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GOOD PROFESSOR

東京外国語大学
外国語学部

高島 英幸 教授

たかしま・ひでゆき
福井県生まれ。77年福井大学教育学部卒。79年広島大学大学院教育学研究科(英語科教育)博士前期課程修了。79年鹿児島大学教養部専任講師。82年米カリフォルニア大学修士課程(TESL)修了。89年より兵庫教育大学大学院助教授をへて教授。この間95年米テンプル大学大学院博士課程(TESOL)修了。04年より現職。主な著作に『実践的コミュニケーション能力のための英語のタスク活動と文法指導』『文法項目別英語のタスク活動とタスク――34の実践と評価』(いずれも大修館書店)『小学校におけるプロジェクト型英語活動の実践と評価』(共著・高陵社書店)などがある

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「ニガテ意識」克服のための外国語教授法

高島研究室のある「研究講義」棟
春めいてきた東京外国語大学の正門

今回ご紹介する一生モノの恩師は東京外国語大学外国語学部の高島英幸教授。お会いしての第一印象は、優しくそして非常に情熱的だということ。その熱血ぶりを紹介する前に、東京外大(学部)の教育システムについて述べておこう。

外国語学部の1~2年次学部生は2年間かけて26専攻の言語から2言語(主専攻語と副専攻語)を選択して学習していく。続く3~4年次では、習得した言語能力を生かして「言語・情報」「総合文化」「地域・国際」の3コースから1コースを選択して専門知識を身に付ける。04年度から、この標準的な学部生のコースに加えて5つの「特化コース」が新設された。

このコースは高度な専門知識と実務能力を併せもった人材の育成を目的としている。いわゆる優秀な学生の「飛び級制度」を使って、学部と大学院修士課程を一貫させた5年制のコースだ。ここでは「日本語教育学」「英語教育学」「言語情報工学」「国際コミュニケーション」「国際協力」の5つが用意されている。このうち「英語教育学特化コース」の代表を務めるのが高島先生その人だ。

学部と大学院修士課程を一貫させて通常6年間のところを5年間で修了させようというもので、履修する学生にとって学士と修士が同時に付いてくるメリットが非常に多いコースといえよう。その主な目的は高度な職業人の育成で、(小)中学校から大学までの英語教師や英語検定・英語教材開発者、それに研究者などを目指す者を想定している。07年現在1期生として4年次に4名が在籍し、08年には修士論文を提出する予定という。

この特化コースの定員はわずかに5人という狭き門! その5人のために学内外から選りすぐりの教員が集められ、ほとんどマンツーマンに近い親身の指導がなされる。4年前まで兵庫教育大学大学院において現職の英語教師に英語教育教授法を指導してきた高島先生はこの分野の第一人者とされる。ほかにも、第2言語習得理論・英語テスティング・コーパス言語学などの研究を専門とする教授・准教授がズラリとそろう。いずれも各分野を代表する第一線の研究者たちばかりだ。

「こうした教員スタッフたちから指導を受ける学生たちがまた素晴らしい(笑)。頭脳明晰で打てば響く人ばかり。そのうえ温かく人間味もあって手ごたえは十分ですね。将来どう育ってくれるのか本当に楽しみです」

「タスク活動及びタスク」を取り入れた英語教授法

ポプラの新緑が美しいキャンパス

このように特化コースの優秀な学生諸君を絶賛する高島先生は、「タスク活動(Task Activity)」と呼ばれる日本人学習者のための言語活動を開発したことでつとに知られる。NHKの教育番組で紹介されたこともあるらしい。

「外国語・英語の学習法には『聞く』『話す』『書く』『読む』の4領域がありますが、このうち日本人は『話すこと』がとくに苦手とされます。この話すことを他の3領域とできるかぎり融合させてどのようにして習得させていくべきなのか? その解決策として文法指導を組み込んだ活動が『タスク活動』となります。その最終目的はタスク(すなわち与えられた課題を自らで解決できること)ですが、その前段階の活動を『タスク活動』と呼んでいます」

現在の日本における英語授業は、中学校も高校も限られた時間の範囲において行なわれている。そうしたカリキュラムのなかで最大の効果・効率をあげるべく高島先生が考案したのが「タスク活動及びタスク」教授法ということになる。ここでタスクとは、習得したい言語(英語)をつかって理解・表出させたり情報交換などを行なわせる課題・テーマのこと。その具体的な活動内容としては、たとえば「機能があまり多くなくてもよいので、海外でも使える携帯電話を探す」といったタスクを与えられ、生徒2人が組になって英会話を楽しみながら文法項目(たとえば比較級など)を習得していくことになる。

「このとき生徒たちの会話の文法項目などに注目するのが指導者の役目となります。たとえば比較級を正しく使用しているかどうかを逐次チェックし、間違えていたらそこを正していきます。これらの手法を英語の授業に取り込むことによって、生徒のやる気が非常に高まり、場面に適切で正確な英会話・英文法が自然に身に付いていくわけです」

スピーディーな話し方で自ら開発した指導法を実演してみせてくれる高島先生。非常に熱く情熱的な先生であることがビンビン伝わってくる。

そもそも『話す』『聞く』の日常会話レベルの初学者時の習得において語学の才能うんぬん等などあるわけがない。もし現役高校生のあなたが外国語(とくに英会話)を苦手にしているとしたら、中学以来うけてきた受験至上主義的で無味乾燥な「ニッポン式英語指導システム」にこそその原因があるのかもしれない。

なお03年から06年まで「学習指導要領実施状況調査」という名称の中学生の英語学力調査委員会の委員や主査を高島先生は務めてもいた。この分野の第一人者たる所以でもある。

お茶とケーキが出される文字どおり「おいしいゼミ」

ここでゼミでの学生たちに対する指導方針についても聞いておこう。英語教育学のゼミ演習は、特化コースのみの3・4年次合同でなされる。高島ゼミの現在のゼミ生は各年次4人ずつの計8人。その内容としては、講義前に全員で文献講読をしておき、そのテーマについて互いに議論をしていくスタイルが中心となる。ときには子どもの言語習得や脳の発達などの教材ビデオを鑑賞したりもするという。

この高島ゼミにおいて珍しいというか受講する側として特筆すべきはその進行スタイルだろう。なんと毎回お茶とケーキが出され、それを飲食しながらゼミは進められる。

「ゼミのメンバーが8人しかいない(笑)ということもありますが、テキスト資料の横にお茶とケーキがあるだけで、大学講義にありがちな教える側からの一方的な雰囲気がほぐれていきます。文字どおり甘い空気(笑)が作れますね。教員と学生(あるいは学生同士)の距離感もなくなって、とても雰囲気のいい(おいしい!)ゼミになります」

教育とは、教師の側から一方的に与えるものではなく、教える側と教えられる側が相互に啓発し合ってなされるべきもの――熱くそう語る高島先生。学生時代にこんな先生にめぐり会えるとすれば、その後の英語力も人生も大きく変わっていくことだろう。そんな学生たちに対する指導方針については次のように語る。

「今どきの学生さん達はみんな親御さんから大切に育てられた人ばかりです。ですから私も彼らに精いっぱいの愛情をもって接しているつもりです。彼らも私との関係をとても大切にしてくれます。その暖かさが教育の基本です。それに、ゼミ指導や授業における『高島の姿』それ自体が英語教員としてのモデルでありたい――そう伝えようと思わなくても伝わるものが本物だと思っています」

臆することなくそう言い切る高島先生。26年間この道一筋に研鑚を積んできた自信が言わせる言辞だけに説得力が違う。インタビューの最後に、長年の経験から得た学生指導のポイントについても語ってもらった。

「教室ではまず教師は生徒との距離を近づけるように努力しないといけません。ふつう教室では生徒は動けませんが、教師は動き回ることができます。教師が近づいてあげなくては。授業は各生徒の目を見ながら行ないます。テキストを一緒に読んだりするのも感心しません。これでは生徒が見えませんね。1対30ではなく1対1の関係をつくることが大事なのです」

「生徒側が望む授業をしているのか、ちゃんと理解しているのか――そうしたことを常に考えつつ授業を心がけるべきです。理解できない生徒がその場で質問できるような雰囲気をつくること、それが大切です。教師は、生徒が最大限に学べる環境を保障してあげなくてはなりません」

文字どおりグッド・ルッキングにしてエクセレントなプロフェッサー(そして教育者)として並々ならぬ情熱にあふれる高島先生。初対面の筆者としても、「ちょっと英語をやり直してみるかなぁ」とそんな気にもさせてくれる貴重な取材となった。

こんな生徒に来てほしい

英語を教えたい人、英語にかかわる仕事をする希望のある人、そして人とかかわることが好きな人にぜひ来てほしいですね。東京外大に入った当初において学生たちの学力にそれほどの差はありません。それが特化コースなどで学んでいくと、分度器と同じで初めのわずかな差が時とともに末広がりで大きくなっていくのです。英語教育学に興味と関心のある人は是非わたしたちに会いに来るべくトライしてみてください。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。