{literal} {/literal}
GOOD PROFESSOR

神奈川大学
理学部 化学科

木原 伸浩 教授

きはら・のぶひろ
1963年宮城県生まれ。’89年東京大学大学院工学系研究科合成化学専攻博士後期課程中退。’89年東京工業大学資源化学研究所助手。’94年同工学部高分子工学科助手。’98年大阪府立大学工学部応用化学科講師。’99年同助教授。’00年同大学院工学研究科物質系専攻応用化学分野助教授。’05年より現職。有機合成化学協会研究企画賞(’91年)。主な著作に『よくわかる有機化学の基本と仕組み』(単著)『よくわかる最新プラスチックの仕組みとはたらき』(共著・前著ともに秀和システム)などがある。
木原先生が主宰する「木原研究室」のURLアドレスはコチラ →
http://www.chem.kanagawa-u.ac.jp/~kihara/

  • mixiチェック

生物体内の分子反応の神秘に迫る生物有機化学

木原研究室のある6号館建物
湘南ひらつかキャンパス正門

今週ご紹介する一生モノのプロフェッサーは、神奈川大学理学部化学科の木原伸浩教授だ。まずは木原先生が所属している化学科の特徴から話してもらおう。

「大学で化学を学んでいる人には、英語を苦手と感じている人が多いんです。でも、それでは世界に出ていけません。それで、ここでは英語の授業に力を入れています。化学で使う英語ですから、研究方法や結果などを正確に、断定的に伝えることが大事です。難しい文法的なことは必要ありませんから、英語に力を入れているからといっても、とくに臆する必要はありません」

さらに化学実験の指導がきめ細かいのも、同学科の特徴のひとつと言える。

「いうまでもなく、化学の研究において実験は必須です。実際に何かの物質を手に取ったときの感触とか、反応の進行などを実感することが大切です。そうした指導がきめ細かく行なわれますから、ここで化学の勘を磨いてほしいですね。いたずらに化学式を机上で書くだけでは、化学を学んだことにはなりませんからね」

さて、木原先生ご自身の専門は「有機化学」「生物有機化学」である。なかでも生物の、反応の仕組みについての研究が中心となる。

「ヒトを含めた生物は、その体内で化学反応を起こして生命を維持しています。喜・怒・哀・楽や思索することも、複雑な化学反応によって引き起こされているのです。たとえば空腹感もそうです。血液中のブドウ糖の濃度が下がったのを、脳のセンサーが感知することによって、『おなかが空いた』という感覚が生まれるようになっています」

体内の分子の反応を解明・利用して新たな試みに挑む

キャンパス点描
湘南キャンパスのシンボル・1号館

ヒトの脳センサーは、似たような分子のなかからブドウ糖の分子だけを確実にキャッチする。この仕組みを利用することで、人間にもいろいろな分子が見分けられるようにならないか? また体内で起こっている反応をモデルにすると、新しい反応のコントロール法が可能になるのではないか? こうしたことが木原先生の研究テーマ群となっている。

分子を見分ける、生物有機化学の研究に挑んでいる化学者は世界にも数多い。ところが、そのようにして見分けた分子の反応に挑んでいる化学者は、世界にもあまりいないという。見分けた状態で、さらにその分子を反応させることには非常な困難さが伴うからだ。

こうした研究の過程で、木原先生は副次的な発見も数々してきた。しかも、その多くが世界的な発見ばかりなのも驚くべきことである。

「最近、『酸化分解性高分子材料』というのを発見しました。これは酸素のある空気中では安定なのに、酸化剤をかけると分解してしまう高分子材料で、接着剤あるいは塗料などへの利用が考えられます。これの利点は、機械などをこの接着剤で組み立ててやれば、その機械が不要になったときに酸化剤(現行商品では漂白剤がある)をかけることで、たちまちバラバラに分解されてしまうところですね」

この塗料で塗装すれば、古くなって汚れたりキズなどが目立ったりしたときに、酸化剤を塗布して下のきれいな表面に、簡単に戻すというような使い方もできるのだ。いま実用化に向けて研究中だという木原先生だが、画期的な発見として各界からもその動向が注目されている。

実験に失敗はつきもの!楽しみながら「化学」しよう

木原研究室・夏合宿における集合写真
高台からは信仰の山・大山も望める

神奈川大学理学部化学科の、学部生の研究室配属は3年次の後期からになる。同学科では学部生は研究室ごとの均等割りで、各研究室10人前後の配属になる。

「3年次後期に配属された学部生は、まず卒業研究の準備期間ということで、研究の基礎的なことを身に付けてもらいます。わたしの研究室では宴会をよく開くというのも特徴でしょうか(笑)。新入3年生も一緒に酒を飲んで、研究室メンバーのコミュニケーションを図る目的もありますが、やはり化学の楽しさ、面白さを語り合って、化学への関心と興味を高めることが一番の目的ですね」

最近の若者のあいだでは「宴会」など死語化しつつあるとも聞く。大学の先生が率先して宴会を開くというのは、貴重なことともいえるだろう。もちろん本来の研究は楽しいばかりではなく、真剣さも求められる。卒業研究のテーマの選定にあたっては、木原先生が提示した候補から選択するスタイルをとっているという。

「卒研については、配属生数の倍ほどのテーマを提示したうえで、彼ら自身に選んでもらうようにしています。自らの意思でテーマを選ぶようにしてから、研究に対するモチベーションが違ってきたと思っています」

ただ、そうやって自分で選んだ研究テーマでも、なかなか思っていたような展開にならなかったり、期待していたような成果があがらなかったりすることもあり得る。

「化学の実験や研究において、予想どおりの結果にいつも達するのであれば、そんな実験や研究などわざわざする意味がありません。結果が予測できないからこそ取り組むわけで、その予測できないところをも愉しむことが大切ですね」

世界中で未だだれも手掛けたことのないような、最先端の化学研究に挑む意気込み――それこそが重要だという木原先生だ。あらためて学生・研究生に対する指導方針については次のように語ってくれた。

「議論することを愉しむ人になってほしいですね。そのために毎週1回のゼミを開いて、いろいろと意見交換をしています。各参加者は、最低1回は何か質問することをルールにしています。また、プレゼンテーション力をつけるような指導もしています」

木原先生の学生指導に懸ける情熱と温情には並々ならぬものがある。もっと知りたい現役高校生の皆さんは、ぜひWebサイトにアクセスしてほしい。どのページからも熱意あふれる先生のお人柄が伝わってくるはずである。

こんな生徒に来てほしい

実験することが好きな人ですね。化学などサイエンスの世界では実験がすべてです。どんなに立派な理論を打ち立てても、具体的な実験でひっくり返されることがよくあります。頭で考えているだけではダメで、手を動かして実験してみることが大切なのです。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。