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GOOD PROFESSOR

東京農業大学
国際食料情報学部 国際バイオビジネス学科

門間 敏幸 教授

もんま・としゆき
1949年埼玉県生まれ。72年東京農業大学農学部卒。72年農林省(現農林水産省)入省。東北農業試験場・筑波農業研究センター勤務をへて99年より東京農業大学国際食料情報学部教授。著作は『バイオビジネス・シリーズ(共著)』(1~6)『TN法――住民参加の地域づくり』(ともに家の光協会)『牛肉の需給構造と市場対応』(明文書房)など多数

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バイオビジネス経営学の先端を拓く

門間研究室のある18号館建物
東京農業大学世田谷キャンパス正門

東京農業大学国際食料情報学部の国際バイオビジネス学科――ここは世界でほとんど唯一ではないかと思われるほどにユニークな農業系ビジネス学科として知られる。この特色ある内容について、同学科で教壇に立つ門間敏幸教授にくわしく聞いてみよう。

「端的に申せば〝食〟にかかわるバイオビジネスの起業家を育成するのがねらいの学科です。具体的には入学した学生は、1年間の基礎教育を受けた後に2年次から3つのコース(『経営・マーケティング』『経営情報』『資源環境ビジネス』)に分かれてより専門に特化して学びます」

「その大きな特徴としては、まず全学生に義務づけている実地研修でしょうね。2年次の夏休みに日本全国から海外までの農場や牧場あるいは食品の販売や加工などの企業やIT企業などに赴いて学校で学んだバイオビジネスの実態を肌で感じてもらいます。また学生の3分の1が海外からの留学生(世界10ヵ国以上)で、日常的に国際的な環境で学べます。科目によっては英語で授業が行なわれていることも特徴のひとつでしょう」

非常にユニークな学科内容とその魅力的な様子が伝わってくる。ところで門間先生の前職は農林水産省の職員で、30年近く農業試験場にあって研究の仕事に携わってきた。その試験場時代から今まで誰も試みなかった先駆的な研究に挑んでいることで知られる。

「たとえば『圃場カルテシステム』を開発しました。これは、人間の健康診断と同じように畑ごとに〝カルテ〟を作って土壌病害による野菜の連作障害発生の予測をして〝処方箋〟を出すようにしたものです。これこそ世界で初の試みでしたね(笑)」。

経営者の意思決定を支援する「TN法」

東京農業大学世田谷キャンパス全景
18号館オープンスペースでPCに向かう学生

「また私自身が考案した住民参加型の地域づくりの手法に『TN法』というのがあります。これはコンピューターなど情報処理技術を活用して、住民の意見を短時間で収集・分析して合意形成や意思決定に役立てようとする手法です。こうしたTN法による地域づくり支援ができる人材の育成に現在力をいれています。また、より現代的なニーズに応えるため、携帯電話を活用した支援システムの開発も進めています」

ところで門間先生の専門は「バイオビジネス経営学」。実はこの分野へ先生が本格的に注目しだしたのは東京農業大学教授となってからだという。バイオビジネス産業は人類が生存する限り絶対になくならない持続的な産業であり、また人の生命と直接に関わる産業でもある。それだけに、その経営者にはその他の企業とは異なる経営者能力が必要とされる。そう考える門間先生は、実際のバイオビジネス企業者へのインタビューを通じて経営者としての資質を解明した。

「こうしたバイオビジネスの成功者には共通している要素がいくつかあります。ちょっと挙げてみると、①生命産業であるという認識があること、②きちんと時間と業務の管理ができる③直感と客観的データを使い分けられる④いつもプラス志向である⑤どんな責任でも取る覚悟があることなどでしょうか」

こうした先駆的経営者たちの苦難の数々とサクセスストーリーについては、門間先生が中心となってとりまとめた『バイオビジネス・シリーズ』に詳しい。それに加えて「人間の意思決定メカニズムの解明」も農業試験場時代から続くもうひとつの研究テーマだという。

「バイオビジネスに限らず、経営の予測というのは人間の意思決定の結果なのです。我々人間がやる仕事・ビジネスというのはすべて意思決定の連続なわけです。これが集団や組織における意思決定となると、先述の『TN法』の活用分野となります。ここで我々が求めるものは農業ビジネスにおける経済的・経営的な意思決定ですから、市況の動向とか消費者ニーズなどを見ながら、①この投資はすべきかどうか②どんな農作物を作付けすればいいのかなど意思決定プロセスを検証していくわけです。あくまで農業ビジネスとしての観点から検討するわけですね」

バイオビジネス経営者をめざす若者を育てるのは農業試験場の研究員ではなかなか出来ないことで、これこそ農大教授なればの醍醐味なのだろう。卒業していく教え子たちの今後の活躍に注目したいとも語る門間先生だ。

〝五感〟重視の卒論は「学長賞」連続受賞

小田急経堂駅から続く「農大通り」

東京農大国際バイオビジネス学科では3年次から各教員主宰のゼミ演習を履修する(1年次に導入ゼミを選択することもできる)。門間ゼミでは例年15~20人のゼミ生を受け入れているが、入ゼミ希望者はその倍にも上るほどの人気を誇る。新ゼミ生の選抜方法については先輩ゼミ生らに任せて面接で決められる。現役ゼミ生たちに寄せる門間先生の信頼の厚さもうかがえる。

「わたしのゼミでは特定の研究テーマは設けないようにしています。ゼミ生はおのおの自由に研究テーマを決めて研究していきます。学生それぞれの個性を伸ばすように指導しているつもりです。ただ「研究テーマは自由」というのは今どきの学生にとってかえって辛いらしいんですね(笑)。ですから3年次のゼミでのグループ研究として『五感を磨く研究』というのを課すようにしています。たとえば有機栽培と無機栽培の農産物の味の違いを調べるとか、ミネラルウオーターを飲みくらべて違いを確認する――など自らの〝感応試験〟を繰り返すことによって五感を磨くことをさせています」

もちろん実際のゼミ活動はこればかりではない。マネジメント研究や消費者動向の調査などバイオビジネス学科らしいオーソドックスな調査研究もさかんに行なう。そして4年次になると卒業論文の執筆に入っていく。

「ただ昨今の学部4年生の宿命として就職活動がありますから、卒論は3ヵ月以内に集中して仕上げてしまうように指導しています。それでも卒論の賞はうちのゼミ生が総ナメの状態で、最高賞である学長賞はこのところ4期連続でうちのゼミ生が受賞しているんですよ」

これにはゼミ所属の大学院生たちの功績が大きいらしい。もちろん卒論テーマの決定など重要なことは門間先生が相談指導に直接あたるが、日常的な相談指導などは先生に代わって大学院生たちが親身に行なっているという。

「こうした研究室内のチームワークが非常にうまくいっているので、ふだん私は何もすることがないんですよ(笑)」

そんな門間先生だが、卒論が提出されると連日早朝7時に登校して各卒論に細かい朱を入れているのは誰あろう先生自身なのだ。そうした学生たちへの指導方針についてさらに聞くと――

「まぁ特にありませんね」

あっさりそう答えて破顔一笑の門間先生。そしてこう続けた。

「とりたてて指導方針などというのはありませんね。ただ常日ごろからゼミ生たちの顔色や表情は注意して見るようにしています。問題を抱えていたり気力が落ちたりしている場合はそれが表情に必ず出てきます。そういう学生や院生には私のほうから声をかけて相談に乗るようにしています」

研究室・ゼミ内における門間先生との深い信頼関係が伝わってくる。またここにも一生モノの恩師がひとりいた。

こんな生徒に来てほしい

「食」は人類が存在する限り衰退することのない産業です。そして、この産業分野にはべンチャービジネス化できる未知の要素がたくさんあります。東京農大の卒業生のうち企業経営者は約5000人にも上るといわれるほどで、本学学生諸君はビジネス感覚に富み起業意識が高いんですね。食関係の産業は人の命と健康を支える崇高にして普遍的な仕事ですので、若いみなさんが大いにチャレンジしてくれることを願っています。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。