早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東京理科大学
理学部 応用化学科

工藤 昭彦 教授

くどう・あきひこ
1961年東京生まれ。’83年東京理科大学理学部化学科卒。’88年東京工業大学大学院総合理工学研究科電子化学専攻博士課程修了。’88年米テキサス大学博士研究員。’89年東京工業大学助手。’95年東京理科大学理学部応用化学科講師。’98年同助教授。’03年より現職。手島記念研究賞(’88年)井上研究奨励賞(’90年)触媒学会奨励賞(’01年)Outstanding Scientific Achievement(’04年)日本化学会BCSJ Award(’07年)など受賞多数。主な著作は『応用化学シリーズ 触媒化学』(朝倉書店)『光触媒 ~基礎・材料開発・応用~』(エヌ・ティー・エス)『ナノテクとエネルギー』(丸善)など(掲載書はいずれも分担執筆)。
工藤先生が主宰する〝Kudo Lab〟のURLアドレスはコチラ → http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/kudolab/

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光触媒を用いた水素分解反応の世界的リーダー

工藤研究室のある神楽坂キャンパス5号館
牛込橋から東京理大キャンパス建物群を望む

東京理科大学理学部応用化学科の工藤昭彦教授。ご専門は「機能物質化学」で、目下の研究課題は光触媒を用いた水の分解反応だという。まずは、どのような研究内容なのか説明していただいた。

「いまやエネルギー・環境の問題は非常に深刻になっています。現行のエネルギー源として人類が使用しているのは、石油に代表される化石燃料です。この化石燃料には埋蔵量の枯渇や、CO2(二酸化炭素)排出などの問題があって、早急に脱却する必要があります。その代替として注目されているものの第1は『水素』でしょう」
「水素はクリーンな『夢のエネルギー』とも言われていますが、問題はその水素をいかにクリーンにつくり出すのか? それがこの研究にかかわる、世界中の化学者の課題になっています。水を分解して水素をつくり出すという点では基本的に一致していますが、べつのエネルギーを水に投入しないと水素はつくり出せません。投入するエネルギーにはいろいろと考えられていて、我々は最もクリーンとされる太陽光を用いた研究をしています」

地球環境と人類の未来を決定づける研究テーマの数々

この「逢坂」の途中はいった所に5号館はある
「光触媒」による水分解の原理概念図

植物には光合成という作用がある。工藤先生は、「これと同じことを無機物質からできないか」という観点から、太陽光と無機物質(半導体粉末)でつくった光触媒を使って、水から水素を分解させる方法を研究しているのだ。

光触媒を使って水を分解する原理は、かつて日本人化学者が発見したもので、以来この分野は日本の研究グループが主導してきた。現在、その中心にいるのが工藤先生なのだ。つまり、先生がこの分野における、世界のトップリーダーということになる。

「一時停滞し行き詰まりを見せた研究でしたが、ここに来てかなり進展してきています。以前は実験室のなかでの特別な光源下でしか実験できませんでしたが、いまは実際の太陽光を使用して実験できるまでになっています。この研究にまた注目が集まり、参入してくる研究グループが増えております。ただ実用化までには遥かな道のりですけどね」

現在の研究段階はまだ目標値の数十分の一程度ではないか――そう語る先生だが、その可能性が確実に見えてきたことでその表情は明るい。

このほかの工藤先生の研究テーマに、無機物質のなかで発光特性を示す物質の研究がある。CO2やNOx(窒素酸化物)などの小分子を、電極の素材を替えて電気分解すると、いろいろな物質が再生成される。これによって地球環境に負荷を与えずに、CO2を再び燃料に循環して利用できるようにしたり、NOxを無害化できる。

「化学のフロンティア」講義で研究先をガイダンス

工藤研究室のスタッフによる集合写真

「本学応用化学科の特徴は、化学の基礎理論を重視しながら、それを生かしてエネルギー環境問題や医薬品開発・生体現象の解明などに取り組んでいるところです。私たちの生活に直接かかわる研究テーマが多く、現役高校生の皆さんにも関心を持ってもらえると思いますよ」

東京理科大学応用化学科のカリキュラムに、1年次学生を対象にした「化学のフロンティア」という講義がある。

「この学科には全部で10の研究室があります。その研究室を主宰する教員全員が1コマずつの講義を受けもち、自分の研究内容について分かりやすく説明するものです。応用化学科に進学した1年次の学生たちに、どんなテーマについて研究できるのかを具体的に知ってもらうこと。そして、学生たちの化学への関心と興味をさらに高めるのが狙いです」

世界を相手にした最先端レベルの卒業研究をめざせ

東京理科大学応用化学科の学部生は、4年次の1年間、各研究室に所属して卒業研究に取り組む。
「4月に学生たちが研究室に入ってきて、まず行うのは練習実験です。ここで研究されている内容について再現実験をして、同じ結果を出せるようになってもらいます。それを終えて、各自が卒業研究のテーマを絞り込んでいくことになります」

卒研のテーマは工藤先生からいくつか提示され、その中から先生と学生たちの話し合いで決められていく。同研究室ではグループ研究はなく、個人研究が原則となる。。

そうした学部生・院生たちへの指導方針については、こうおっしゃっていた。

「いまの応用化学の研究分野は、世界の化学者を相手にした戦いの場でもあるといえます。ですから卒研も学生の研究という認識ではなく、ひとりの化学研究者として、最先端の研究に臨んでいるという自覚をもって取り組んでもらいたい。また、プレゼンテーション能力の向上にも力を入れています。これは同じ研究データであっても、発表の方法によって相手の受ける印象がまるで違ってくるからです。独り善がりにならない、聞く人の立場に立ったプレゼンを心掛けるようにと指導しています」

そのため、毎週2回のゼミ演習には大学院生から学部研究生までが出席し、それぞれの研究報告や最近読んだ文献報告などを行って、プレゼンテーションの訓練にしている。また、国内外の学会発表や論文発表も精力的に指導しているという。

こんな生徒に来てほしい

いろいろなことに興味や感動をもてる感性、人に対する気配り、それに化学的なセンス――これらを備えた人ですね。化学の実験というものは料理によく似ています。いわゆるアナログ的なセンスも求められます。調理のレシピに「4種類の調味料を混ぜる」とあっても、混ぜる順番ですとか、パッと一気に混ぜるのか徐々に混ぜていくのか、などの細部は調理人のアナログ的な経験や感性によって異なり、それにより味も違ってきます。化学の実験も同じです。さらにいえば机上の学習・研究よりも、実験など手を動かすことが好きな人、筋道の通った(論理的な)文章が書ける人、いろいろ挙げたらキリがありませんけどね(笑)

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。