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GOOD PROFESSOR

東京電機大学
工学部 電気電子工学科

安達 雅春 教授

あだち・まさはる
1965年千葉県生まれ。94年東京電機大学大学院工学研究科博士課程修了。94年西オーストラリア大学数学科研究員。95年理化学研究所入所。98年東京電機大学工学部専任講師。同助教授をへて06年同教授。07年学部改編により現職。著作に『ニューラルシステムにおけるカオス』(東京電機大学出版局)『カオスセミナー』(海文堂)がある(著作はいずれも共著)。
ちなみに安達先生が主宰する「学習システム研究室」のWebアドレスはコチラ → http://www.d.dendai.ac.jp/lab_site/gkn/

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「脳」機能をもつ夢の次世代コンピュータ

安達研究室のある電機大11号館ビル
歴史を感じさせる東京電機大学正門

東京電機大学は創立100周年だった07年に学部・学科の大幅な改編を行なった。それにより2学部3学科に分かれていた電気・電子系の学科が1つにまとめられ、「工学部電気電子工学科」が誕生することになった。これによって電気・電子系の学科としては国内最大級の規模を誇る学科ともなった。その電気電子工学科の安達雅春教授こそが今回ご紹介する一生モノの恩師だ。まずは再スタートを切った同学科の特徴から聞いてみよう。

「電気・電子系の学科として最大数の教員を抱える学科になったわけですが、それだけ幅広い専門分野の教員スタッフがそろったことになります。また電気・電子系といっても漠然としがちという学生のために3つのモデルコースを設定し、それぞれ推奨の科目が設定されています」

東京電機大といえば理系大学として就職率の好調さで定評があるが、なかでも電気・電子系の好調ぶりは特筆ものらしい。それもそのはず。これだけIT化が進んだ21世紀初頭の大手製造メーカーで電気・電子系技術者が不要などという日本企業などまずあり得ないからだ。このあたり安達先生も太鼓判を押す。

「卒業生の就職先は、本来の電気電子・情報通信のほかにも鉄鋼や自動車・食品など非常に広範多岐にわたっています」

「ニューロコンピュータ」の基幹研究者

神田キャンパスは通り沿い校舎が並ぶ

さて安達先生自身の専門分野はといえば「非線形システム工学」ということになる。

「ある関数を用いてグラフ化した時にそれが直線で表わされるものを『線形』といい、それ以外の折れ線とか放物線などで表わされるものはすべて『非線形』ということになります。そこで私が研究しているのは、この非線形のシステム工学分野の中から、①人工神経回路モデルの応用②生体信号の解析③動的な神経回路網モデルを用いた記憶情報処理④決定論的カオス現象の工学応用――などになります」

安達先生のこうした諸研究の目的はといえば、生物・生体の脳の神経回路網の機能を模したコンセプトとして開発研究されている最新の「ニューロコンピューター」の開発をめざすことにある。

「いま一般に普及しているコンピューターは、ある演算・数式で与えられる大量の数値計算を高速で計算処理することに特徴があります。そのため人の表情の解析などのパターン認識については苦手なのが現状なのです。これに対し次世代のコンピューターでは生物における脳の働きについて見直しを進めています。具体的には脳科学などの視点から脳の学習方法を解明し、その成果を工学的観点から開発に生かそうというものです」

この分野のIT研究は世界中の研究者たちがそれぞれ巨大プロジェクトを組んで開発競争にしのぎを削っている。そうした中でも世界的に最先端を進むとされているのが、東京大学の合原一幸教授をリーダーとする共同研究チームとされる。そして安達先生もその主要メンバーのひとりなのだ。

じつは合原教授は安達先生が東京電機大学の学生だったころの恩師であり、ニューロコンピューター開発研究への方向を示唆してくれたのも合原先生であったという。それからというもの安達先生は学生時代から今日までずっとこのコンピューターの開発研究ひと筋でやってきたわけで、生涯を懸けて研究する一大テーマにめぐり遭えた幸せな研究者人生ともいえよう。そして今その開発研究の基幹部分の研究を任されているのだ。

そんな先生は写真でもお分かりのように大柄な体躯を誇り、エネルギッシュな印象も強い。その一方で、初対面の印象ながら非常に緻密な気配りあふれる非常に謙虚な人柄ともお見受けした。

学生提案の卒研テーマも許容する自由さ

研究室の学生に指導する安達先生

さて多くの理工系大学では学部4年次になると大半の学生は各教員の研究室に配属されて卒業研究に打ち込む。東京電機大もその例に漏れないが、同大学では07年に大幅な学部改編があり、その第1期生がようやく2年次に進級したところ。したがって各研究室にいま在籍しているのは旧学科の学部生と大学院生ばかりということになる。ただし安達先生の学部生の卒業研究指導においては電気電子工学科になっても現在と同様の指導方針を踏襲していく見込みという。

「わたしの方からこんな卒研テーマがあるというような提示はあえてしません。学生自ら研究室の先輩からこの研究室でアプローチできる研究の方向性について指導を受けて、そのなかから興味のあるテーマを自由に決めてもらいます。実はこうした決め方は指導する私のほうからすると非常に効率が悪いんです。経験のない新しいテーマが出てきたら私のほうもゼロから学ばないといけませんからね。しかし大学における研究はその自由度の大きさにこそ意義があるというのが私の持論なのです。せっかく理系大学で学ぶ機会を得るわけですから、学生たちの心の底から興味をもてるテーマで研究してほしいと思って敢えてそうしているわけです」

自らの苦労を承知のうえで学生たちに好きなテーマで自由に研究させる。口で言うだけなら簡単だが、これを実践することの煩雑さは想像に難くない。大学研究の理想に自らを律するかのように精進する安達先生はまさに一生モノの恩師といえよう。感服の一語である。さらに先生はこんな話もしてくれた。

「学部生が卒業研究に入る前には各研究室の見学が行なわれます。このとき私の研究室では先輩大学院生などに案内してもらうのですが、『この研究室では自分で研究テーマを決めて自主的にやらなければならないから大変ですよ』などと説明しています。ですから、それを覚悟して来てくれる学生が多いのですね」

指導する側だけでなく、学生のほうも自らの労苦を承知のうえで研究室入りしてくるのだ。今どきの若者にありがちな「指示待ち」気質など、ここ安達研究室では「そんなの関係ない!」ということになる。

ところで安達先生は電機大のOBでもある。往年の学生時代と比較して変わらないところ変わったところについて最後に聞いてみると……

「今も昔もあまり変わらないのは、まじめで控えめな学生が多いところですね。一方でちょっと様変わりして淋しいなぁと思うところは、いい意味での『電気オタク』をほとんど見かけなくなったことでしょうか? 私たちの学生時代などは連日のように秋葉原の電気街に部品を求めに出かけていたものですが……」

こんな生徒に来てほしい

わたしが研究しているテーマに興味のある人にはもちろん来ていただきたいし、大いに期待しています。その一方で漠然と大学に入ってくるようなモラトリアム型の人でも卒業するまでには何かつかみ取っていけるよう指導したいとも思っています。いずれにせよ大学4年間で何かを得たいという有意な学生諸君に何とか応えたいと常日頃から考えています。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。