早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東海大学
教養学部 人間環境学科

新保 恵志 教授

しんぼ・けいし
1955年石川県生まれ。’78年一橋大学経済学部卒。’78年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。’88年住友信託銀行入社。’97年東海大学教養学部助教授。’02年より現職。主な著作に『基本ゼミナール 転換社債・ワラント債入門』(東洋経済新報社)『デリバティブ』(中公新書)『金融商品とどうつき合うか』(岩波新書)などがある。

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公正な金融市場システムの構築を模索

新保先生の研究室のある10号館建物
湘南キャンパス正門

今回訪ねたのは東海大学教養学部人間環境学科の新保恵志教授。先生は人間環境学科社会環境課程の所属になる。まずは同課程についてお聞きしていこう。

「人間環境学科の社会環境課程では、環境・福祉・ビジネスの3つを柱として学んでいきます。一番の特徴は、これらが相互に関連し合うものだという視点で、社会環境について多面的にアプローチしていることです。おそらく、このような視点で社会環境全般を学べるところは全国的にも珍しいと思いますね」

同課程で学ぶことは、学生たち自身の将来にも直接関わるはずだと、問題意識を喚起しながら講義しているとも。したがって、新保先生の担当講義は「金融論」と「マクロ経済学」だが、講義のなかで必ず環境・福祉との関連について語っているという。

「金融論において、環境問題とその解決に関連した論点はいくらでもあります。福祉問題についても同様です。たとえば、経済の枠組みが大きくなれば社会保障(福祉)費も大きくなり、国民の負担が大きくなる。国民の負担を増やさずに社会保障費を確保するために、金融面からはどのような政策が可能か――など、相互の関連性についても講義するようにしています」

こうした他との関連を説く講義は、新保先生ばかりでなく同課程の教員スタッフ全員が心掛けているそうだ。

優良企業への投資環境システムが未熟な日本の現状

東海大学湘南キャンパスの全景
ちょうど学園祭で人々が訪れていた

新保先生ご自身の専門分野は、「金融論」と「証券市場論」である。

「金融市場における諸取引には、正確な情報の開示が大前提になります。しかし現実にはライブドア社の粉飾決算問題などのように、投資家に対して不正確な情報が開示されることがしばしば起こります。優良な企業が大きく伸びていくためには正当な資金調達が必要で、それには公正な市場のシステム構築が不可欠になります。そのシステムはどう構築すべきか、このような課題がわたしの研究テーマなのです」

新保先生には長い銀行勤務の経験があり、この経験を踏まえて公正な金融システムのあり方について鋭意考察する日々だ。あらためて研究者として実感するのは、日本企業における情報開示意識の低さであり、まずはそこから是正すべきだと語る。

さらに先生は、日本のベンチャー企業支援策についても研究されている。

「日本のベンチャーのなかには、CO2の排出削減装置や環境問題に関する高い技術をもつ企業がたくさんあります。ところがベンチャー企業の多くは、その規模が小さいために商業ベースに乗せられないという問題を抱えています。ビジネスとして成立させるためには、どういう資金調達のルートがあるのか。それも研究課題にしています」

この種の新規ビジネスに、我が国の銀行が投資を惜しむ実態は明らかであり、なによりも個人投資家が投資できるシステムづくりが必要だとも説く。

さて、2008年の夏、サブプライムローン関連株価の大暴落に端を発したアメリカ発の金融危機に関して、新保先生に専門家としての見解を伺った。

「この問題は簡単には片付きませんね。アメリカ経済というのは株価と住宅価格が上昇することで維持される性質をもっています。それが、いまは両方とも暴落していますからね。さらに消費は冷え込むでしょうし、それによって企業倒産も増えるでしょう。するとサブプライムローンの延滞率もさらに高まるという悪循環に陥っていきます。ここでアメリカ政府がとるべき方策は金融機関の信用不安を食い止めることです。それが解決への第1歩にはなるはずですが……」

銀行員経験に裏打ちされたゼミ指導

学園祭「建学祭」でのパフォーマンス
キャンパス内には日本風の池もある

東海大人間環境学科のゼミ演習は3・4年次の学生が対象で、新保ゼミも例年10人程度のゼミ生を受け入れている。

「3年次のゼミは、まず前期の春セメスターにおいて、テキスト講読を通じて経済と金融・企業経営の基本的理論を学んでもらいます。後期の秋セメスターでは、日本経済新聞社が主催する『ストックリーグ』に参加します。これは、年ごとのテーマに沿って現実の企業を学生主体で選択して模擬の株式投資を行ない、その経緯から結果までをリポートにまとめて応募し、他校のグループと競うコンクールです」

このリーグに参加することは、各企業のこれからの伸長度を予測する確かな目を養う。それはゼミ生自身の就職活動にもつながるだけに、みんな真剣に取り組むという。

さらに夏の合宿において、3年次ゼミ生を中心に新保ゼミ恒例のディベート大会も挙行される。4年次のゼミ生たちは卒業論文に挑んでいく。こうした学生指導の方針については次のように語る。

「わたし自身が実社会の経験がありますので、学生たちが実社会に出てから困らないように、社会人として守るべきルールも厳しく教えるようにしています」


その豊富な経験や人脈から得られる最新の企業情報は、学生たちにしっかりと伝えられている。

こんな生徒に来てほしい

若者らしく好奇心の旺盛な人がいいですね。人生を処していくには、何事にも常に「なぜだろう?」と疑問に感じることが大切になります。わたしを含め、教員や学者の言っていることにも疑問を感じてほしい。学生たちから疑問を投げかけてもらうことで、わたし自身も磨かれていくと思っています。研究者・学者だからといって全てのことを知っているわけではありません。ともに学んでいく関係が重要なのです。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。