早稲田塾
GOOD PROFESSOR

横浜市立大学
国際総合科学部

白石 小百合 教授

しらいし・さゆり
1963年長野県生まれ。’86年上智大学外国語学部卒。’86年日本経済研究センター入所。’04年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。’06年日本経済研究センター退社。’06年帝塚山大学経済学部教授。’07年より現職。行動経済学会設立発起人(07年設立)。厚生労働省中央社会保険医療協議会公益委員など各省庁委員も務める。著作に『EViewsによる統計学入門』『資産選択と日本経済』(前著ともに共著・東洋経済新報社)がある。

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計量経済学の視点でニッポンの社会保障に迫る

白石研究室のある文科系研究棟
横浜市立大学金沢八景キャンパス正門

政府各省庁委員を務めるなどの活躍をする、横浜市立大学国際総合科学部政策経営コースの白石小百合教授、なんと大学時代の専攻はドイツ語だったという。卒業後に就職したのが経済分析や予測を専門にする民間シンクタンク(社団法人日本経済研究センター)で、ここで畑違いともいえる経済学の面白さに目を開かれたという。シンクタンク研究員の傍ら、大学院で経済学を学び直して経済学博士号を取得、そして現在に至るという異例の経歴をもつ。

「じつはシンクタンクで初めて経済学と出会ったときは、『経済学をこれから勉強しても果たしてものになるかしら?』と思っていました。こうした人生の岐路における選択には、本能的、あるいは自分の直感による選択が大切な気がします」

そのときの直感を自分のなかで大切に受け止めた白石先生は、コツコツと努力を重ね、今日の地歩を築くまでになった。その先生の専門分野は「計量経済学」と「行動経済学」である。ともに高校までの学習では出会わない学問分野だ。まずは、計量経済学とは何か? という初歩的な疑問からご説明いただいた。

「これは経済関係のいろいろなデータをもとに、数学の連立方程式等を使って、経済の現状分析や将来予測をするものです。経済現象について語るとき、印象であったり、有名な経済評論家が言っているからとかというのではなく、正確な数字の相互関連から導き出されたデータを論拠にして語ることができる――それこそが計量経済学ということになります」

そんな白石先生は、日本経済研究センター時代から日本の社会保障問題を中心に調査研究してきた。

「年金や医療・介護など社会保障費は生活を支える基盤としても重要な項目です。とくに最近は私自身が厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)の公益委員をしていることもあって、中医協による診療報酬改訂が当初の目的にかなって機能しているのかを公益(国民)の視点で検証調査しています」

経済学者が「日本の幸福度」を調査研究する理由とは?

キャンパス正門から続くイチョウ並木
金沢八景キャンパス全景

さらに、現在は行動経済学の分野まで研究フィールドを広げている。’07年の行動経済学会立ち上げでは、白石先生も発起人のひとりとなった。

「行動経済学は、経済学のなかでも新しい分野となります。わたしはこの分野で『幸福度』についての研究をしています。これは、いろいろな人にそれぞれが感じている幸福度についてのインタビューをして、それをデータ分析して、人の幸福度はどういう要因で決まっているのかを調査しています」

こうした社会調査から、最近の晩婚化や少子化の傾向が析出され、さらに少子化傾向には出産や子育てにかかるコスト問題が潜んでいることもあぶり出されてきているという。これこそが経済学者がなぜ幸福度を調査するかの解なのでもあろう。

なお、これらの研究は共同研究スタイルでなされ、その成果をまとめた『日本の幸福度』が近く出版される予定で、わが国で幸福度について書かれた最初の書籍になるはずだという。
つぎに横浜市大金沢八景キャンパスの特徴についてもお聞きしてみた。

「ここ金沢八景キャンパスは、横浜市の南の外れに位置しています。そのぶん都会の喧噪から離れて、ゆったりと大らかな気持ちで勉学に向かえると思います。また、大学の規模も小ぢんまりとしていますから、学生同士(あるいは学生と教員)の関係が近いのも特徴でしょうね。ネット時代ともいわれる中にあって、みんなが顔見知りというキャンパスの雰囲気はとても気に入っています」

ちなみに白石先生が在籍する国際総合科学部政策経営コースは国際経営コースとともに経営科学系に属する。

「この2つのコースは、政策経営が公的な政策の企画・実行ができる人材の育成、国際経営がグローバルな視点からの民間企業の人材育成を目指すとうたっていますが、それほど明確な線引きはされておりません。自分の興味に合わせてそれぞれ別コースの科目を履修することもできますし、経営科学系のゼミの多くはコースに関係なく取ることができます」

数学的素養よりも社会現象に対するセンスのほうが大事

横浜市立大学キャンパスのシンボル・時計塔

経営科学系2コースのゼミ演習は2年次から始まる。

「わたしのゼミでは計量経済学について学んでもらっています。2年次のゼミ生には、経済学や統計学の基礎から、パソコンの扱い方、経済データのグラフの読み方など基礎的なリテラシーを学習します。3年次になりますと、計量経済学のさまざまな応用的な研究ツールについて学んでもらいます。これも専門書を読むだけは面白くありませんので、できる限り実践の機会を増やしてテクニックを身につけてもらうようにしています」

そして4年次ゼミ生は1年間かけて卒業論文に取り組む。研究テーマは自由だが、せっかく計量経済学を学んだのであるから、計量経済学を生かしたテーマを見つけてほしいと白石先生。そうした指導方針については次のように語る。

「学生さん達が伸び伸びできるようにしたいというのが私の基本方針です。ゼミの時間に集中して学ぶのはもちろんですが、あとは自分の興味のあるテーマを自由に選んで調査研究をしてほしいですね。時間に余裕のある学生時代には、いろいろと試行錯誤したり、失敗を経験することも必要ではないかと思っています」

ところで経済学(なかでも計量経済学)といえば、数式が縦横に羅列されるという印象がある。数学に強くないと現代経済学は学べない――そう思い込んでいる高校生も多いことだろう。このあたり白石先生は次のようにいう。

「統計学はパソコンと同じようなツールに過ぎませんし、取り扱う数式等も計量経済学を読み解くための言語に過ぎません。ですから怖れる必要など全然ありません。むしろ、世の中や社会のなかにある不思議な諸現象に興味を持てるセンスのほうが数段重要です。まず自分の興味から取り組んで、自分は何を研究しようとしているのか? その方向性を見失わないようにすることが大切ですね」

こんな生徒に来てほしい

現役高校生のみなさんには、いま学んでいる勉強をまず頑張ってほしいですね。いまやっていることが、将来かならず役立つときが来ます。いまは無意味に思える勉強でも、その先には大学での本格的に面白い学問がたくさん待っているはずです。そのための土台づくりの時期だと思えば乗り越えられるのではないでしょうか?

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。