{literal} {/literal}
GOOD PROFESSOR

國學院大學
経済学部 経済ネットワーキング学科

高木 康順 助教授

たかぎ・やすのぶ1958年東京生まれ。82年慶應義塾大学経済学部卒。82年日本酸素(現太陽日酸)入社。85年同退社。92年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。92年國學院大学経済学部専任講師。96年より現職。著作には『応用計量経済学』(多賀出版)『計量経済学のフロンティア』(慶應通信・前著ともに共著)『統計学入門』(共訳・多賀出版)などがある。

  • mixiチェック

〝現場〟から理論構築する計量経済学とは

高木研究室のある「若木タワー」1
高木研究室のある「若木タワー」2

國學院大学渋谷キャンパスでは全建物の建て替え工事が行なわれてきたが、このたび中心的な建物「若木タワー」(地下1階・地上18階)が堂々完成した。このタワーには大学事務局関係および全教員の研究室などが収められ、今回紹介する経済学部助教授・高木康順先生の研究室もこの8階にある。高木研究室の窓からは、六本木ヒルズから東京タワーまで新旧TOKYOを代表する大パノラマ景観が広がる。その素晴らしい眺望の真新しい部屋で話を聞かせてもらうことになった。

まずは、國學院大学経済学部の特徴について。

「経済学は、200年を超える歴史における進化のなかで、非常に抽象性の高い核となる理論を中心にいろいろな立場・種類の理論・応用が展開するようになっています。本学の経済学部においては、抽象度の高い理論に関する研究・教育の範囲を狭める代わりに、具体的な経済現象の各問題を広く研究対象にしています。それが一番の特徴ですね」

國學院大学経済学部は経済・経済ネットワーキング・経営の3学科からなり、高木先生が所属するのは経済ネットワーキング学科。どうしても同学科を語るうえで欠かせないのが「フィールドスタディー」だという。

「経済に関わるいろいろな立場の理論分析が異なる結論を導くような複雑な実際の例を取り上げ、事前の理論的・歴史的な考察を入念に行なったうえで自ら現地に赴き、問題解決に努力する関係者に取材やアンケートなどをして異なる立場の関係者・機関がどのような関係を形成しているか(このような活動がネットワーキングです)という視点をもったリポートを作成させています。文化人類学や社会学でならともかく、経済学部の学科でこうした調査研究をするのは他大ではない試みだと思います」

夏休みともなると国内はもとより東南アジアなど海外にまで散って、このフィールドスタディーに経済ネットワーキング学科の学生たちは精を出すのだという。

ニッポン企業社会の背後にある経済構造に迫る

ある夏の日の大渋谷キャンパスの全景1
ある夏の日の大渋谷キャンパスの全景2

高木先生が専攻するのは「計量経済学」だ。いったいどんな学問分野なのか先生の口から語ってもらおう。

「現代の経済学における理論水準はさまざまな現象に非常に明解な結論が出せるようになっています。ただ、だからといって現実の経済活動が各理論どおりには展開しません。そこにはさまざまな変則的な事情や偶然の作用が影響します。純理論的な結論と現実の経済活動との関係について統計学の手法を使って分析研究するのが計量経済学ということになります」

計量経済学の理論的研究としては、現実の事象に合わせて経済理論自体を修正し磨いていく方向と、経済実態に迫るよう統計学的手法を改良していく2つの方向に分かれる。ここでの高木先生の研究手法としては次のように語る。

「私としては、実際のデータによる検証においてズレがある場合、分析手法の修正よりも経済学理論の枠組みの再構成を優先していく方法論をとっています」

ところで高木先生は、大学卒業後の一時期、大手製造メーカーでサラリーマンをしていた異色の経験がある。

「ごく普通に営業担当としてさまざまなメーカーを訪ね歩いていました。すると、そうした企業群の背後にある経済構造がどうなっているのか? そうしたことに非常に興味をもつようになりました」

そうした興味が高じた高木先生は、ふたたび母校の大学院に入って経済学を学び直すことになる。

「サラリーマンを経験したことが今の研究に役立っているかどうかはかなり疑問かな(笑)。ただ、一度社会に出たことで私自身の経済への見方は多少とも変わりました。“頭でっかち”な研究にならずに自分を客観視して抑制できるようになったことは確かだと思います」

そうした経験を踏まえて、現役高校生をはじめとする若者たちに次のようにアドバイスしてくれた。

「いま若い人に〝起業〟に興味をもつ人が多くなってきたのは頼もしいことだと思っています。ただ、アイデア先行でいきなり起業するのではなく、一度社会に出て実際の経済活動に携わって経験を積んでから始めても遅くないと思います」

数学アレルギー学生にこそ経済学リテラシーを

國學院大学経済学部のゼミ演習は3年次から始まる。高木ゼミでは例年10人前後のゼミ生を受け入れ、3年次ゼミ生は経済学のテキストを中心にしたグループ研究、4年次ゼミ生は卒業論文に向けた個人研究というスタイルで行なわれる。

ところで、現代経済学それも計量経済学というと難解な数式と格闘するイメージが強く、数学の苦手な人にはどうしても敬遠される傾向もあろう。

「私のところでは数学や数式にはあまりこだわらない、というか基礎理論的なことは理解してもらうようにして、PCソフトの“エクセル”など一般的なツールを活用しながら経済現象を実感できるような工夫をしています。ですから、数学は苦手だという人も大いに歓迎ですよ(笑)」

経済学に興味をもちながらも数学が苦手なために敬遠しがちな文系志望者にとって、これ以上の朗報もなかろう。またゼミにおけるグループ研究での指導方針として、メンバー全員が理解しないと意味がない――と熱く語るのも高木先生のもうひとつの一面だ。

「グループ別に研究を分担させると担当以外のところはノータッチということになりかねません。しかし経済学の理論は体系的なものですから、理論研究の全体構成についてメンバー全員が理解していないと無味乾燥というか無意味なものになってしまいます」

そのためゼミ発表の前日になると、高木先生を囲んで各グループ全員が理解するまで徹底的な討議を行なう。それが夜の9時・10時に及ぶこともしばしば。学生個人に対しても理解するまで徹底的に指導していく先生の教育指導の熱心ぶりはつとに有名だ。

「ほとんどの学生にとって経済学というのは大学に入って初めて本格的に出会う学問分野になります。4年間で基本的な理論から応用や事例まで体系的に学んでいってほしい。そこまですれば、これ以上に合理的かつ明解な学問もそうありません。社会に出てからの活動の軸にすることもできます。今後ますます経済活動や社会環境は日々変化するでしょう。しかし経済学の軸をきっちり持っていると、それをベースにして行動が決められます。そんな軸をもった人を育てたいですね」

サラリーマンとして実体験を踏まえて自ら学究・教職の世界に飛び込んだ高木先生。それだけに21世紀初頭のいま先の見えにくい激動の経済・社会情勢にたじろぎがちな学生たちに対する熱血指導も徹底している。大学4年間に師と仰ぎたい先生のひとりといえるだろう。

こんな生徒に来てほしい

大学で経済学を学んでみたいという希望がありましたら、どんな科目でもかまいませんから高校時代にひとつ得意な科目をつくっておくといいですね。たしかに現代経済学の理論の背景には数学があります。しかし数式の扱いがたとえ苦手でも、自分なりに得意な分野で理論的な理解ができるのなら、きっと経済学の面白さを分かってもらえると思います。なによりも若者らしく未知なる先に向かって興味をもつことが大切ですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。