される。

学生たちを育てるのは〝冷たい視線〟

なお黒川ゼミでは学年度末、2年次・3年次のゼミ生全員に1万字以上のリポート提出が義務づけられる。その内容は、それぞれの1年間のゼミ活動の総括をまとめたもの。楽しく盛りあがるだけでなく、黒川ゼミにはそうした義務もきっちり課せられるのだ。

学生たちへの指導で心掛けていることについて黒川先生は次のように語る。

「とにかく学生には、クリエーティブな思考のできる人に育ってほしいと思っています。そのためにも枠にはめ込まないように自由な発表ができるようにしています。また、私たちが研究しているのは新しい学問分野ですから、先入観にとらわれるのが一番よくありません。先入観にとらわれないで自分の頭で考えることが大切だと指導しています」

最後に黒川先生はこう結んだ。

「本当の意味で学生たちを育てるのはゼミ仲間やディベート相手の〝冷たい視線〟だろうと思っています。レベルの低い報告をしたときに仲間から浴びせられる冷たい視線。それこそが学生を育てていくのです」

こんな生徒に来てほしい

知識の習得に貪欲で、好奇心に富み、自分の頭で考えることのできる人――これに尽きます。そんな生徒さんにぜひ来てほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。