早稲田塾
GOOD PROFESSOR

埼玉工業大学
工学部 生命環境化学科

内山 俊一 教授

うちやま・しゅんいち
1951年東京生まれ。’79年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。’79年より埼玉工業大学工学部教員として勤務。助手・助教授を経て教授。’07年より副学長。この間に米デラウェア大学化学科博士研究員、通商産業省(現経済産業省)工業技術院非常勤研究員、厚生省(現厚生労働省)国立リハビリセンター研究所非常勤研究員、東京大学生産技術研究所研究員などを兼任。現在も学外の各種委員などを多数兼任。’00年第3回清山賞(化学センサー研究会)受賞。主な著作に『バイオ電気化学の実際』(分担執筆・CMC出版)『分子認識を基礎とする分析化学』(編著・宣協社)『高精度基準分析法』(編著・学会出版センター)などがある。
内山先生が主宰する「環境・バイオ研究室」のURLアドレスはコチラ → http://www.sit.ac.jp/user/uchiyama

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化学センサーと燃料電池のトップランナー

内山研究室のある工学部生命環境化学棟
埼玉工業大学のサインポールと本部建物

埼玉県深谷市にキャンパスを置く埼玉工業大学は、工学部に加えて人文系の人間社会学部からなる文理融合の2学部制を採っている。この埼玉工大の副学長であり、工学部教授でもある内山俊一先生に大学の理念からお話しいただいた。

「科学技術というものは、扱う人が変わっても繰り返される(再現される)という特徴があります。ところが、扱う人の心には再現性がありません。したがって、人の心のほうも豊かにしていかないと本当の意味での人材育成にならない――というのが本学の教育理念になっているのです」

埼玉工大は、その理念を「テクノロジーとヒューマニティーの融合と調和」というスローガンで表わしている。
次に内山先生の所属する工学部生命環境化学科についてお聞きした。

「この生命環境化学科は、’07年に応用化学科から名称変更されたものです。と言いますのも、最近の若者に関心の高い工学的なテーマが環境と生命科学の2分野でして、このジャンルの資格を取得したいという人が多くなっています。そこで、これらに従来の応用化学(物質)を合わせた3本柱で新たな学科としてスタートさせました」

内山先生の専門は「環境計測化学」と「分析化学」。電気量を計測する化学センサーの分野では、日本の(いや世界の)トップリーダーだとの評価も高い。

「この研究は、高校生諸君も知っている電気分解の原理を応用したものです。たとえば水の電気分解ですと、容器に入った水に+と-の電極を入れて、電流を流して水素と酸素に分解します。これは教科書の記述のとおりで正しいのですが、分解されるまでに非常に時間がかかるという欠点があります。そこで私が開発した方法は、カーボンファイバーを集積してフェルト状にしたものを用意し、それに電解液を含ませて濡らし、電圧をかけておきます。そうした上から水滴を1滴落としてやりますと、水滴はぬれたフェルトのなかを急激に拡散し、10秒もしないうちに電気分解が終了してしまいます。これはフェルトがすべて電極になっているからなのですね」

内山先生はメーカーとの共同開発で、この原理を用いたセンサーの世界初の製品化に成功している。最初のセンサーはビタミンC濃度の測定用だったが、現在では水道水の残留塩素濃度や水の汚染濃度測定などのセンサーも次々と製品化されている。いま先生が取り組んでいる研究テーマは「燃料電池」の開発だ。

「わたしが特に興味をもって研究しているのは、燃料電池の電極の開発です。燃料電池は水の水素エネルギーを使用します。具体的には水素の酸化と酸素の還元を使って発電するシステムです。ところが、この酸素還元の触媒に白金が使用されているのが問題となります。白金は貴金属ですし、埋蔵量にも限りがあるからです。しかも、高価ですからね。そこで私は白金に替えて銅を使用しても十分に酸素還元の用を成すのではないかと、現在はその研究に取り組んでいます」

燃料電池の開発に挑む科学者は世界中に多く、その争いも熾烈を極めている。内山先生の酸素還元の触媒を銅に替えるアイデアが成功すれば、世界初のことになる。

内山先生は、①社会的に有用で貢献できるものか②自身の知的好奇心が満たされるものか――この2点を考えながら日々の研究に取り組んでいるという。

「直感」それこそ工学研究の極意なのだ

整然とした雰囲気の埼工大キャンパス全景
仏教系工業大としてのシンボル「大乗殿」

埼玉工大の工学部生命環境化学科のゼミ(研究室)は3年次後期から始まる。
内山ゼミでは3年次に専門的な講義と専門書文献講読、さらに先生の研究室がこれまでに発表してきた英文の論文講読などを中心に行い、「環境計測化学」「分析化学」の基礎をミッチリとたたき込む。

4年次になるとゼミ生はそれぞれの卒業研究に入る。ゼミ指導で心掛けていることを伺った。

「学生を一律に指導することはしません。それぞれに何をしているときが一番楽しいかを個別に尋ねるようにしています。自分が楽しいと感じていることは能力が発揮できる可能性が高いといえましょう。当人との会話から、それを見極めてやるのも教員の役目だと思っているのです」

そして、内山先生が研究に取り組む際の極意とは?

「基本的に他人の論文は読みません。読んでしまうと、その論文に影響されて、その改良技術の研究に陥ってしまう恐れがあるからです。わたしの場合は自分の過去の研究データを眺めまわし、そこから新しいテーマを考えるようにしています。いくつか研究テーマの候補が挙がって、その中からどれを選んで研究するのかは『直感』しかありませんね」

こんな生徒に来てほしい

知的好奇心の旺盛な人。基礎学力をつけている人。将来に向かって切り開いていこうという意欲がある人。潜在的な意欲を秘めている人。自分の興味あることを追求したい人。人生を前向きに考えている人。自分の頭で考えられる人。これらのうちの何かひとつでも当てはまるのであれば大歓迎です。ちょっと学力が劣っていると感じていたり他人との対話が苦手というような人でも全く構いませんよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。