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GOOD PROFESSOR

早稲田大学
文化構想学部

宮城 徳也 教授

みやぎ・とくや
1958年岩手県生まれ。82年早稲田大学第一文学部卒。86年同大学大学院文学研究科(英文学専攻)修士課程修了。89年京都大学大学院文学研究科(西洋古典語学・西洋古典文学専攻)修士課程修了。92年同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。95年甲子園大学経営情報学部専任講師。98年早稲田大学文学部専任講師。99年同助教授。04年同教授。07年より学部改組により現職。主な著作に『キケロー選集1』『同2』(共訳・岩波書店)『ギリシャ・ローマ文学必携』(早稲田大学文学部)『セネカ悲劇集』(共訳・京都大学学術出版会)などがある。
宮城先生の主宰するWebサイト「宮城徳也研究室」(http://www.f.waseda.jp/tokuyam/index.htm)上では、イタリア在外研究中の近況「フィレンツェだより」なども更新されている。

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早稲田新設学部でこその文化の比較研究

宮城研究室のある第1研究棟33号館

いよいよ2007年4月、それまで第一文学部と第二文学部(夜間)からなっていた早稲田大学文学部が改組され、「文学部」と「文化構想学部」の2学部に再編される。この間の経緯について文化構想学部教授の宮城徳也先生に話してもらおう。

「早稲田大学の文学部といいますと、夜間学部である二文(第二文学部)が昼間学部の一文(第一文学部)とともに存在することが大きな特徴で、幾多の人材をこれまで輩出してきました。しかし夜間開講など世の中の趨勢に合わない面も多々出てきたこともあって、ここで思い切って文学部と文化構想学部とに再編することにしたものです」

いかにも早稲田大学らしい伝統を誇る「看板学部」一文と二文がとにもかくにも消えてしまう――これも時代の流れとはいえ、宮城先生をふくめ卒業生や教員たちには惜別の情も禁じえないという。ただ新学部をすべて昼間開講にするのではなく、文化構想学部に夜間だけでも卒業できるコースを残して、二文のよき伝統は継承していきたいとも語る。

新設の文化構想学部では各専修コースの垣根にとらわれない広領域の教育研究がなされる。多元文化論系をはじめ、複合文化、表象・メディア、文芸・ジャーナリズム、現代人間、社会構築――の計6論系(コース)に分かれる。このうち宮城先生の所属は複合文化論系になる。

「この複合文化論系では、いくつかの言語にまたがる文学作品の比較研究や、文化圏を超えた文化人類学の研究、さらに文化と文化が出会ってどのように受容し変容していくのか等の研究がされることになります」

言語を中心にした文化の比較研究、それも複合文化論系のひとつの核になるというわけだ。

異文化受容研究こそ文化構想学部に格好のテーマ

戸山キャンパス正門。ちょうど入試期でチェックが厳しい

ところで宮城先生の専門分野は「西洋古典学」「ルネサンス研究」「異文化受容研究」となる。

「西洋古典学はヨーロッパでの伝統的な学問領域で、古代ギリシャ語やラテン語を学んで古代ギリシャ・ローマの文学や文化について研究するものです。ローマ文化はギリシャ文化を、ギリシャ文化はメソポタミアやエジプトの文化を手本にしている経緯はありますが、ひとくちに古代ギリシャ・ローマ文化といってもそれぞれ全くといっても良いほど別のものという側面も多いのです」

古代ギリシャやローマの文学や文化を学ぶためには、ほかの文学や文化についても複眼的にとらえ互いの関係や影響がわかっていないと理解できないと宮城先生は強調する。

「人間が集団をつくるとそこに文化が生まれます。それが別の集団や文化と出会うことで、刺激されたり影響されたりして変わっていきます。これは同時代のほかの文化に影響されることもありますが、古代のギリシャ・ローマ文化などから時間を超えて影響されることもあります。その意味で、文化の発展というのは直線的ではありません。また異文化を受容して変容するためには、受容する側にそれだけのパワーが必要で、それがまた重要なのです」

この異文化受容の研究こそ新学部・文化構想学部に格好のテーマだとも話す。古代ギリシャ・ローマ文化が時間を超えて影響したものといえばルネサンスが有名だが、これも宮城先生の研究テーマのひとつとなる。自身の研究について説明するときの先生は門外漢の記者にも丹念に話してくれて、その実直な人柄がよく伝わってくる。

さて07年度は文化構想学部スタートという大事な年だが、実はこの1年間宮城先生は在外研究のために日本を離れる。その行き先は、なんと彼のイタリア・フィレンツェだ。

「古代西欧における歴史や文学などの文献資料の多くは古代のパピルス文書から中世に羊皮紙に書き写されて現代に伝わりました。そうした古い文献を大量に保存しているのが、バチカンとオックスフォード大学それにフィレンツェなのです。このフィレンツェがルネサンスの中心的な街であったこと、中世やルネサンスの原資料が残っており古代文献の写本が数多く集められていること、そうしたことから今回この目で実物を見て回ろうと思い立ったわけです」

そうした原資料に逐一あたることで、なぜイタリアの当時の人々がルネサンス運動を起こし得たのか? そして古代ギリシャ・ローマ時代に学んで新しい文化を創造するに至ったのか? それらの謎にぜひ迫ってみたいと意欲を見せる。

「異文化受容」「ラテン語・ギリシャ語」ゼミも

閑散とした冬の日の戸山キャンパス

宮城先生の在外研究は今回1年間で、08年4月には教壇に復帰する予定だ。ということは現在受験生の諸君が新大学生として入学するときと時を同じくすることになる。この教壇復帰にともなって先生はゼミ演習も開講する予定で、その統一テーマは「異文化受容研究」となる。

「わたし自身としては文化構想学部にふさわしいゼミのテーマだと思っているのですが、いまの若い学生さんが果たして興味を持ってくれるのか非常に心配です(笑)。それにラテン語とギリシャ語の授業も担当する予定です。両言語ともに現代では使われなくなった言語ですが、学んでみたいという学生が少数ながらもいますので教えてみたいと思っています」

そんな学生たちへの指導方針については次のように語る。

「一緒に考えていけるようなゼミにしたいですね。わたしの専門は古代ギリシャ・ローマの文学と文化であると分かってもらえた上で、それでも学生さんのほうからアジアなど他地域の問題について提案があるのでしたら、専門分野ではありませんが私も一緒になって考えていくような場にしたいと思っています」

宮城先生が古代ギリシャ・ローマに目を開かれたのは、H・G・ウェルズ(Herbert George Wells)の名著『世界文化史』を小学生のときに読んだとき。その中に掲載されていたパルテノン神殿の日本建築とはまた違う美しさが印象に残ってからだという。以来40年――この研究に没頭してきた先生だが、その魅力を次のようにまとめてくれた。

「研究を通して自分の知らなかったことを発見する喜び。それに人間の思考パターンの変わっていない面白さですね。同じような状況では、現代人も古代人もよく似た考え方をしているのに改めて驚かされます。そうした発見と再確認がこの研究の魅力のひとつですね」

こんな生徒に来てほしい

この大学とくに「文学部」には、勉強の得意な人とそうでもない人(笑)等々いろいろな学生さんがいるんですね。しかし勉強があまり得意でないような人の中に思わぬ影響力のある人がいたりして、そうしたことが他大学に見られない早稲田らしい伝統的パワーにもなっていると思います。教える側としては、多様なタイプの人に来てほしいだけです。どうしても自分にやりたいことがあって、その目標に向かって努力を惜しまない人だったらより好ましいですけどね(笑)

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。