{literal} {/literal}
GOOD PROFESSOR

東京電機大学
未来科学部 情報メディア学科

高橋 時市郎 教授

たかはし・ときいちろう
1954年新潟県生まれ。77年新潟大学工学部電子工学科卒。77年日本電信電話公社(現NTT)入社。NTT研究所 研究グループリーダー・主幹研究員などをへて同社を退社。03年東京電機大学工学部教授。07年学部新設により現職。主な著作に『CG入門』(分担執筆・丸善)『ディジタル情報流通システム』(共著・東京電機大学出版局)『コンピュータ・カオス・フラクタル』(共訳・白揚社)などがある
高橋先生が主宰する「ビジュアルコンピューティング研究室」Webサイトのアドレスはコチラ → http://www.vcl.im.dendai.ac.jp/

  • mixiチェック

ビジュアルコンピューティングの最先端

高橋研究室は11号館タワーの16階にある
研究室において学生指導中の高橋先生

今週ご登場ねがうのは東京電機大学未来科学部の高橋時市郎教授。いくつものIT研究プロジェクトを抱える高橋先生、その大半が世界初の研究というから、まさに一生モノの恩師プロフェッサーだ。しかも、その学生指導にかける熱意もすごい。そんな先生の専門分野をひと言でいえば「ビジュアルコンピューティング」というカテゴリーとなる。

「わたしの研究はCG(コンピューター・グラフィックス)に画像処理技術を応用した新しい表現法ということに一応なります。前職のNTT研究所時代から追究してきたテーマがたくさんあることに加えて、興味を持ったものは何でも研究の対象にしてしまう生来の性格もあって(笑)、自然にテーマの数が増えてしまうのです。それでも研究テーマを概観してみると、①ビジュアルコンピューティング研究②学習科学と情報可視化技術研究――の2つに大別できます」

そこで世界初となる高橋先生の研究プロジェクトから代表的なものをいくつか列挙してみたい。まずは「ビジュアルコンピューティング研究」分野の代表例から……

【非写実的画像生成技術(NPR)】
写真画像をCG処理して、水彩画や油彩・点描・貼り絵ふうのタッチに加工する技術の研究。東京農工大学との共同研究

【アニメ技術に漫画テクニックを使う技術】
動きのあるアニメーションの1コマを取り出してみても単なる1枚の静止画にすぎない。それに漫画の表現技術「流れ線」を入れてやることで、アニメでの動きが理解できる技術

【CGによる江戸の町並みの復元】
江戸東京博物館との共同研究で、江戸のまち並みを忠実に再現して大型画面にディスプレーする研究。完成すると同博物館に展示され、見学者は江戸市中の好きなところにバーチャルに行くことができる。そして散策気分を味わったり、上空から鳥瞰したりもできる予定

さらに次に挙げるのが「学習科学と情報可視化技術研究」分野の代表例の数々……

【学習活動プロセスの可視化・分析】
学校・教育機関など多数の生徒を対象にしてコンピューター指導をするとき、ひとりの教師が自分のコンピューター画面上で生徒全員の学習活動状況を把握できるシステム

【情報検索・閲覧履歴の可視化】
過去に情報検索したWebサイトに再アクセスしようとしても再訪できないケースが多い。過去のWeb閲覧履歴を整理分析して分野別に可視化することにより、自動的に再アクセスを容易にする研究。前項とこの研究はともにNTT研究所との共同研究

【遠隔講義システム】
京都大学と米UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の遠隔講義システム、京都精華大学マンガ学科遠隔添削システムなどのシステム構築、インターネット上にみんなで協力して図鑑をつくるサイバー図鑑プロジェクトなど。いずれもすでに実用化ずみ

このほかにも研究中のテーマはまだまだあるが、紹介はこのくらいにしておこう。

これらの研究に没頭すると寝食を忘れるくらいだという「研究の虫」を自負する高橋先生。そんな先生の下から世界初の技術やシステムが日々生み出されているのだ。

親身の指導環境を誇る新設「情報メディア学科」

歴史を感じさせる趣の東京電機大学本館
神田キャンパスは都心のビル群で構成される

東京電機大学未来科学部は07年度からスタートした新学部で、①建築②情報メディア③ロボット・メカトロニクス――の3学科からなる。高橋先生が所属するのは情報メディア学科。新学部とその所属学科の特徴についても聞いておこう。

「東京電機大学未来科学部を構成する3学科は、未来の快適な生活空間を考えるうえで重要な分野になることでしょう。建築学科は文字どおり『住む』空間、情報メディア学科は『知』の空間、ロボット・メカトロニクス学科は『行動』の空間――をそれぞれ作り出すという理念で生まれた新しい発想の学部なのです」

「われわれ情報メディア学科は、メディアとコンピューター基盤という大きな分野をカバーしています。少し漠然としていて何を学べばいいのか戸惑う学生も出てきますので、学習コースを6つに分けて設定してあります。学生たちには、卒業までにこのうち2つ以上のコースを選んで履修することが義務付けられています」

さらに情報メディア学科においては1年次から実習やゼミに力を入れており、CG制作やビデオ編集・音合成などを実際に体験できる。また1年次から4年次までの各学生ごとに担当教員が決められ、学習や進路・個人的問題まで相談に乗ってくれるという。これ以上望むべくもない至れり尽くせりの環境が整えられているとも言えよう。

IT技術者に社会性を求める「小言幸兵衛」

東電大11号館16階から丸の内方面を眺める

高橋研究室には現在33人のメンバーが在籍している。その内訳は博士課程1人・修士課程20人・学部生12人ということになる。

「学部生は12人ですが、これで定員いっぱいです。わたしの研究室入りを希望してくれる学生は多いので、毎年選抜になっています。選抜の基準は原則的に成績順となります。しかし面白い研究テーマを提案してきた学生は最優先で選抜するようにしています」

学業成績が多少劣っても挑戦への道を残しているところに、高橋先生のやさしさが感じられよう。研究室内は5つの研究グループに分かれていて、学部生たちはそのいずれでも好きなグループに参加できる。それが学生のモチベーションを上げ、いい卒業研究につながるという考えからだ。

さて、その高橋先生の指導方針についてだが……

「よくマラソンに例えて説明するのですが、私たち教員は伴走者にすぎないのであり、実際に走るのは学生です。そうした自覚が大切です。それに研究のデモンストレーションを事前にきっちり作ること。これがないと研究の方向性を途中で失なう可能性が大きくなります。さらに、たとえ理系であろうとも正しい日本語を使えるようになること。これができると研究目的が明確になります。それが次にするべきことの明確さにつながっていきます」

また高橋研究室の一大特徴として外来の来訪者がひっきりなしに多いことがある。外部の研究者・社会人らへのきちんとした挨拶や、研究室内の整理整頓・清掃などについても厳しく指導しているらしい。

「どうやら情報メディア学科の『小言幸兵衛』とか言われているみたいなんですよ」

そう笑う先生の姿がいまも印象に残る。

取材を終えてから改めて高橋先生の研究成果のデモンストレーションをじっくり見せてもらった。非写実的画像生成技術、アニメ技術に漫画テクニックを使う技術、江戸の町並み再現、情報検索・閲覧履歴の可視化などなど。こうしたIT分野の未来に興味のある人にはまさに垂涎の研究室であることを実感した。

こんな生徒に来てほしい

ことばの意味を誤解されると困りますが、「あざやかな人」に来てもらえると嬉しいですね。「あざやか」というのは、やりたいことが明確になっていて覚悟が決まっているという意味です。ただし高校生くらいでは、研究のテーマまでは決めていなくても構いません。「自分はコンピューター方面に進む」ぐらいの覚悟でもいいと思います。まだ世の中にない新しいものを創ってみたいという意欲のある人ならさらに大歓迎です。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。