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GOOD PROFESSOR

大東文化大学
環境創造学部 環境創造学科

山本 孝則 教授

やまもと・たかのり
1948年東京生まれ。81年武蔵大学大学院経済学研究科博士課程修了。89年大東文化大学経済学部講師。92年同助教授。97年同教授。01年より現職。この間に94年独ハノーバー大学客員教授。主な著作に『現代信用論の基本問題』(以下いずれも日本経済評論社刊)『不良資産大国の崩壊と再生』『環境創造通貨』(共著)などがある。
山本先生が主宰する「環境創造学と環境創造通貨サンクのページ」のURLアドレスはコチラ ↓
http://members.at.infoseek.co.jp/tyamamoto/

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「高島平再生」から始まる持続可能社会の実現

山本研究室のある板橋キャンパス3号館
梅雨の晴れ間の大東大板橋キャンパス全景

大東文化大学には、いまや全学を挙げて支援している「高島平再生プロジェクト」というものがある。大学キャンパスが立地する地元・板橋区内の高島平団地は、戦後林立したニュータウン団地の例にもれずに高齢化や老朽化・人口空洞化などの諸問題を抱えているが、その再生を大学と団地・地域住民が力を合わせて図ろうというユニークなプロジェクトがあるのである。すでに多くのマスコミでも取り上げられ、文部科学省の「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(現代GP)にも採択され、同様の問題を抱える全国のマンモス団地や地域・商店街などからも熱い注目を浴びている。

そんな大注目のプロジェクトも、当初は大東文化大学環境創造学部の一研究室の研究テーマとして始められたものにすぎなかった。その研究室の主こそが、今回ご登壇願う山本孝則教授である。この研究プロジェクトの生みの親である先生は、今もその先頭に立って推進役を務めている。
山本先生は経済学者であり、専門カテゴリーは「経済理論」と「日本経済論」。まずはその専門分野について話していただこう。

「人間が労働することの意味は、自分の生活を成立維持させることと同時に、将来の世代のためのインフラ・社会資本を残すことにあります。つまりは経済用語でいうところの『資本の蓄積』ですね。しかし明治維新以降、欧米先進諸国に追い付け追い越せとばかりに歴史を重ねてきた日本には都市インフラの蓄積が乏しく、この狭い極東の島国の土地および地価だけに価値を見い出すといういびつな構造になっています」

いわゆる「後発資本主義」がのし上がるための独特のゆがんだ社会・経済構造に対し、「日本再生トータルプラン」を提唱し「土地本位経済」から脱却して持続可能な循環型市民社会への転換を訴え続けてきた代表的論客のひとりが山本先生なのである。

去る96年に山本先生は『不良資産大国の崩壊と再生』を著して話題を呼んだ。

「この本を出版した翌年から、山一証券や北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行などが相次いで破綻していきました。このように不良資産を抱えた大企業の崩壊が始まるところまでは私の予測の範囲内でした。しかし残念ながら、その後の私の再生モデルは予想どおりという訳にはいきませんでした(笑)。こうして今も私の積み残した研究課題として残ることになったわけです」

現代ニッポン問題の集約としての「高島平」

学生たちの知識欲に応える附属図書館

01年に山本先生は、それまで所属していた経済学部から新設の環境創造学部に転属する。より良い循環型社会システムを広く世界に向けて発信していくことを目指す、大東文化大学にとっても全く新しいタイプの、21世紀の学際的学部である。

「この新学部で何を展開したらいいのか? 私なりに模索しているときに思い付いたのが『高島平の再生』というスキーム(枠組み)でした。ここ高島平には高度経済成長時代の象徴であるマンモス団地があって、入居者の高齢化問題などを抱えていました。一方われわれ大学側には少子化問題というのがあって、くしくも少子高齢化というこの国の課題がこの地区に集約的に存在したのですね」

自身が大東文化大学の教員で当事者でもあるのに地元・高島平の再生に無関心なまま日本経済の再生など語れないとばかりに、山本先生は04年に「高島平再生プロジェクト」をひとり立ち上げ、地域住民と手を結んで地域再生をめざす活動をスタートさせた。

現在は大学からの協力も得て、高島平団地の空室を大学側が借り上げて希望学生に貸与(現在16人が入居)したり、「環境創造カンパニー」(山本先生が代表取締役)による地域通貨「サンク」の普及活動を行ったりと、活動はさらにひろがっている。団地の活性化事業や広告・出版・映像事業などの展開、さらには地域交流の拠点になるコミュニティーカフェの運営なども行なわれている(一部は準備中)。

「このほかにも各種の交流活動を実施しています。それらの活動を通じて地域再生の象徴としての『新生・高島平』を築き上げ、『ニッポン再生』へ新たな光をもたらすメッカになればと思っています。団地賃貸部分の人口約1万4000人に対して16人前後の学生が住んでも、洗面器いっぱいの水にスポイトの一滴程度のことにすぎないかも知れません。しかし、そのひと雫で団地全体の空気が変わったと実感する入居者も多いと聞いています」

この団地に入居する条件として、学生たちには団地自治会への参加が義務づけられているが、みな積極的に参加しているようだ。こうした地道な日常の積み重ねも、団地全体の空気を変えている一因なのだろう。

アカデミズムの枠をも跳び越えた真の学びを

当時は憧れの存在だった高島平団地だが……

大東文化大学環境創造学部(環境創造学科のみの単科学部)のゼミ演習は2年次から始まる。山本ゼミのテーマは当然ながら「高島平再生プロジェクト入門」。特別応募者数に変動がない限り、受け入れるゼミ生は例年5~6人。授業ゼミは学年別、課外活動は全学年合同というのを原則にしているという。

「このゼミ研究の面白いところは、地元に住んでいる方々の中に、私たち大学教員よりも社会性に富んだ方が大勢おられ、そこから学ぶことが多いということですね。地元に住まう人々は世代や出自・個性・経験など実に多様です。こうした人々のコミュニティーと自ら交わることで、関心や意欲を開花させるゼミ生も毎年いますね」

山本ゼミの学生たちにとって3年間の異世代間交流は貴重な体験として残るようだ。その指導方針について先生は次のように話してくれた。

「まず、社会や人間の営みは大学の講義のようなカテゴリー別にはなっていないということです。そこにあるのは人間世界と物質自然世界だけ。ですから細かい科目分けから自由になってもらって、総合的・学際的に考えることで新たな発見があることに気づいて欲しいと思っております。それと正しい言葉づかいですね(笑)。最近は、大人としての最低限の常識やリテラシーは身に付けるように、やかましく言うようになりましたね」

いま世界中あるいは日本社会に横行する閉塞感や格差構造は、本来的な人間関係を考慮せずに経済の活性化政策だけに猛進してきた結果だと先生は喝破する。現在、中心となって推し進めている「高島平再生プロジェクト」はそうした風潮の対極で、直接ふれ合える人間関係を軸にした地域共同体の再構築をめざすプロジェクトということになる。ぜひとも、さらなる成功を祈りたい。

こんな生徒に来てほしい

わたしが望ましいと思う学生像には2つのタイプがあります。まずは、学力などに関係なく「高島平再生プロジェクト」に興味をもって自分も参加してみたいという感性をもった人ですね。大学も含めた「高島平」での再生活動の経験は、必ず自らの将来につながっていくはずです。もうひとつは、知的な意欲の旺盛な人がいいですね。これは決して学力偏差値的な意味ではありません。どんどん海外の調査に飛び出していくのも良いでしょうし、不可欠な知的道具としてのコンピューター・スキルを深めたり、本格的に環境創造を学問として究めていったり――そうした未知のものに挑戦する意欲をもった人という意味です。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。