早稲田塾
GOOD PROFESSOR

首都大学東京
大学院 理学研究科

小柴 共一 教授

こしば・ともかず
1949年東京生まれ。74年北海道大学理学部植物学科卒。78年東京都立大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。78年東京都立大学理学部助手。 86年米ワシントン大学医学部研究員(ポストドクトラルフェロー)。98年東京都立大学理学研究科助教授。02年同教授。05年より現職。主な著作に『新しい植物ホルモンの科学』『植物ホルモンの分子細胞生物学(仮題・近刊予定)』(ともに共編・講談社)などがある。先生のWebサイトはコチラ →http://www.comp.metro-u.ac.jp/~koshiba/

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「植物ホルモン」研究の世界的拠点

GC-MSでホルモン分子の定量分析中の小柴先生
初冬のある日の首都大学東京南大沢キャンパスの全景

「首都大学東京」は旧・東京都立大学はじめ4つの都立系大学を再編統合して、05年4月に新たなスタートを切った総合大学。その大学の教育研究理念のひとつに「都市環境の向上」を掲げ、いかにも日本の首都・東京の大学らしい趣に一変しての出発となった。今回お伺いした小柴共一教授は大学院理学研究科(2006年度からは理工学研究科生命科学専攻)の所属で、学部では都市教養学部生命科学コースの教壇に立つ先生だ。

「それまでの理学部にくらべると、わたしが教えている都市教養学部は学部の性格が少しあいまいで分かりにくくなったきらいはあります。ただ、基本的な研究は旧・都立大のものが継続されています。そうした従来からの研究に加えて、東京もふくめた都市環境など大都市の問題にも配慮して研究していこうことですね」

そんな小柴先生の専門は「植物生理学」。いま主要な研究テーマにしているのは、植物の生育に重要なはたらきをするホルモンについてだ。

「ホルモンのなかでも主にアブシシン酸(ABA)とオーキシン(IAA)について研究しています。アブシシン酸というのは、乾燥や塩・低温などの環境ストレスから植物を守るためのホルモンです。オーキシンのほうは、植物の胚発生・形づくりや光・重力の方向などにかかわる重要なホルモンです。こうしたホルモンがどのようにして形成されているのか、そうしたことがいま一番の研究課題となります」

小柴先生の研究室は、こうした植物ホルモンの研究における世界の最先端に立つ。研究室内にはガスクロマトグラフィー-質量分析機(GC-MS)が導入されているが、ホルモン分子の定量分析ができる世界最高水準の機器だ。①アブシシン酸の合成遺伝子構成②アブシシン酸を分解するタンパク質の遺伝子――これらを世界で初めてキャッチしたのもこの研究室の中心的な業績だ。こうしたアブシシン酸の研究の成果は、環境ストレスに強い農作物への改良・開発などにも役立てられることになる。

「農作物改良については、東京都の農業試験場や民間企業などとの共同で研究がすでに始まりました。アブシシン酸の合成に働く遺伝子などに注目しつつ、地球の砂漠化に対応した乾燥に強い植物や農作物の改良研究が進められています」

一方オーキシンについては未解明なことも多く、「まだまだ暗中模索の段階です」と先生は笑う。なお、小柴先生は植物化学調節学会の05年学会賞受賞の栄に輝いている。これまでの研究成果に報いるものといえよう。

五月病も吹き飛ばす「生物学自主研究」

小柴研究室のある首都大学東京

首都大学東京は05年4月に改編スタートしたばかりで、現在は1年次の学生だけが在籍していることとなる(同じキャンパスで学ぶ2年次以上の学生は、旧・都立大などに所属する学生)。いままで以上に基礎教養教育に力が入れられ、全学1・2年次の学生は「共通基礎教養」と「都市教養」の科目群の履修が義務づけられることとなった。

そのなかで小柴先生が教える都市教養学部生命科学コースでは、「生物学自主研究」の枠を設けて1・2年次の学生にもさまざまなテーマでの研究・実験を教員とともに実施できる制度を導入している。

「とくに生物に興味や関心のある学生は、入学直後から先輩学生や大学院生と交じって研究に参加することも可能です。研究室に入りますと、教科書を読むだけの学習とは違って世界の最先端の研究・実験に直接触れることができます。ですから、意欲さえあれば世界中から注目されるような研究や実験が学部1・2年の学生の段階からできるということです」

ともすると基礎教養課程の学習は退屈で、せっかく入った大学に失望したりして「五月病」に陥るむきも少なくないといわれる。そんな中この生命科学コースの「生物学自主研究」の枠は学習意欲を沸き立たせる試みともいえよう。

ところで小柴研究室では学部学生どころか、現役の高校生の生物研究にも手を貸して協力していることでも知られる。小柴先生は格幅のいい身体つきに似て、何事でも受け入れてくれる広い度量の持ち主なのだ。

「ある高校の生徒さんがタンポポの研究をしていまして……。タンポポは花が枯れるのといっしょに茎もしぼみますが、綿毛になる時また元気に立ち上がるのです。この現象にオーキシンが関係するのではないかという研究でした。それで研究室のGC-MSを使って、茎に含まれるオーキシンの量の変化を計測してあげたのです。その結果オーキシンの作用が判明し、その研究発表がアメリカのあるコンクールに入賞しました。彼女は授賞のためにアメリカ本国まで招かれました」

ため口も飛び交う自由な雰囲気の研究室

まるでテーマパーク内を行くようなキャンパス通学路

旧・東京都立大学理学部における学部学生は4年次になると各教員の研究室に配属されて1年間の卒業研究に励んだ。このスタイルは首都大学東京の生命科学コースでも踏襲されることになる。研究室での学生指導について小柴先生は次のように話す。

「学生たちとはコミュニケーションを多くとるように心掛けているつもりです。サイエンスの世界では教授も学生もなく平等ですから、わたしの研究室ではため口での議論が飛び交っていますよ(笑)。若い学生諸君の発想を押さえ付けないこと、若いエネルギーをどんどん引き出すこと、それらを指導の方針にしています」

そんな小柴先生ではあるが、学生諸君に対して次のような厳しい注文もつい出てくる。

「最近の学生には控えめな受け身の人が多いようですね。自然の持つさまざまな不思議の解明などもっと積極的にぶつかっていってほしい気がします。このコースには多様な分野の先生がそろっていますから、どの先生の研究室に飛び込んでいっても丁寧に答えてくれるはずです。生命科学コースではそれが許されていますから、それを大いに利用してほしいと思います。その意味で、学生さんには常識はずれくらいのアクティビティーを求めたいですね」

こんな生徒に来てほしい

最近、生物学にかぎらず自然科学の現象に驚いたり疑問に感じる若い人が少なくなっているような気がします。サイエンスに関する現象は教科書で知るだけではなく、自分の目で直接見て知るように心掛けることが大切です。中学・高校のときから、そのことはぜひ意識して学んできてほしいと思います。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。