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GOOD PROFESSOR

工学院大学
グローバルエンジニアリング学部 機械創造工学科

雑賀 高 教授

さいか・たかし
1954年神奈川県生まれ。81年東京都立大学(現首都大学東京)大学院工学研究科修士課程修了。81年工学院大学工学部機械工学科助手。90年同講師。96年同助教授。01年同教授。06年学部改編により現職。JABEE推進室室長。主な著作に『技術者の倫理』『初めて学ぶエンジン技術と機械工学』(前著ともにコロナ社)『機械技術者のための熱力学』(産業図書)などがある(著作はいずれも共著)。
なお雑賀先生が主宰する「クリーンエネルギーシステム研究室」のWebアドレスはコチラ → http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwa1027/index.html

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「完全クリーンエネルギー車」の夢の実現者

八王子以外に新宿にも雑賀先生の教授室はある
2006日本EVフェスティバル・ERKデュアルジムカーナ部門で3位入賞

工学院大学グローバルエンジニアリング学部の雑賀高教授こそが今週ご登壇ねがう一生モノのプロフェッサーだ。雑賀先生は世界的な研究者でありながらも偉ぶるところなど一切なく、気さくな雰囲気がその周囲に漂う。先生の研究本拠は工学院大学八王子校舎なのだが、取材の当日はわざわざ新宿校舎にまで出向いていただき、抱えきれないほどの資料までも用意していてくれた。初対面ながら非常に几帳面にして真面目なお人柄とお見受けした。

そんな雑賀先生の専門はといえば、次世代の燃料電池自動車やエネルギーシステムの研究開発をする「エネルギー環境工学」という21世紀初頭のいま大脚光を浴びる分野となる。まずはご自身の研究実績の数々から話してもらおう。

「まず燃料電池自動車の開発についてですが、既存のものは単純に水素電池を採用するものが主流でした。しかし水素の安定的供給がうまく進まずにどこの自動車メーカー・研究機関も行き詰まり状態になっているのが現状なのです。そこで新たに着目したのがアンモニアです。そこから触媒を使って水素を取り出し、車の燃料に供給するシステムを考えました。このアンモニアを介することの利点としては、一酸化炭素と二酸化炭素がまったく排出されない(COxフリー)ということですね」

すでに雑賀研究室では、アンモニアによる燃料電池を開発し、小型車に搭載して実験走行を行ない成功させている(速度30km/時で75分間走行可能)。ただしアンモニアに着目しているのは雑賀先生だけでは当然なく、世界にはいくつかの研究チームも存在する。

「ほかの研究チームではアンモニアから水素を取り出すとき100%の水素化ができず、微量ながらアンモニアが残ってしまうのですね。このアンモニアには毒性と腐食性がありますから、微量でも残ってしまうと実用的な燃料電池としては使えません。私たちが開発した方式が優れていると自負している最大の利点は100%の水素化に成功していることにあります」

これは言うまでもなく世界初の快挙であり、夢の「完全クリーンエネルギー車」の実用化に向けての大きな弾みとなるとして大きく報じられることにもなった。

保冷車のDME燃料電池エンジン採用は近く実用化

初春を迎えた新宿キャンパスの全景

さらにスーパーマーケットやコンビニエンスストアへの商品納入や宅配便などで多く使用される中型以下の保冷車への活用にも大きな期待がかかる。こうした保冷専用車の現在の構造としては軽油を燃料にしてディーゼルエンジンと保冷装置が一体化しているものが大半だ。つまり保冷庫に商品が積載されているとエンジンを停止できない構造で、停車中もアイドリング状態を続けなければならない。これでは24時間稼働での使用台数の多さなどを考えると、排出ガスによる地球環境への負荷は計り知れない。

「この問題を何とかしなければいけないと考えまして、軽油の代わりに次世代合成燃料『ジメチルエーテル』(dimethyl-ether DME)を使用することに思い当たりました。DMEをエンジン燃料に採用することで排ガスは大幅に低減されます。さらにDMEの特長として容易に水素を取り出すことができることがあります。すると保冷庫のほうは水素電池だけで作動させることが可能となりますから、停車中は車本体のエンジンを停止することも出来るわけです」

まさに地球規模の大発明といえよう(特許申請中)。すでに机上の理論段階の検討と研究を終え、いよいよ実用化に向けた研究開発も近く始まるという。

このほかにも雑賀先生の研究テーマをいくつか列挙してみると、①地震災害時の非常用エネルギー供給システム②タールレスガス化炉搭載のバイオマス(生物資源)燃料自動車③バイオマス廃棄物・水素生成による燃料電池システム④エクセルギー(利用可能エネルギー)を用いた新エネルギーシステムの評価法⑤電気自動車の開発――などと並ぶ。まさに自由にして壮観な論点の数々だ。

そのいずれもが成功すれば世界初となり得る可能性を秘めているプロジェクトばかりなのは言うまでもない。

機械系・電子系グローバルエンジニアの育成をめざす

工学院大学新宿校舎の東側の入り口

雑賀先生が所属する工学院大グローバルエンジニアリング学部は機械創造工学科だけの単科学部だ。学部のねらいとしては、世界で活躍できる機械・電気系のグローバルエンジニアの育成を目指すことにある。そのためのカリキュラムなどの特徴について改めて先生に聞いてみると……

「まず学生数に対して教員の数が多く、少人数制教育が徹底されていることが挙げられます。また卒業生の専門技術や知識の応用能力が証明されるJABEE(日本技術者教育認定機構)の認定プログラムとして日本の私大では最初の認定校指定を受けたこと、さらには産学連携型教育・研究プログラム(ECP)が採用されていること等もありますね」

ここでいう「ECP」とは、この研究プログラムに協賛している一般企業から提示されるテーマについて学生3~6人でチームを組んで企業技術者・担当教員とともに3年次から2年間かけて研究開発するものを指す。グローバルエンジニアリング学部生の必修科目でもあり、これが卒業研究にもなり得る。なかにはその研究姿勢や人柄が認められ、そのまま当該の企業に就職するケースもあるらしい。

「このほか技術英会話を中心にした英会話授業(CSGE)に力を入れていることや、全員必修の海外研修・留学制度があることも本学部の特徴でしょう。この海外研修と留学は語学習得が目的ではもちろんなく、海外大学での技術系科目履修や海外企業の技術系職場体験などが主目的になります。この海外体験を経験して自信をつける学生も多いようですね」

こう雑賀先生は説明を加えてくれた。なんとも魅力的で羨ましいくらいの制度が整えられている工学系学部といえよう。

「フォーミュラーカー創作プロジェクト」学生を支援

17階校舎からの高層ビル群の眺望

そうした学生・院生に対する指導方針については次のように語る。

「とくにECPプロジェクトにおいては、学生たちに主体性をもたせて設計段階からどういう手順で完成まで研究を進めていくのかを考えてもらいます。私としては放任するでなく、かといって手取り足取り指導するでもなく、不即不離の関係で見守りながら指導するよう心掛けています」

このほかにも雑賀先生独自のものとして、学部の枠を越えて工学院全学の学生を対象にした2つの「創作プロジェクト」を支援していることでも知られる。それこそが「工学院大学Formula Team」と「工学院大学FCEVプロジェクト」という工学院の看板プロジェクトともなる。

前者はモーターサーキット用のフォーミュラーカーを設計から製作まで行なうもので、後者は燃料電池自動車の可能性・実用性を探る学生主体のプロジェクトだ。最終的にはともにレースに参加して、他大学や他の研究チームの車と覇を競ってきた。

「意欲的な学生たちの創造性や応用力にぜひ力を貸したいと思いましてね」

この弁からも学生諸君への雑賀先生の熱き想いがうかがえよう。この創作プロジェクトは工学院大生であれば誰でも参加でき、先生の謦咳に親しくふれる絶好のチャンスでもある。もし工学院に進学した際にはぜひ参加を検討してほしい。

こんな生徒に来てほしい

こんな生徒でないと駄目というような条件は特にありません。私たちの研究室では燃料電池自動車やエネルギーシステムを中心に研究しています。こうした分野に興味があって、ちょっと稚拙であっても構わないので面白いオリジナルアイデアを出してくれる人であればさらに大歓迎です。面白い研究をしよう――これこそが私たちの研究室のコンセプトですから、そういう気持ちさえあれば誰でもOKですよ!

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。