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GOOD PROFESSOR

東京工業大学
地球惑星科学科・大学院 理工学研究科 地球惑星科学専攻

井田 茂 助教授

井田 茂(いだ・しげる)
1960年東京生まれ。
84年京都大学理学部物理系卒業。89年東京大学大学院理学研究科地球物理学専攻修了。90年同大教養学部宇宙地球科学教室助手。93年より現職。
著作に 「岩波講座 地球惑星科学12 『比較惑星学』」 「一億個の地球」(ともに共著・岩波書店)「惑星学が解いた宇宙の謎」(洋泉社)がある。

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惑星系の研究は楽しくてたまらない

井田先生がコンピュータ・シュミレーションを使って説明を始めるところ

東京工業大学の地球惑星科学科で教鞭を執る井田茂先生の専門は、太陽系をはじめとした惑星系の誕生と進化についての理論的な研究である。

「いま、いろいろな惑星系が次々に発見されています。そうした惑星系や太陽系がどのようにして生まれ、どう進化しているのかを、コンピューター・シミュレーションなどを使って研究しています。これがとにかく面白いんですよ」

そう前置きをしてから、井田先生は自身の研究内容について語ってくれた。たとえば、太陽系惑星には岩石でできた地球型惑星と、木星のような巨大なガス惑星とがあるのはなぜか。小惑星や小天体生成の謎。いくつもの小天体の軌道を解析して、そこに刻まれた太陽系形成の痕跡を探る試み。地球と月のメカニズムの解明。地球生成にはどのくらいの偶然と必然が作用しているのか。さらに、生命体をもった惑星はどのくらいの確率で存在するのか―等々。

研究内容を説明する先生の様子は、すこぶる楽しそうだった。よどみなく語られる言葉は情熱的であり、研究の醍醐味を教えてくれた。

「いや、毎日が楽しくて楽しくてしかたないんですよ。学生たちからも先生は本当に研究が楽しそうですね とよく言われています(笑)。 それに、この分野はすごい進歩を遂げています。大型望遠鏡による観測の進歩、その観測データの処理の進歩もあって、新しい発見がどんどんなされています」

目をきらめかせて、先生はそう付け加えた。

惑星系との運命的な出会

緑に囲まれ落ち着いた雰囲気の研究棟

まるで惑星系にとりつかれたような先生だが、こうした研究を始めたのは、 「ある偶然」 からだったと語る。

「大学院に進むまでは、当時の花形だった宇宙論、宇宙の起源についての研究がしたかったんです。が、花形の分野というのは優秀な人材が集まるんで、大学院の試験に受かりませんでね。それで受け身の選択でしたが、惑星系の学科に進むことにしたんです」

やや消極的な選択だった研究分野だが、これが井田先生を虜にする。ちょうど惑星系の本格的な研究は始まったばかりのころで、次々に新天体が発見されていく時期と重なって、沸き立つような興奮のなかに身を置くことになる。

「まだ専門の学会も立ち上がっていないころでしたからね。研究をしている人間にとって、それが学問的に立ち上がっていくときが、一番面白いときだと思うんです。私は偶然にもその機会にめぐり合えました。大型望遠鏡の導入によって、カイパーベルト(帯状の彗星の巣)とか、これまで見えなかった小天体が次々に発見された時期でしたからね」研究領域に足を踏み入れたときの興奮が、そのまま続いて今日に至っている。

東工大地球惑星科学科の毎年の定員は35人。最近の理工系の学科はどこもそうであるように、ここでも大半の学生が学部卒業後は大学院に進む。その割合は90%以上とも。そして、卒業後の就職状況は非常に良いようだ。

「いまは就職難の時代といわれますが、この学科の就職状況はいいですね。東工大で学んだ学生にはコンピューター・アレルギーのないことが信用になっているようですよ。 IT系企業からの求人はもちろん、最近目立つのは民間のシンクタンク(総合研究所)からの求人です」

現在、卒業生の半数近くが、シンクタンクに就職しているそうだ。

抜群の就職率を誇る地球惑星学科

さて、井田先生が学部の学生に講義しているのは 「流体力学」 と 「物理数学」。非常にベーシックな教科書中心の授業で、ある意味では地味な講義になりがちだが、その教え方を工夫しているという。

「授業ではなるべく学生の自主性を引き出せて、目的意識がもてるような教え方をするようにしています。講義も私が一方的にするのではなくて、途中に演習や計算問題を組み入れて学生に発表させるとか、ただノートをとるだけにならないような工夫ですね。ベーシックな理論を学ぶのは面白くないところもありますが、きちんとクリアーしてないと次に進めないのも事実ですから。学生にはそれをモチベーションにして、授業に臨んでほしいと思っています」

最近の若者は、 「主体性がない」「無気力」「指示待ち」 等、あまりかんばしい評価をされていないことが多い。だが、井田先生は別の見方をしているようだ。


「昔の若者といまの若者を比較して、いまの若者の能力が劣っているは思いません。たぶん、主体的に行動する機会が与えられていないだけなんですね。ぼくも教えるときは、自発的な好奇心をもって自分で考えて行動できる学生に育てたいと思っています。いまの学生でも一旦方向が見えると、どんどん自分から行動する人は多いですよ」 それが顕著に現れるのは、4年生の卒業研究のときだという。

「学部の4年生の1年間は卒研に充てられ、学生は各研究室に配属されて、それぞれ専門的なテーマを設けて研究することになります。この卒研に入りますと、それまで勉強に身が入らなかった学生でも、ガラリと変わって研究に励むようになりますね。ぼくらが驚くくらいみんな真剣に取り組みます。ですから、いまの若者も目的さえ見つかれば、主体的に行動して力を発揮することはできるんです」

井田先生らの指導もあってだろうが、卒研に入るとほとんどの学生がこういう状態になるのだそうだ。いまの若者も捨てたものではないようである。

取材の間ずっとにこやかに語られた井田先生。その笑顔は学生にも人気があり、 「井田スマイル」 と呼ばれているらしい。どんなことも愉しそうに語る姿は、大学の先生というより 「頼れる兄貴」 といった印象である。

こんな生徒に来てほしい

自分の中にある才能を、自分で引き出そうというエネル ギーをもった人。それはかなり大変なことですが、逆に それを愉しめるくらいの人がいいですね。そういう人はこちらが少し手助けするだけでどんどん伸びていきます。受験勉強を終えてから、さらに飛躍してほしいと思います。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。