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GOOD PROFESSOR

東京外国語大学
総合国際学研究科

関口 時正 教授

せきぐち・ときまさ
1951年東京生まれ。’79年東京大学大学院人文科学研究科比較文学比較文化専修課程博士前期課程修了。’79年東京工業大学工学部人文社会群助手。’81年米エール大学visiting fellow。’82年熊本大学文学部専任講師。’84年東京工業大学工学部助教授。’86年ポーランド・ワルシャワ大学客員教授。’92年東京外国語大学外国語学部ロシア東欧学科ポーランド語専攻助教授。’01年同総合文化講座(ポーランド文化論)教授。’09年4月より現職。ポーランド文化功労者勲章(’98年・ポーランド政府)・ポーランド外務大臣賞(’07年・同)。主な著作に『ショパンの生涯』(音楽之友社)『尼僧ヨアンナ』(岩波書店)『私の物語』(みすず書房)などがある(著作はいずれも訳書)。
関口先生が主宰する「ポーランド文化研究室」のURLアドレスはコチラ → http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/sekiguchi/index.htm

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ポーランド文化研究の第一人者

関口研究室のある「研究講義」棟

今週の一生モノのプロフェッサーは、東京外国語大学大学院総合国際学研究科(ポーランド語および総合文化コース・ポーランド文化論担当)の関口時正教授。日本におけるポーランド文化研究の第一人者としても知られ、その長年にわたる研究の功績によって、ポーランド政府から「ポーランド文化功労者」勲章が授与されている。まずは研究内容について話してもらおう。

「もともとポーランド文化全般に興味があるのですが……。とくに関心をもって研究してきたのは、ポーランド出身でありながら活動の場を国外に求めた人たち――たとえばイギリスで活動した、作家のジョゼフ・コンラッドや、文化人類学者のB・K・マリノフスキー、あるいは前ローマ教皇ヨハネ・パウロⅡ世――など、文化や境界を横切って活動した人たちを対象に研究することが多いですね」


「このほか『ポーランド人の自画像・他画像』という分野もあります。ポーランド人自身のセルフ・イメージについて、また一方で他民族から見たポーランド人のイメージというような研究ですね。あるいは『ヨーロッパの防壁』神話の研究というのもあります。彼らの国には、自らを正統的ヨーロッパ文化の最後の砦とする意識があると同時に、異教徒のトルコやモンゴル・ロシアなどの侵略・攻勢からキリスト教とその文化を守る防壁とする意識も強いのです」

大まかなヨーロッパ(あるいは東欧)の地理・歴史しか習ってこなかった若い学生たちを相手に、こうしたポーランド文化についての講義をすると、意外なほどに彼らの興味を惹くという。こう語る関口先生は、「国際ポーランド語・ポーランド文化教育者連盟」や「フォーラム・ポーランド」の設立に尽力し、かつて前者の副会長であり、現在は後者の代表も務める。

マンツーマンで学べる言語・文化研究の理想的環境

凝った意匠デザインの研究講義棟内部
府中キャンパス全景

あらためて日本の外国語系最高学府・東京外語大学のもつ特徴について語っていただくと……

「本学における教育は、書かれたテキストや語られる言語について綿密に学び、理解することが全体的な基礎になっています。あくまでしっかりとした語学の基礎を通して、次にその背景になっている各国の文化を学んでいくわけです。これも、最近は文学作品ばかりでなく、美術や映画・音楽などさまざまなメディアをも対象にして学ぶことが多くなっています」

東京外国語大学の履修制度の概要は、まず1・2年次を中心に「7課程26言語」から主専攻語と副専攻語を選択して習得する。つづいて3・4年次では「言語・情報」「総合文化」「地域・国際」の3コースに分かれ、それぞれにおいて専門知識を学んでいくこととなる。

関口先生も2年次以上の学生にポーランド語を教授し、3・4年次学生には総合文化コースでポーランド文化論を講じている(講義は2年次の初めから取れる)。

「本学の総合文化コースを担当している先生方は、どなたもいずれかの外国語のエキスパートです。ですから本コースの学生指導では、得意な外国語を生かしながら指導されています。このコースでは言語についても学べますし、各地域の文化についても学べるというメリットがあるのです。しかもラオスやカンボジア、ヒンディー等々、おそらく日本で研究しているのは東京外大だけというような特殊な地域文化に触れることもできます」

さらに東京外大だけに特有と思われる面白い現象についても話してくれた。

「ポーランド語もそうですが、あまり馴染みのない言語を専攻しますと、その専門教員も学生数も少ないことになります。そうすると、学部に入学したときから大学院博士後期課程を修了するまでの10年間を、ずっと同じ教員と学生とで関わり合うというケースもしばしば出てくるのですね」

なるほど、これは東京外大ならではの現象で、ほかの大学にはまずあり得ない特徴であるといえるだろう。

ほぼ全員がポーランドに留学し卒論・卒研に励む

外国語原書の蔵書数を誇る附属図書館
長い歩廊。これで雨の日も建物移動できる

さて次はゼミ演習について。関口先生のゼミは2年次後期から始められる(普通は3年次からというゼミが多い)。なんといっても関口ゼミの特徴は、ゼミ生の大半がポーランドに1年間の留学をすることにある。

「3年次後期にポーランド留学に出発する場合、それに備えた指導が1年間は必要となり、2年次後期からゼミを始めることになるわけです。ポーランド語は、言語として非常にむずかしい面もありまして、大学の一般授業だけで習得するのは困難です。現地で生きたことばに接するのが習得の近道だし、モチベーションも高まり、研究資料も入手できますから、わたしも留学を積極的に薦めるようにしています」

1年間の留学から帰ったゼミ生たちは3年次後期に復学。そして卒業論文に取り組むことになる。ちなみに東京外語大では、普通の卒論とは別に「卒業研究」というものを選択できる。これは、関口先生の発案から実現されたものだという。

関口ゼミにおいても、事典の編纂をはじめ、作品翻訳や絵本制作などに励む学生がいる。なかにはポーランドから映画を取り寄せて自ら翻訳し、さらにスーパーインポーズを入れるなどの映像編集を行って、ホールで公開するに至った女子ゼミ生もいたそうだ。非常に活発に取り組んでいる様子が伝わってくる。


最後に、あらためて学生に対する指導方針について聞いた。

「ポーランドについて学ぶということは、とても特殊なことを学ぶことになります。しかし珍しいからこそ、学部の卒論や卒業研究レベルであっても、日本で唯一の研究であったり、パイオニア的仕事だったりにもなり得ます。私のところの優秀な卒論はインターネットで公開しているのですが、中には驚くほどアクセスが多いものがあります。それはとりも直さず、大学で学んだことが社会に役立っているということです。また、そうなると書いた学生の満足度も高くなります。これからも社会に貢献できる研究をどしどしやってもらいたいと思っています。ポーランド学科ではそれが可能なのですから」

こんな生徒に来てほしい

受験する大学を選ぶとき、ただ入りやすそうだとか偏差値的にちょうど良いといった理由で選んでいると、入学後に禍根を残す可能性が大きくなってしまいます。その大学にどんな先生がいて、どんな研究をしているのか? そうしたことをきちんと調べて、どの先生のもとで何を学びたいのか自分なりに目的を明確にして来てほしいですね。とくに東京外語大のような大学に偏差値だけで入ってくると、たいへん不幸な4年間を過ごすことにもなりかねませんよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。