早稲田塾
GOOD PROFESSOR

専修大学
経済学部 国際経済学科

野部 公一 教授

1961年東京生まれ。’84年東京大学経済学部経済学科卒。’85年同経済学部経営学科中退。’92年同大学院経済研究科博士課程単位取得退学。この間’90年旧ソ連モスクワ歴史公文書大学研究生。’92年農林水産省農業総合研究所入所。’01年同省農林水産政策研究所出向。’03年専修大学経済学部助教授。’04年より現職。主な著作に『スターリン後のソ連社会』(木鐸社)『20世紀ロシア農民史』(前著ともに共著・社会評論社)『CIS農業改革研究序説』(農山漁村文化協会)などがある。
野部先生が主宰するサイト「旧ソ連研究(Former Soviet Studies)」のURLアドレスはコチラ → http://homepage3.nifty.com/kohnobe/index.htm

  • mixiチェック

ソ連型計画経済の失敗が21世紀に生きる

「わたしの研究テーマは、日本の隣国でもある旧ソビエト連邦から現在のCIS(バルト三国を除く旧ソ連諸国の共同体)までについて、農業の角度から調査研究を行うことです」

そう語るのは専修大学経済学部国際経済学科の野部公一教授。
さて旧ソ連における農業政策といえば、その経営形態からコルホーズ(集団農場)とソフホーズ(国営農場)とに大別される。ソ連農業を研究している日本の研究者の大半は、コルホーズについての研究である。ところが野部先生は学生のころから一貫してソフホーズを調査研究してきた。もしかすると日本におけるこの分野の研究者は、先生を含めて2人くらいしかいないのではないかとも。

「以前はソ連型社会主義について、農業面から研究するにはコルホーズについて知ればいい、というのが一般的な考え方でした。ところが60~70年代あたりから、ソ連農業はソフホーズの比率が増えていきました」

そこで野部先生は、当時のソ連邦のうち、この傾向が一番進んでいたカザフスタンにおけるソフホーズの実態を中心に研究することになる。

「当時カザフスタンのソフホーズ農業はロシアなどより大規模に行なわれ、一大穀物生産国になっていました。こうしたことをロシアなど近隣諸国の農業と比較分析をしていきますと、日本の農業が置かれている状況などもよく見えてくるのです。これは発見でしたね」

市場原理主義の「勝利」と「破綻」そして「世界危機」

次いで野部先生の話は「計画経済」と「市場経済」との比較へと及んでいく。’91年12月25日のソ連崩壊(ゴルバチョフソ連大統領辞任とロシア等各連邦構成共和国の独立)によって、「計画経済」体制が地球上から事実上消滅。これによって「市場経済」「資本主義」が完全勝利したかといえば、NOというほかはない。

世紀を跨いで唯一の超大国アメリカによる「市場経済至上主義」が、グローバル(アメリカン)スタンダードの美名のもと、BRICs新興諸大国もふくめて世界中を席巻したが、サブプライムローン破綻に端を発したアメリカ発「世界大不況」の暴風は収まりそうもない。

「考えてみれば、社会主義システムという対抗原理を失うことは、実は資本主義側にも痛手だったといえます。計画経済と市場経済という両経済システムは、互いに補い合ってバランスを取りながら進んでいくのが理想なのです。市場原理だけが一方的に進行していきますと、ニッポン大企業による『派遣切り』の横行などのように、弱者層への社会的配慮がなくなってしまいます」

まさに現下の世界的危機は、市場原理主義一辺倒で推し進められた世界金融システムの破綻した姿といえるかもしれない。これからは企業利益の再配分や弱者救済など、計画経済原理が一部押し戻す可能性もあるというのが野部先生の見立てだ。

「どんな制度や仕組みにも良い面があれば悪い面もあります。どんなプラス面とマイナス面があるのか、両面から検証しつつ運用していくことが重要である。わたしは講義やゼミでもずっと強調してきました」

国際経済を学ぶ者にとっての若き日の海外異文化体験

野部先生が所属する専修大経済学部国際経済学科は、日本を取り巻く国際社会・国際経済を多様な視点で学ぶことにより、国際的な活躍ができる人材の育成をめざしている。さらに国際経済学科の特徴については次のように語る。

「一番の特徴は学生のみなさんが海外体験をする制度や機会がいろいろ設けられているところでしょうね。この学科には独自の海外特別研修という科目があります。夏休みを利用して①欧州(イギリスなど)をめぐるコース②東南アジア(タイ・カンボジアなど)をめぐるコース――という2つが用意されています。これは授業科目ですから、前期に訪問する国について予備学習をし、後期は訪問体験を論文にしてもらいます」

このほかに非政府組織NGOのスタディーツアーへの参加推奨や、専修大学独自の制度を利用した海外留学もある。国際経済学科のカリキュラムが主に前期と後期に分けて組まれている(セメスター制とは違う前後期制である)理由は、海外留学への便宜を配慮してのことが大きいのだ。

「若いうちに海外体験をしておくことは非常に大事です。日本との文化の違いを知るなど、非日常的な刺激を受けることで大きな収穫もありますから、ぜひ何らかの形で積極的に体験してほしいですね」

学生自らが積極的に学ぶ場、それこそが大学なのだ!

専修大学国際経済学科のゼミ演習は、1年次から4年次までの全学年に用意されている。ただし1年次は「入門ゼミ」で、「専門ゼミ」は2~4年次の学生が対象となる。

野部先生の専門ゼミは2~4年次合同で行なわれる。ゼミとしての統一研究テーマは「ロシアを中心とするCIS諸国の経済・政治・社会を考える」だ。

「このテーマを基本として、毎年前期は全員でテキストの輪読と討論をします。そして後期は、旧ソ連・計画経済に関する問題からテーマをひとつ選び、個人研究を進めて論文の形にまとめてもらいます。またプレゼンテーション力をつけるために、毎回交代で5分間ほどスピーチもやっています」

そうした学生たちへの指導方針については――

「中学・高校と違い、大学は学生自らが積極的に学ぶ場であり、私たち教員はアドバイザーというスタンスになります。一人でも多くの教員から、できうる限り多くのアドバイスを受けてほしいですね。ややもすると、最近の学生さんは大学教員を自分から遠い存在として認識しているような気がして、ちょっと淋しいですね」

学生からの相談に備える「オフィス・アワー」をすべての専修大学教員が設けているということで、そうした機会をぜひ有効に利用してほしいとも語る。

さて冒頭のプロフィール欄にもあるように、野部先生は’90年から’91年にかけてモスクワに滞在していた。’91年といえばソ連型社会主義崩壊の口火となった、共産党守旧派による「8月クーデター」が勃発した年だ。ボリス・エリツィン(後の初代ロシア共和国大統領)らによって、クリミアでの軟禁から逃れたゴルバチョフは急速に求心力を失う。そしてソ連共産党自体の活動停止宣言へと追い込まれる。

こうした首都モスクワにおける歴史的攻防の場を、当時留学中の野部先生は逐一目の当たりにしたという。ソ連研究者にとって、こうした世界史の大転換点に立ち会えたことは、天からの贈り物といえるであろう。

こんな生徒に来てほしい

若者らしい好奇心をもって、次から次へいろいろなことを質問するような方に来ていただきたいですね。私たち教員側にとって、若い人たちに伝えたいことはたくさんあります。声をかけていただければ知る限りのことを答えますので、決して損はさせません(笑)。そのためにも、受験勉強も大変でしょうが、日ごろから様々なことに疑問を持つ感性を育て、スリ減らさないで進学してきてほしいと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。