早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東京電機大学
理工学部 建設環境工学科

安田 進 教授

やすだ・すすむ
1948年広島県生まれ。70年九州工業大学開発土木工学科卒。75年東京大学大学院工学研究科土木工学博士課程修了。75年基礎地盤コンサルタンツ入社。86年九州工業大学工学部助教授。94年より現職。土木学会論文賞(86年)。地盤工学会功労賞(04年)地盤工学会事業企画賞(05年)。主な著作に『液状化の調査から対策工まで』(鹿島出版会)『土質力学』(共著・オーム社)『わかる土質力学220問』(理工図書)などがある。
安田教授が主宰する「地盤工学研究室」のWebサイトアドレスはコチラ → http://yasuda.g.dendai.ac.jp/
なお東京電機大学の新学部創設・全学改編については、同大学のWebサイトにアクセスするか、入試センター(電話03-5280-3511)まで問い合わせを!

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地震国ニッポンを救う「地盤工学」

安田研究室のある鳩山キャンパス2号館南棟
東京電機大学(TDU)の鳩山キャンパス本館

今回、一生モノの恩師として紹介するのは東京電機大学理工学部建設環境工学科の安田進教授。まずは、建設系学部を志望する理系志望高校生へのこんな注意からインタビューは始まった。

「建設系の大学学部には建築学科と土木工学科がありますが、じつはこの2つの学科を間違えて入学してくる学生が思いのほか多いのですね。とくに本来は土木工学科をめざすべきなのに、建築学科に入ってくる学生の例が目立っていました。そこで私どもでは建築と土木を分けないで入学してもらい、1年間双方の基礎を学んでから、2年次にそれぞれ希望するコースに進むという方法をとっています」
建築と土木を間違えて入学してしまった等という話は実際よく聞く。東京電機大学の学生は1年間学びながら自分の適性を見極められるわけで、建設系学部に進む学生側に立った非常にうれしい制度といえよう。

「ところで明2007年に東電大は創立100周年を迎え、これに伴う新学部創設や学科の改編などが行なわれる。ただ安田先生の所属する「建設環境工学科」では、その名称が理工学部理工学科創造工学系「都市デザインコース」に変更になるくらいで実質的な変更はないともいう。その先生自身の専門は、土木工学の一分野である「地盤工学」だ。

「ビルディングなどの建築物や橋・道路などの土木構造物は、いずれも地盤の上あるいは地盤の中(地中)に造られます。このとき地盤が弱いと構造物の沈下や滑りという現象が起きたり、大地震や大雨などによって液状化や斜面の崩壊が起こることがあります。したがって地盤の上に構造物をつくるときは、事前にそうした対策を考えねばなりません。それらを研究しているのが地盤工学になります」

「地盤液状化」「斜面崩壊」研究の第一人者

東電大鳩山キャンパス内に点在するオブジェ
「三軸試験装置」の点検に余念のない安田先生

このうち安田先生が主要な研究テーマにしているのは、地震時における地盤の挙動および安定性について。まさに東海沖・首都直下において発生が将来予想される巨大地震において深刻な災害被害が懸念される喫緊のテーマだ。

「いま私がとくに力を入れているのは、地盤の液状化と斜面の崩壊についてです。地盤の液状化というのは、地震の震動によって緩く堆積した砂地盤の粒子がばらばらになり、地下水と混じり合って泥水のような状態になってしまうことです。都市部における地震ではこの地盤の液状化による被害がとくに大きく、その対策が重要な問題になっています」
前職のコンサルタント会社勤務のころから安田先生は一貫してこの研究に取り組んでおり、その日本屈指のエキスパートとして公共工事や民間大型工事の地盤対策委員会などで技術指導を行なってきた。現在における代表的な液状化対策技術としては、①地盤を締め固める②セメントなどを混入して強固な地盤にする③地下水の水位を下げる――などの方法があるという。

「もうひとつ斜面崩壊の研究については、いつどこで発生するのか予測が困難なこともあり、その対策は今も非常に難しくなっています。斜面崩壊が起きるケースには2種類あって、谷間を人工的に盛り土した造成地と自然斜面における崩壊の2つですね。とくに自然斜面のほうはどこで崩壊が起こるのか予測できないのが実情です。しかも、その危険個所がとても多いのも問題なのです」

その危険個所がどこかを予測する研究と、その崩壊対策のための研究が安田先生の当面の2本柱となる。具体的な崩壊対策としては、地中深くに杭を打ち込んで防ぐ「アンカー工法」などを中心に研究が進められている。

地盤災害の現場を自ら見る努力を

専門的な研究内容についても安田先生はじつに丁寧にわかりやすく説明してくれる。初対面ではあるが、とても温和なお人柄とお見受けした。先生が所属する東京電機大学理工学部建設環境工学科では、学生たちは3年次の12月から各教員の研究室に配属になって、4年次から卒業研究に備える。安田研究室では例年8~9人程度の研究生を受け入れる。

「12月に研究室入りする3年次の研究生には、まず4年次の研究生のアシストをしながら卒論研究の実際について学んでもらいます。それで4年次の春から各テーマについて卒研に入ることになります。わたしの研究室には大学院生がいつも6~7人いてそれぞれのテーマで研究をしています。ですから現役4年次の研究生たちは、その中から自分の興味や関心のある卒論テーマを選ぶことが多いようです」

安田先生によるゼミ形式の講義の特徴として、海外プロジェクトの経験がある技術者や総合建設業(ゼネコン)・コンサルタントなどの実務経験者を招いて現場の経験談を聞ける機会が多いということがある。そのほか学生指導にあたって先生が心掛けていることについては次のように話す。

「まず、自分自身で楽しみながら研究してほしいということですね。これは私自身の反省でもあるのですが、成り行きで仕方なくやる研究は得てして結果もよくないものです。また、どんな研究テーマでも探せば楽しい部分が必ずあるものなのです。それを探し出して楽しみながら研究してほしいのです」

「それに、ひとつの事象だけに執着するのではなく、並行して2つ・3つの課題を見つけて研究できるようになってほしい。また地震や斜面崩壊など実際の地盤災害の現場を自分の目で見るよう心掛けることも大切です。それも細かい部分を見るだけではなく、社会的視点もふくめて大きく全体を見る目もほしいと思います」

「インタビューの最後に、建設系学部を志望する現役高校生諸君のために土木工学関連の仕事の未来についても安田先生は語ってくれた。

「いまから20年後のことを考えると非常に面白い世界になっていると思いますよ。たとえば国内では都心の高速道路などが造り直しの時期のなっているかもしれません。また現在の土木関連海外プロジェクトといえば開発途上国が大半ですが、20年後にはもっと日本の土木技術も進歩していることでしょう。きっと欧米の巨大プロジェクトにも参加しているはず。未来のある仕事ですから、夢をもってどんどん参加してほしいですね」

いまから20年後といえば、受験生諸君が中堅技術者として現場の第一線で活躍しているころに当たる。一見として地味な土木工学・地盤工学の世界だが、地震国ニッポンに暮らす日本人にとって欠かすことのできない宿命的な研究分野でもある。都市中枢機能が壊滅状態に遭遇してしまった時あるいは壊滅状況を少しでも避けるためにも、地盤工学に関連する産業・研究への社会的な期待は今後ともますます大きいに違いない。

こんな生徒に来てほしい

我々のやっていることは〝モノづくり〟ですから、建造物をはじめモノをつくることに興味のある人ですね。実際に土に触れることや工作をすることが好きな人、さらにはモノが壊れるメカニズムに興味を示す人ならもっといいですね。最近の若者たちにはモノが壊れることをなかなかイメージできない人が多くなっているような気がします。そんな都市文化に馴れ切ったような人には自分でつくったモノを自ら壊してみるのが一番です。後はやる気のある元気な人であれば大丈夫ですよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。