早稲田塾
GOOD PROFESSOR

ルーテル学院大学
文学部 社会福祉学科

福山 和女 教授

福山和女(ふくやま・かずめ) 
同志社大学卒。同大学大学院修士課程修了。カリフォルニア州立大学バークレイ校修士課程修了。社会福祉学博士(DSW)。アメリカ・カトリック大学大学院博士課程修了。公衆衛生学修士(MPH)。臨床心理士。歯切れのよい授業に定評がある。スーパービジョン・コンサルテーション研修では、全国各地で保健・医療・福祉の専門家たちの指導にあたっている。就職・進路相談室長。実習教育主任。著作に『家族評価』などがある。

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「弱点を力点に変える」型思考

どこかで見たことがあるような、と思った人もいるかもしれない。TVドラマ「死者の学園祭」「氷の世界」「古畑任三郎」の撮影でも使われたチャペルである。十字架をかたどってあり、大学のシンボルでもある。入学式や卒業式・コンサート、そして卒業生の結婚式などにも使われている。

もし自分の家族がある日突然交通事故に遭い、植物状態になったら……。植物人間でも、自力で呼吸ができ、心臓は動いている。だが、周りの状況に対して反応できず、喜びや悲しみなど感情も感じられない。自分が呼びかけても全然反応してくれない。「こんな状態で生きている意味はあるのだろうか」と、生きる価値に確信が持てない人も多いだろう。

そんな考えをガラリとひっくり返してくれるのが、福山先生の「弱点を力点に変える」型思考である。

「『反応できない』『感情がない』でなく、『自分で呼吸ができる』『心臓が動いている』と考えてみます。もし、その人が『息をしたくない』と息をしないとする。そうしたら心臓も止まり死んでしまいます。ということは、『息をしている』から植物状態でも生きている。そして、その人が存在しているということが、家族の中の一員として十分役割を果たしているのです。だから、生きている意味はある。そう考えることができます。その人の存在価値を考えさせること、それが、社会福祉学の面白さです」

たとえば、心理学では悩んでいる人のみに研究対象が限られがちで、そこでは、悩んでいる人の問題は悩んでいない人から見ればマイナスに過ぎないとされる。一方、社会福祉学では、人間みんなが問題を抱えていることを前提とする。だからこそ、問題を抱えながら生きることの素晴らしさを感じさせてくれるのだ。

自分で考える体験型授業

ルーテル学院大学はかの宗教改革者マルティン・ルターを受け継ぐルーテル教会によって創立された。そこで、学生食堂の名前も「マルティン」。室内のラウンジは冷暖房完備でバリアフリーに対応した自動販売機もある。天気のいい日には屋外のテーブルでランチを食べる学生も。

福山先生の専門は医療福祉論とソーシャルワーク・スーパービジョンである。医療以外の問題を抱えている患者さんを援助するための理論が医療福祉論、社会福祉の現場で働く専門家を指導するのがソーシャルワーク・スーパービジョンということなるが、ここでは具体的事例で紹介してみよう。

「4歳ぐらいの知能を持つ女性が、施設に入っていました。その女性が20歳になったとき、施設で働く職員の人は『大人になったのだから』と口紅を持たせました。ところが、その女性はその口紅を捨ててしまいます。職員の人は口々にわがままだ、と言っているケースがありました」

「ですが、よく考えてみればその女性は20歳になったといっても、知能レベルは4歳のままかもしれません。それが、ずっと一緒にいる職員にとっては年齢とともに上がるとの希望があった。成人の女性だと考えたことによって、捨ててしまうという行為を約束違反で『問題だ』と捉えてしまったのです」

「現場でありがちな一面的な捉え方を、多面的に捉えなおす。それが、私のテーマ『人の理解の立体把握』です。現場で働いている専門家に多面的な視点を示し、人を立体的に助けてもらうことが目的です」 

先生の講義のポリシーは体験型授業。ゼミでは、あるケースをもとに学生が医療チームのメンバーとなり、現場をシミュレーションする。学生は発表のリハーサルをしてからゼミに臨む。外部の専門家と交えたディスカッションもあり、ゼミは大人気だ。

「私は120人授業でもいわゆる講義はしません。学生に考え、まとめ、発表をさせています。学生に自分で考える力をつけてもらいたいからです。現場にいると、学問が使える場面というのは、ほんの少し。大部分は個人個人の能力なんです」

先生自身、臨床心理士として長く現場に立っていた。そこでの経験から、講義にも現場主義を貫いている。

福祉士資格取得もドンと来い

社会福祉学部では、社会福祉士や精神保健福祉士といった国家資格を取得するための最初のステップも踏める。社会福祉士とは、福祉サービスを必要とする人たちに適切な援助をする専門家のことである。精神保健福祉士は、心の病気を抱えている人たちに対し、社会的な自立を援助することが役割である。両資格とも、養成校に通って受験資格を得た後でないと国家試験が受けられない。

 ルーテル学院大学は、福祉に携わる専門家の間では知らない人はいないほど実力派の大学である。昨年度は社会福祉士国家試験に59人合格。定員の割合での合格率は、全国で第5位。精神保健福祉士国家試験には12人合格。合格率ではなんと全国第2位である。

どんな人でも存在を認める学問

本気で社会福祉学をめざそうと決めたきっかけは、ある教授との出会いだったという。アメリカから日本に社会福祉学を広めるために来たドロシー・デッソー教授である。

「実は、私の父は社会的にかなり有名な人でした。その影響で、私は小さいときから『自分は誰なのだろう』と考えていました。周りは私のことを通り越して、父のことばかり見たがる。そんなとき、教授は私をファースト・ネームで呼び、私の意見を知りたがってくれました。社会福祉学は、どんな人でも存在を認めてくれる学問なのだと強く感じ、この学問をもっと研究したいと思いました」

人が育つうえで大きな影響を受ける家族という構造。これが、生涯をかけた先生の研究テーマだ。

「なぜ人は生きるのか」「生きることに価値はあるのか」。そんな答えのない問いに人は誰でも一度はぶつかる。その問いをずっと心に抱きつつ、ソーシャルワークに関わる。完璧な人などいないのだ。自分にも他人にも弱点はある。それを力点、すなわち独自性に変えることに一生をかけていったとき、生きることの素晴らしさが見えてくる。ルーテル学院大学には、生きることに真正面から向かえる場がある。

こんな生徒に来てほしい

「独自性のある人なら、どんな人にも来てほしいです。独自性というのは、自分はどう思うかという自分の意見をきちんと言えることです。意見発表のときに「〇〇に書いてありました」と言うだけではダメですね。ルーテルには独自性を認める雰囲気がありますから、個性ある元気な学生さんをお待ちしています」

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。