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GOOD PROFESSOR

国際基督教大学
教養学部 心理学メジャー

森島 泰則 上級准教授

1958年静岡県生まれ。’82年慶應義塾大学文学部図書館情報学科卒。静岡県内の公立中学校で英語教師をしたのち、’86年渡米。’96年米コロラド大学大学院博士課程(心理学)修了。以後アメリカにて現地企業・日本企業の米国オフィスに勤務。教育ソフトの開発業務などに携わる。’02年米スタンフォード大学客員研究員。’03年国際基督教大学教養学部語学科助教授。准教授をへて’07年上級准教授。’08年学科制からメジャー制への移行により現職。著作には『高次認知のコネクショニストモデル』(分担執筆・共立出版)がある。

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「ことば」に注目する認知心理学とは

森島研究室のある教育研究棟(ERB)
三鷹キャンパスのセンターロータリー

今週の一生モノのプロフェッサーは、国際基督教大学上級准教授の森島泰則先生。プロフィール欄をご覧になれば分かるように、その来歴は非常に変化に富む。

「いったん大学を卒業して、公立中学校の英語教師になりました。そこで第2言語としての英語を、中学生たちがどのように習得していくのか? そのメカニズムとプロセスに改めて興味をもちまして、ふたたび研究の道に戻ることにしたのです」

中学教師を辞した森島先生は、米コロラド大学の大学院で「言語学」と「認知心理学」を修める。さらには、コンピュータによる認知の仕組みの解明にも取り組み、「認知科学」も自らの専門にされた。ここで、そもそも認知心理学・認知科学における「認知」とは何か? こうした基本的なところから伺った。

「認知とは、ヒトの脳のはたらきの中でも特に、記憶や言語・学習・問題解決などの、知的なはたらきのことを言います。そうした脳の機能のメカニズムやプロセスを解明しようというのが、認知心理学ということになります」

森島先生の初期の研究に「人とエージェントの協調学習システムの有効性」というものがある。

「たとえば教育用ソフトの場合、画面上の講師と学習者が1対1の関係で学習するより、そこに人工的なキャラクター(エージェント)を登場させることで、学習効果が向上するという実験研究でした。これは、キャラクターも同じ学習者の設定で登場することにより、人間の学習者に仲間意識や競争相手の意識が生まれて、学習効果がより向上するのです」

これらのデータを数値化して森島先生は公表した。当時、この種の研究を数値化したものはなく、日本ではもちろん、世界でも初の発表だったのかもしれないという。そして現在、先生の研究テーマは「ことばの理解」だ。

「人間が文章を読むときに、どのようなプロセスを経て理解していくのかという研究です。言葉という一種の記号を読み、その意味を理解するに至る仕組みを調べています。最近は、脳科学と認知心理学とをリンクさせながら、理解のプロセスを操るのは脳のどの部分かを探る研究が多くなっています」
「私としては、脳の器質的なレベルの解明よりも、理解のプロセスをもっと抽象的にとらえたいと考えています。つまりハードウエアよりは、ソフトウエアのレベルで理解してみたいということですね」

メジャー制はニッポン教育刷新の起点にもなり得る

桜並木。
ICU博物館「湯浅八郎記念館」

昨年度から、国際基督教大学(ICU)ではそれまでの学科制を廃して、メジャー制に移行した。そもそもメジャー制とはどんな制度なのか?

「メジャーとは他大学でいう専攻にあたり、それぞれの学生が特に学ぶ専門分野のことです。用意されているメジャーは31分野(2010年度からは32分野に増える予定)で、各メジャーに定員はありません。学生たちは、2年次の終わりまでに自らの興味や関心のあるメジャーをそれぞれ選択し、さらに学びを進めることになります」

このメジャー制は国内の大学では初の試みで、ICUが標榜してきた「リベラルアーツ教育」をついに体現するものになるはずだとも。そもそもICUは学生1人ひとりに専任教員が「アドヴァイザー」としてつくなど、学生指導ケアに手厚いことでもよく知られている。

今回のメジャー制移行についても、「アカデミックプランニング・センター」を設立し、学生からの相談の受け付けや支援などを行なっている。昨年設立された同センターの初代センター長を務めたのも森島先生である。

「学生たちは、2つまでのメジャーを自由に選択して履修することができます。ただ、選択時にそのメジャーの内実を理解しないままイメージだけ選んでしまい、結果的に後悔することがあってもいけませんので、指導・相談に応じています。また、各メジャーの情報を発信するのもセンターの役目になっています」

森島先生がセンター長を務めていたときは、対象学生は1年次生だけであったが、各メジャーに進むための、履修科目などの相談に訪れる学生が多かったそうだ。そのほか先輩学生や各メジャーの代表教員が相談にのるなどの制度も整え、学生支援の体制には万全を期している。

2010年4月には、メジャー制度による入学の第1期生が3年次に進学し、それぞれが選択した各メジャーに分かれて教育指導を受ける制度が本格始動する。森島先生にその意気込みのほどを伺った。

「これは私が常々考えてきた教育方針でもあるのですが、まず論理的な思考ができる学生を育てたいですね。心理学では論理的思考や分析的思考が求められます。たとえば、卒業研究で心理学実験を行なうときは、何を知るための実験なのかを論理的に明確にすることが最も重要になります」
「ICUが掲げてきたリベラルアーツには、『統合力』を養うという意味も込められています。学習することで日々いろいろな情報が得られますが、それらを統合して新しい事柄を導き出せるような力を育てたいとも思っています。そうした力をつけて社会に出れば、さまざまな問題にぶつかっても解決していけますからね」

こんな生徒に来てほしい

基本的にはこういう学生さんに来てほしいというのはありません。人にはそれぞれに良いところがあるわけですから、それを大学でさらに育て深めていってほしい、それだけです。あえていえば、妙な先入観をもたないでICUに来てくれるのが望ましいですね。自分は理系(文系)の科目が得意だから理系(文系)のメジャーを選択すればいい――そんなふうに安易に決めて来るのではなく、もっと広い視野でいろんな疑問をもって来てほしいと思います。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。