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GOOD PROFESSOR

横浜市立大学
国際総合科学部 政策経営コース

和田 淳一郎 教授

わだ・じゅんいちろう
横浜市生まれ。一橋大学経済学部大学院経済学研究科修士課程をへて博士後期課程途中から米メリーランド大学大学院経済学研究科へ留学(Ph.D)。日本経済学会・日本選挙学会・公共選択学会などに所属。フルートやピッコロ・エレキベース・ピアノなど多くの楽器を演奏する多才な人でもある
和田先生が主宰するWebサイトのアドレスはコチラ → http://homepage2.nifty.com/juniwada/juni/indexj.html

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経済学の手法で「選挙の理想形」を模索

当日キャンパス正門には学園祭用モニュメントが

京浜急行電鉄(横浜新都市交通)金沢八景駅から歩いて5分に立地する横浜市立大学金沢八景キャンパスの門を潜ると、たくさんの白いテントが張られタコ焼きや焼きソバなどの出店が立ち並んでいた。ちょうど学園祭「浜大祭」(07年は11月2日~4日)の真っ最中の晩秋のキャンパスは学生や一般の人で賑わっていた。しかし大学の規模自体はマンモス私立大のように大きなものではないようだ。このあたりの教育環境事情について国際総合科学部で政策経営コース長を務める和田淳一郎教授はこう述べる。

「もし『横浜市立大のどれだけの先生が君のことを知っているだろう?』などとウチの学生に尋ねてみれば、たぶん多くが『5人くらいの先生は私の名前を知っているはず』などと答えるはずです。大きな大学にはない魅力というか、多くの講義が少人数教育であるのは横浜市大のひとつのウリだと思いますよ。よく言われるように、大規模大学より小規模大学のほうが友人の数が多くなるのも事実です」

横浜市大再編の一環として05年に誕生したばかりの国際総合科学部政策経営コースでは、私的・公的の枠を越えた多様な分野にわたる政策の企画や運営・実行ができる人材の養成に主眼を置く。和田先生の専門は経済学だが、一般的な現代経済学におけるマクロ・ミクロといったカテゴリーに当てはまらない分野、いわゆる非市場の分野に焦点をあてた「公共選択論」(なかでも選挙)を研究テーマとしている。

「『経済学』と『選挙』というのは皆さんの中ではうまく結び付かないでしょうか(笑)。わたしが主に研究しているのは、いわゆる『ゲーム理論』の観点から選挙制度を分析することや投票率に関する総合的な研究、また選挙区割りといった政策経営に関するテーマということになります。従来の経済学の範囲から半分くらいは法学・政治学の分野に足を突っ込んでいるとも言えるかもしれませんね」

民主的な選挙で投票することによって自分たちの代表を選ぶことは、私たち国民・市民が主権者として判断を反映させるための具体的な行動のひとつといえる。しかし和田先生は今この国で行なわれている選挙制度が理想的なものではないと考えている。

どうすれば選挙は魅力的になるのか?

時計台の周りは人々が最も行き交う場所

横浜市大が所在する横浜市の市長選では投票率が3分の1前後にまで落ち込んでいる。「民主主義の学校」とも称される全国の自治体行政が市民の意思を反映してきたとは言い切れない状況であり続けることを和田先生は危惧する。

「目下のところどうすれば投票率をアップできるのかということに関心を置いて研究しています。04年から05年にかけては、横浜市選挙管理委員会と共同でGIS(地理情報システム)なども活用した投票率の分析調査を通じて投票行動の研究を行ないました。まぁ当たり前ですが、これまでの研究成果として、駅前に期日前投票所を設けると投票率が上昇するなどといったことが分かってきています」

日本の選挙制度が理想から程遠いことの例のひとつとして選挙区制度の問題を挙げざるをえない。国政レベルの政権交代の容易さなど二大政党制・小選挙区制の長所は多々あるだろう。新世紀を挟んで「失われた時代」とも称される社会的・政治的停滞期が続くこの国において、現職政治家の回避的な政治改革の大騒ぎを経た結果が現下の「小選挙区比例代表並立制」であるという現実的な経緯もある。

しかし二大政党制の方向に向かっていると思われる現在、07年の統一地方選や参議院選挙などでは、多くの「2人区」選挙区において自由民主党と民主党の候補が議席を仲よく分け合うだけの形となってしまった。また3人以上の定数の選挙区では、中選挙区時代に問題視されていた「同士討ち」も垣間見られる。並立制の比例代表による復活当選が「ゾンビ制」などとも言われ、主権者にとって選挙が選択感のない存在になってしまっている印象も強い。さらに、それ以外にも考察すべき問題は数多いように和田先生は考えている。

「選挙に関する事柄で議論しなければならない課題は他にもたくさんあります。市町村の大幅な統合合併が進み、政令都市の再編もなされてきました。しかし各都市・市町村の規模や特色に合った選挙制度は一向に採用される気配がありません。そうなると以前にも増して唯一の政治参加の機会である選挙が魅力を失ないかねません」

ゼミ研究のテーマは基本的に自由!

初冬の横浜市大金沢八景キャンパス全景

一方ゼミ演習においては、和田先生自身の専門や選挙制度問題等に限らず学生それぞれテーマを自由に決めさせて論文を書かせるのをモットーとしている。じつは卒業後に経済学や公共経済学の知識をもって直接的に活躍できるとは考えていないとも。

そもそもマクロ経済学の父・ケインズ(John Maynard Keynes)ももともとは経済学専攻ではなく数学専攻であった。横浜市大独特の「メジャー専攻」「マイナー専攻」の履修システムなどを生かして、国際総合科学部政策経営コースぐらいは多様な学問分野に興味を持つのも良いのではないか? そうした考えの和田先生から、インタビューの最後に現役高校生諸君に向けて次のような提言をお贈りいただいた。

「みなさんが大学4年間で学ぶ実務的・実戦的分野とされる経済学や法学・経営学などの知識がストレートに企業や官公庁など実社会で役に立つかと言われれば、実際はそうでもないことは知っておくべきでしょう。そんなことよりも卒業後の人生や職場などでの意思決定の場面において次にどのような方法によって何をなすべきかという決断の場における根源的な能力を磨いてほしい。私も含めてこの大学のもとで学ぶ経済学的・法学的・政策経営学的な考え方なりを元に自ら決断していく、そういうことが出来るようになることを期待しています。そもそも最高学府たる大学に求められるものは専門学校とは違うはずなのです」

こんな生徒に来てほしい

社会で日々起こっていることに興味がある人。具体的にいえば国や自治体が何をしているか、またそれらが運営する政策などに関心がある人。そういう人はストレートに公共経済学の分野に向いていると言えるでしょう。本学政策経営コースにはいろいろな学生がいて良いと思います。1人ひとりの人間の内面について掘り下げていく人文系タイプの人でも、自然科学に秀でたタイプの人でもさまざまな政策課題を取り扱う本コースではその能力を発揮する場所が用意されています。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。