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GOOD PROFESSOR

東京理科大学
経営学部

小坂 武 教授

こさか・たけし
三重県生まれ。上智大学理工学部電気電子工学科卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。91年より愛知学院大学経営学部助教授。94年工学博士号取得(上智大学大学院理工学研究科・論文博士)。95年英ロンドン大学バークベック・カレッジと英国立ランカスター大学マネジメントスクールにて在外研究。01年より東京理科大学経営学部経営学科教授(現職)。主な著作に『エグゼクティブ情報システム』(シーエムシー)『SIS 経営革新を支える情報技術』(共著 日本経済新聞社)『意思決定支援システム』(共著 竹内書店新社)などがある
ちなみに小坂先生が主宰する「小坂武研究室」のWebアドレスはコチラ → http://homepage1.nifty.com/kosaka/

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IT導入に欠かせない組織の文化

積極的な意見交換も小坂ゼミの特徴といえよう
仲間の発表について真剣に聞き入るゼミ生たち

ここ10年ビジネスマンからよく聞かされる愚痴がある。「コンピューターシステムを更新したらかえって仕事が増えてしまった」と。機能はさらに充実した。スピードも速くなった。蓄えられる情報量もけた違いに大きい。それなのに以前より使い勝手が悪いような気がする。一体なぜなのだろうか?

「事務所オフィスではコンピューターだけを使っているわけではありません。仕事をする環境の中のひとつのツールとしてコンピューターがあるだけです。だからこそ職場環境に有益なIT(情報技術)システムが重要なのに、システム開発者はコンピュータ・システムを高機能にすることだけに集中しやすいんですね。コンピューターを使っている人に目が向いていません」

急激な発展を遂げるITの開発が必ずしもオフィス職場環境を改善していない理由について東京理科大学経営学部の小坂武教授はこのように説明してくれた。

そんな先生の専門は経営情報システム論。ITと組織・市場とが相互に作用し合う領域を主に扱う。IT技術の発展だけを考えるのではなく、とくに経営活動が円滑に行なわれるためにITツールをどのように使いこなすべきなのかを研究してきた。だからであろう。自らの研究の重要なポイントとして先生が強調したのは、そのツールを実際に使う人であり、その組織が抱える文化だった。

「世界最大級のスーパーマーケットが日本の中堅スーパーを買収したとき、欧米で成功した販売システムを導入したことがありました。実績があって先進的とされるシステムの導入となれば誰も反論できません。でも日本には合いませんでした。それは言語で簡単には説明できない日本の小売り業特有の文化がそのシステムに反映されていなかったからでした。これと同じようなことがIT分野でも起こっています」

ある企業・会社で成功したITシステムをそのまま他社で導入しても必ずしも成功するわけではない。その企業がもつ文化を無視して導入すれば機能しないからだ。じつはITプロジェクトの3分の1ほどは途中で投げ出されているのが実情らしい。このような状況を生み出している原因の一端にはこれまでのITの開発・研究方法にもある。

つい最近までIT研究は理学的・工学的にばかり進められ、利用する人や組織を研究対象に含めた社会科学的なアプローチをしてこなかったのだ。小坂先生の研究はこのようなIT環境の不備を大きく改善していく力をもつ。

ただし近年急速に発達した学問だけに、ITに関連づけた経営情報システムについて学生に教えるのは容易なことではない。まず研究の進歩が激しすぎて日本語のよい教科書が出版されていない。なんと世界中の研究成果を一挙にまとめたアメリカのテキストが全世界で使われているのが実情らしい。もちろんその内容は毎年大幅に更新される。そのうえグーグルなどのIT企業の開発スピードなどのほうが研究を上回ることも多い。

こうした最新動向を把握しつつ日本のIT業界の情報をも取り込みつつ学生に伝えることが求められる。この分野特有のスピードには驚かされるばかりだが、小坂先生は「たしかに教科書を作りながら毎年教えているようなものですね」と楽しそうに笑った。

本当の実力をもつよう育てる

学生の自然な笑顔が小坂ゼミの雰囲気を物語る

「企業のトップや中間管理職として従業員に気持ちよく働いてもらえる環境をつくる能力を研究室(ゼミ)で身につけてほしい」

先生はそう語る。そのためゼミ演習の進め方にも工夫が凝らされる。上級生のよい部分を下級生が学ぶ機会を設けるとともに、自分で問題点を見つけて皆で協力して解決するシステムになっているという。

たとえばコンビニエンスストアー最大手のセブン‐イレブンについて学生に調べさせる。同業他社の3倍近い経常利益があることに驚き、学生たちはその理由を探ろうと調査に熱中していく。そのうち賞味期限の切れた商品の廃棄率が低いことや情報システムの導入が他社より早いことが分かってくる。

「ある程度まで学生を見守り続けるんです。調査が行き詰まるまで待って軽くジャブを出すのですよ。『本当にそれだけで3倍も経常利益に差がつくのかな』って」

小坂先生のひと言で学生のさらなる試行錯誤が始まり、さらに研究は進む。結局こうした利益の差は、店舗を指導している担当者が週に1回全国から集まり、データをもとに真剣に議論していることから生まれていることなどが分かった。

「わたしはゼミで発表する班の指示はもちろん班分けですら具体的には指示しません。指示したり教えれば楽なんですけれどね。じっと待つことで学生は成長していきます。そうして1年ぐらい経つと学生は驚くほど変わりますよ。ゼミが始まった2年のときは1組しか発表しないで授業時間が余っているのに、3年の後期にもなれば3組も発表が続き、『時間が足りないから昼休みの時間を使わせてください』などと学生からお願いにきますからね」

ゼミで思い知る議論の価値

メモを取りながらしっかりと発表に耳を傾ける
3年ゼミ生による夏期合宿。熱い議論が展開中

このゼミのなかで学生は議論の価値を知っていくのだという。学生同士の議論を通じて、現実には「正解」などないことを理解し、世の中にはいろいろな意見があることを知る。そのなかで問題の解決には会話が重要なことを身をもって学んでいく。そうやって醸成された意識が、将来的には「社員に優しい会社」をつくるのに役立つという。

こうした教育の成果は学生の就職活動にも表われているようだ。小坂先生のゼミ生は、IBMやNTTデータ・三菱東京UFJ銀行などの人気企業に就職を次々と決めているからだ。

「お金じゃなく、人は気持ちで働くものなんですよ」

企業が業績を上げていくための秘訣について小坂先生はそう教えてくれた。そのゼミ生たちが日本企業の中枢を担うようになれば、この国のオフィス環境はもっと働きやすくなることだろう。そんな予感を抱かせた。

こんな生徒に来てほしい

ありがちな既成概念にとらわれずに未来を築いていきたい学生に来てほしいです。また就職時に非常に高い評価を受けるのも理科大の経営学部の特徴ですから、研究室だけではなく学部としてもお薦めしたいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。