早稲田塾
GOOD PROFESSOR

首都大学東京
都市環境学部 首都大学東京大学院 都市環境科学研究科

大口 敬 教授

1964年東京生まれ。’93年東京大学大学院工学系研究科土木工学専攻博士課程修了。’93年日産自動車総合研究所交通研究所入所。’95年東京都立大学工学部土木工学科講師。’00年同大学院工学研究科助教授。’05年首都大学東京(同年より校名変更)大学院都市環境科学研究科准教授。’07年より現職。東京大学生産技術研究所研究員。警察庁規制速度決定の在り方に関する調査研究委員会など各種委員を多数務める。主な著作に『改訂 交通信号の手引』(編集幹事)『交通渋滞徹底解剖』(編著・前著ともに丸善)『コンパクトシティ再考』(分担執筆・学芸出版社)などがある。
大口先生の個人WebサイトのURLアドレスはコチラ → http://www.comp.tmu.ac.jp/ceeipogc/

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道路・交通行政の不合理にメスを入れる交通工学

大口研究室のある首都大学東京「9号館」
南大沢キャンパスの正門(南門)

公共道路における車両の速度規制、あるいは交通信号の青・赤点灯の時間間隔など、各種の交通規制には、何らかの科学的根拠があるのだろうと思いがちだが、必ずしもそうではないらしい。首都大学東京大学院都市環境科学研究科(学部は都市環境学部)の大口敬教授はこう語る。

「とくに日本の、現在の道路行政や交通規制におけるルールは過去の経験則から決められているのがほとんどで、科学的なメスがほとんど入っていないのが実情です。そうした経験則から、危険だと思われる個所に速度規制や追い越し禁止規制などをかけていますが、運転者に過剰なまでの保護規制の傾向が強いといえます。はっきり申して、実情に合わないルールがたくさんあるのです」

きっぱりと大口先生はそう断じる。こうした交通規制の実情に科学のメスを入れて、科学的に根拠のある規制(あるいは道路設計)について考えてみようと、このほど「交通工学」「道路工学」などを研究する研究者たちが動き出した。

大口先生もその発起人メンバーのひとりで、先生が着目しているのが交差点だ。交通事故の約半数は交差点で発生しているといわれる。

「そういう意味でも交差点の構造にはまだまだ工夫の余地があると思います。それに信号制御の問題(青・赤点灯の時間間隔など)ですが、実はこれも大半が経験則によって決められています。この問題も含め、実際の交通量と利用者の心理などを勘案しながら科学的に裏付けのある交差点について考えたいですね」

そうした科学的検討のために決定的に不足しているのが、交通に関する科学的なデータである。道路構造や道路ネットワーク・交差点構造などのハード面から、事故や渋滞などのソフト面まで、データの公開が不足しているものもある。さらに、そもそも客観的データを当局で収集できていないものも多数あるという。

大口先生らの研究グループは、そのデータ収集から始めているところだ。先生たちの研究はまだ始まったばかりだが、その成果に寄せられる期待は大きい。

文理を越えた学際性が求められる都市基盤環境研究

インフォメーション・ギャラリー
学食前広場

大口先生の担当学部は都市環境学部(単科)で、同学部は地球環境に調和した都市発展の課題を研究テーマにしていることで知られる。そのなかで先生は「都市基盤環境コース」の所属である。まずは同コースの内容について伺った。

「首都大学東京は’05年に旧東京都立大学などの都立系大学が統合されて開設されました。そのときに都立大学の工学部土木工学科から発展してできたのが、都市基盤環境コースになります。昔の土木工学科といいますと、治山治水を中心にした土木技術の開発が主眼でした」
「しかし、近年の世界的な傾向として土木環境というものにも目が向けられるようになり、地球上に暮らしている人々が幸せな生活を公平に享受できる環境づくりを目指そうという気運が高まっていました。それで新大学の開設に併せて改称し、このコースでは特に都市に焦点を当てながら、その基盤技術の開発と環境の双方について研究していこうということになったわけです」

さらに、同コースの特徴については次のように語る。

「わたしは『何でもあり! 』が都市基盤環境分野の大きな特徴だと思っています。都市の基盤や環境にかかわる技術(あるいは科学的知見)を駆使して、社会のために役立つであろうことならどんなテーマを研究してもいいということです。私たちの研究もいい例で、単に道路をつくる研究から一歩踏み込んで、道路があることによって起こる事故や渋滞、大気汚染・CO2問題などの現象について調査し、その解決の道を探っていきます。そんな研究も許容されているわけですからね」

そのためには、交通工学・道路工学だけでなく、社会学や情報学・経営工学あるいは政策科学など、学際的な知識も必要になってくるとも語る。

よく遊び学ぶメリハリの利いた研究リテラシーを築く

京王線・南大沢駅前より首都大を望む

首都大学東京都市環境学部の学部生の研究室配属は4年次からで、大口先生の研究室は小根山准教授との共同研究室だ。

「卒業研究については、学生自身が研究テーマを自主的に見つけてきて研究し、解決方法を考え、結果を導き出していきます。そのプロセスを自力でやり遂げることが重要だと思っています。ですから、こちらからテーマを与えるようなことはしません。そうしないと研究へのモチベーションも上がりませんしね」

だからといって、学生を突き放すようなことはしない。テーマの選定から研究中の細かな悩みまで、学生の相談には真剣に応じている。

「卒研につきましては、学生1人ひとりが勝手に取り組むのではなく、研究室に8人のメンバーがいれば8人でその課題に取り組んで共有してほしいというのが私の考え方です。つまりチーム全員で問題に取り組むことで、社会性も身に付けていって欲しいのです」

あらためて学生たちへの指導方針について大口先生は次のようにも語る。

「広い視野と深い洞察力に、知的好奇心をもち続けてほしい。それに、自力で課題を設定・解決できる能力も何とか身につけてほしいと思っています。これはそのまま私自身の目標でもあります(笑)。そのためにはメリハリですね。遊ぶときは元気よく思い切り遊び、学ぶときは思い切り学んで学習する。よく遊び、よく学ぶ――このメリハリがとても重要になります」
「また、いまの若者は経済縮小・人口減少など、時代が悪すぎて不幸だという見方をする人もあろうかと思います。しかし視点を変えますと、団塊世代の大量退職と少子化傾向によって、若者が活躍する場は今後間違いなく増えてくるはずで、こんな時代こそチャンスでもあるのです。そのチャンスを生かして元気を出せば、みんな幸せになれるはずとも思いますね」

こんな生徒に来てほしい

都市基盤環境の研究分野では、理系知識ばかりでなく、歴史から政治経済など幅広い知識が必要です。ですから受験に必要な科目だけを勉強するのではなく、社会全般に広く興味を持っていてほしいですね。さらに好奇心が旺盛で、なぜそうなっているのか等をいろいろと考えることが好きだという人に来ていただきたい。現実的なアドバイスとしては、高校の学習科目でいえば、物理と数学が得意だという人に適性があるとも思います。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。