早稲田塾
GOOD PROFESSOR

駒澤大学
経済学部 商学科

曽我 信孝 教授

そが・のぶたか
1948年大分県生まれ。73年名城大学大学院商学研究科修士課程修了。73年折尾女子経済短期大学講師。同助教授をへて、81年駒澤大学経済学部講師。同助教授をへて91年より現職。主な著作に『総合商社とマーケティング』『マツダ マーケティング戦略(編著)』(いずれも白桃書房)『マーケティングの基線』(共著、同文館)などがある
曽我先生が主宰する「曽我信孝のホームページ」のアドレスはこちら↓
http://www.geocities.jp/nobusoga/

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モラルを踏まえた新マーケティング理論

曽我研究室のある「第二研究館」建物
春爛漫の駒澤大学キャンパス全景

今週の一生モノ名プロフェッサーには駒澤大学経済学部の曽我信孝教授にご登場願おう。まずは駒大経済学部の特徴から聞いてみよう。

「教育内容が非常にキメ細かなことが他大に比べても一番の特徴といえるでしょう。とくにゼミ指導には力を入れていて、専門ゼミは2年次から始まり、1年次の学生にも入門ゼミが用意されています。経済学科・商学科・現代応用経済学科の3学科からなり、各学科間の垣根が低くて学科変更が容易なのも特筆すべきでしょうね」

このうち現代応用経済学科は07年度から開設された新学科で、モデルなき時代にあって日本経済の再生を担う人材の育成を目標に新設されたばかり。今回ご紹介する曽我先生は商学科の所属で、その専門は「マーケティング」だ。

マーケティング(marketing)は以前からよく耳にするフレーズだが、正しい意味で理解している人は少ないのではないか? ここは曽我先生自身から分かりやすく説明してもらおう。

「いわゆるマーケティングとは、開発・製造された新商品が消費者の手に届くまでの企業側による販売促進活動のことをいいます。つまり、消費者の意向をリサーチしつつ、どんな製品や商品を開発してその価格設定をし、どんな販売ルートや販売促進のプロモーションをしたらいいか等について考えることがマーケティングです」

ただし、これは古典的ともいえるマーケティングの定義にすぎない。いま実際に曽我先生が研究テーマとしているのは「大規模企業の市場戦略の分析」という新しいマーケティング理論の構築だ。

「かつてのマーケティングにおいては、企業・開発側にとって消費者はまさに神様でした。ところが最近は利益優先・株主重視のマーケティング手法が主流となっていまして、消費者はカモにされやすくなった(笑)というか、以前のようには大事にされないという傾向が目立ちます。Y乳業はじめM自動車・M電器・F製菓――等々の不祥事続出に見られるように、とくに大規模な上場企業においてこの傾向が強い。その原因のひとつに、コーポレートガバナンス(企業統治)におけるモラルの低下あるいは欠如による大事なマーケティングの歪みがあります」

ここにおいて、従来のマーケティング理論に企業モラルの問題も踏まえて考えるべき――そういう独自の発想で研究に取り組んできたのが曽我先生その人なのだ。こういった視点からのマーケティング研究は国内初のパイオニアということになる。

また、日本経済を戦後一貫ささえてきた総合商社に焦点をあてた調査・分析から、日本における「マーケティングの国際化」という現象はバブル経済の高揚期にあった80年代後半から始まったという説を展開し大きな評価も得ている。これらについては曽我先生の労作『総合商社とマーケティング』(白桃書房)に詳しい。

3年次中に卒論提出続出の理由

サークル勧誘攻勢を受ける新入生
駒澤キャンパス内にある「禅研究所」

駒澤大学経済学部における専門ゼミは2年次からはじまる。駒大経済学部のゼミ演習の特徴として、学科の枠を越えて各学生の興味と関心のあるゼミを選択できることがある。曽我ゼミの定員は各学年20人だが、人気のあるゼミだけに定員の倍を超える応募がある年もあるらしい。その選抜方法だが、2人の先輩ゼミ生と先生との3人で面接して決める。先輩学生たちの意見も重要視したゼミ運営をめざす先生の方針もあってのことだ。

そんな曽我ゼミには大きな特徴が2つほどある。まずひとつ目として、何とほぼ全員のゼミ生が3年次中に卒業論文を仕上げてしまうことがある。

「うちのゼミに入りましたら、とにかく2年次中にマーケティング理論の基本的な知識を身に付けてもらいます。それで3年次になりましたら、それぞれのテーマで論文に挑んでもらい、できればそのまま卒論として提出できるくらいの内容と質を備えたものに仕上げるよう指導しているわけです」

そのためもあって夏ゼミ合宿では1人ひとりの論文について約3時間もかけて徹底的な討議を重ねる。訴えたいテーマがきちんと表現されているか、しっかりと弁別構成がなされているか、マーケティング手法を理解して論文に活用されているのか等について綿密に議論がなされる。3年次中に卒論をまとめてしまうのは、4年次の1年間は就職活動を存分に頑張って悔いのない就職をしてほしいという曽我先生のやさしい親心から。

「せっかく最高学府で4年間学びながら、就職浪人をして不本意なフリーターなどになって欲しくないですからね(笑)。すべてのゼミ生が願望通りというわけにはいきませんが、ほぼ希望に近い就職を達成しています」

ニッポン発のバブル大崩壊後の「就職氷河期」からようやく脱して「売り手市場」が喧伝される時世となった。とはいえ「勝ち組」大企業以外への正社員就職状況はまだまだ厳しい中にあって、就職希望者の就職率100%を曽我ゼミ卒業生たちは達成し続けてきた。

曽我ゼミ式討論で自らを鍛える

隣接する駒沢オリンピック公園の全景
折りしも桜満開! 昼間から花見に興ずる人々も

もうひとつ曽我ゼミ名物とも称される一大イベントとして、毎年12月に開催される2年次から4年次までのゼミ生全員参加による「ディベート大会」がある。全ゼミ生を12チームに分けて、2チームずつの対戦で得点を競い合う。後輩思いのOB・OG諸氏から提供された豪華賞品(?!)が上位チームには贈呈される。そのためか大会の1ヵ月くらい前から、その準備と練習で大いに盛り上がるという。

ただ曽我ゼミにおけるディベートとは、通例みられる肯定派と否定派に分かれて相手チームを完膚なきまでに論駁し合うパターンとは趣を変え、少しルールを変えている。いわゆるアメリカ式裁判に模して肯定派と否定派が原告と被告になり、判定員である陪審員に向かって自らの正当性を訴えて優劣を競う。本来の殺伐たるディベートルールだと肯定派と否定派の間にシコリが残って後々まで引きずることがあったというが、「オリジナル方式」に変えてからその点も解消され、日本の学生に非常に向いていると自画自賛の曽我先生だ。

さて、そんな学生たちへの指導方針をお聞きして今回のインタビューの締めくくりとしよう。

「わたしの教育哲学のようなものとして、一方的に『教える』ことなどできない――というのがあります。学生自身のほうで自主的に『学ぶ』――そうであって欲しいわけです。とくにマーケティングの手法から長期的な展望を読む術を学んでほしい。いまどき先行きが不透明で長期的な展望など読めないという反論もあるかもしれません。しかし未曾有の混沌とした時代だからこそ一大チャンスととらえた方が若い人にとっては良いはず。まさに現代ニッポンは何でもありで、自分のやりたいことをやって成功する可能性が高い時代です。ラーメン店経営で天下が取れるような時代なんですからね」

要は気持ちの持ち方! 前向きな生き方こそ人生も学業も成功につながる――現役高校生諸君に向けて、そう喝破明言してくれた曽我先生の若々しい姿がいまも印象に残る。

こんな生徒に来てほしい

まずは、やる気があること。そして大きな目標をもてること、人の話を聞く能力があることくらいですかね。このうち人の話を聞く能力というのは、「頭」で聞いて理解するのではなく、「身体」で聞いて理解するということで、今も昔もこれができる人は案外に少ない。そのためには、学校や受験には直接関係のないような本(小説でも何でも構わない)をたくさん読みまくるのが早道です。一見ムダのような知識と経験あってこそ、広い心が育まれ人の話をきちんと聞ける能力が養われるのです。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。