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GOOD PROFESSOR

明治大学
理工学部 機械情報工学科

小山 紀 教授

おやま・おさむ
1951年広島県生まれ。78年明治大学大学院工学研究科機械工学博士課程単位取得退学。78年明治大学工学部助手。工学部から理工学部への改組改称があり専任講師・助教授をへて、00年より現職。おもな著作に『流れ学 10章』(共著・養賢堂)がある。ちなみに小山先生が主宰する「メカトロニクス研究室」のWebアドレスはコチラ → http://www.isc.meiji.ac.jp/~oyama/

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人のためのメカトロニクス技術とは

小山研究室のある生田校舎5号館
明治大学の生田キャンパス正門付近

明治大学理工学部機械情報工学科の小山紀教授の専門はいま話題の「メカトロニクス」。メカトロニクスといえば、ロボットなどに代表される最先端の学問・技術分野ということになる。

「わたしの研究室でもロボットやメカトロニクスを応用した機械・機器の開発をしています。ただ、そのいずれも介護やリハビリ支援など人間に奉仕することを目的とするものです。そこがこの研究室の最大の特徴でしょうね」

いま小山研究室で研究開発されているプロジェクトのいくつかを挙げてみると、まずは介護用ロボットアーム、それに歩行困難者のための歩行支援システム、さらに人工指……等々。これらの研究開発において小山先生が常に目指しているのは、機械的な動きを極力排して人の動きにより近い医療・福祉機器をめざすことにある。

「機械やロボットなどによる介護・リハビリテーションなどの奉仕は、実際に生身の人に介護・指導されているかような柔軟な動きをする機器が理想になります。たとえばロボットアームでしたら人間の腕の腱や筋肉の動きを解析して、それがより忠実に再現されるよう研究しています。その目標はわたし自身が使ってみたくなる機器を開発したい――ということが目標となります。『技術は人のためにあるべし』というのは私の基本理念なのです」

世界初の空気圧駆動メカトロニクス機器

各サークルの拠点でもある学生会館

メカトロニクスにかぎらず最先端の技術開発の世界にいると技術者サイド中心の考え方に陥りやすく、ともすれば利用者が機器に合わせるような本末転倒的な事態が起こりがちだ。

これまでコンピューターや情報機器などにはそうした「未完成製品」「非人間的製品」という批判が付きまとってきた。ITビジネスの急成長に対応できる社会層に広く受け入れられる一方で、もっともITテクノロジーの恩恵が期待される障害者や高齢者などの使い勝手は二の次とされていく。そして21世紀初頭のニッポン社会に新たな世代間格差としてデジタルデバイド(情報格差)が暗く重い霧のように横たわる。そうした流れに浮かされない小山先生の見識はさすがと言えよう。

さらにメカトロニクス機器の駆動エネルギーといえば電力によるケースがこれまで常識であったが、小山研究室で開発されている機器類の主要なエネルギー源は、なんと空気圧! なるべく温暖化など地球環境に負荷を掛けまいとする先生の英断がここでも生きる。空気圧による駆動システムによるメカトロニクス機器を研究する大学・機関はおそらく世界でもここだけだろうとも。

そのほか研究室のなかには「空気圧サーボ」の高精度化や省エネ化、さらには遠隔操作システム等について専門的に研究している班もあるという。

さて当の小山先生の周りには飄々とした空気すら漂い、初対面ながら「純朴」というのがピッタリというような印象を受ける。そのうえ非常に謙虚このうえない性格ともお見受けした。

「具体的な研究テーマについては研究室の学生たちがそれぞれアイデアを出して決めます。研究や開発の段取りについても学生自身で計画を立てて自主的に進めてくれます。ですから学生たちの邪魔にならないように私はしているだけなのですよ(笑)」

こうまで言い切る先生。しかし学生たちに研究の意義や愉しさを教え、今どきの若者には珍しい自主性たっぷりの「学究の卵」に育て上げたのは他でもない小山先生その人ではあるのだが……

広い意味での「情報」すべてが研究テーマ

冬枯れの季節の明治大学理工学部全景

明治大学の理工学部機械情報工学科は、機械工学の基礎専門知識を広く学べるところとして定評がある。さらに豊かなアイデアを創出し具現化するための情報化技術を学べることも大きな特徴といえよう。このあたり小山先生は次のように語る。

「現在のほとんどの機械・機器はコンピューターと電気とそれにメカトロニクスの組み合わせで成っていまして、それに対応したのが本学科となります。学科名にも含まれる『情報』とは、単なる情報処理・データプロセシングのような狭い工学的範囲のものに限りません。もっと広い意味での情報、たとえば生物内の生体情報とか、ヒトが脳のなかで覚え込んでいくもの、ヒト同士の間で伝え合うもの、さらには『あうんの呼吸』のようなものまで――それらを広く情報として研究対象とすべきなのです」

なお明大・機械情報工学科では、3年次から「機械科学コース」「機械知能コース」「機械システムコース」の中から選択して履修することになる。このうち機械システムコースは日本技術者認定機構(JABEE)の技術者認定コースに指定されている。

上から目線の学生指導など柄でもない?

小山ゼミOB会「古井戸会」のひとこま

明大機械情報工学科の学部生の研究室入りは3年次の後期からで、毎年の定員は8人程度。その研究室への配属振り分けは学生本人の希望で原則として決められるのだが、これが意外にも特定に集中することなく分散してほぼ定員いっぱいに収まるらしい。

その理由としては、学生たちの研究室入り希望リストが学内上でWeb公開されていることが大きい。刻々変化していくそのリストを見ながら、各学生たちは自らの成績や希望研究テーマなどから逐次変更したりしていって、結果としてうまい具合に平均的に分散される。小山研究室も例年定員いっぱいの8名を受け入れているが、いつも成績上位者で占められるという。このあたり先生の人気の高さも物語る。

「おかげさまで成績優秀な学生が毎年集まってくれているようですね。ただし、それは私が指示的なことを煩くあまり言わないことが洩れ伝わってしまったようで(笑)、学生側からすればどうやら好きなことが勝手にやらせてもらえそうということで人気があるのでしょう」

またまた大謙遜の小山先生である。

3年次後期から研究室入りした学生は、4年次進級までに自らの卒業研究のテーマについて小山先生と相談しながら絞り込んでいく。そして4年次進級と同時に本格的に卒論に取り組む。あらためて学生指導方針についてお聞きすると……

「生来の性格として押しの強いリーダータイプではないもので(笑)、上からの目線で偉そうに指導したりするのが苦手なだけなのですよ。端からやっているところを見てもらって、背中で引っ張っていくというような指導方法のほうが私には合っていると経験的に思っています。実験や研究開発などの作業をいっしょにやりながら、折にふれ気づいたことを話していく実務的な指導方法ですね」

そして「これではちょっとカッコよ過ぎますかね」などとジョークも交えた含み笑いも。こうした小山先生の周囲には常に温かくも優しい空気が漂う。そしてインタビューの最後にこんなエピソードも話してくれた。

「先日ゼミ演習の時間において、中国のある故事・ことわざについてどう解釈すべきか学生たちに問うてみました。実はこれには正解などありません。同じように技術開発における発想やデザインなどにも唯一の正解など存在しないことの方が大半なのです。それよりむしろ一定の研究手法を決断したとして、その選択の理由をきちんと説明して納得させる能力こそがこれからの技術者には必要になってきています」

機械工学・メカトロニクス……これらの最前線を模索していくなかで、どうやら小山先生は一種の哲学的な高みの境地にまで達しつつあるのかも知れない。

こんな生徒に来てほしい

「科学」と聞くだけで斜に構えるような「理科離れ」の若者が年々多くなってきたのは確かに実感していまして、今も昔も「科学立国」「教育立国」以外に展望のない日本の未来にとっても残念な傾向と思っています。たしかに現代サイエンスの「負の成果」として、地球環境が破壊されたりと悪影響を与えていることも事実です。一部で常態化している飢餓や大災害など悲惨な現実も直視しなければなりません

しかし地球史上あり得ないほど膨大な人口がいま生存していることも確かなのです。66億余という未曾有の人類を良くも悪しくも支えているのは紛れもなく科学の力なのです。科学は人々を救う(救うべきだ)――そのようにポジティブにとらえて、人類未到のサイエンスの課題に挑もうとする強い気持ちをもった若い人がどんどん増えてくれたら嬉しいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。