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GOOD PROFESSOR

獨協大学
外国語学部 交流文化学科

高橋 雄一郎 教授

たかはし・ゆういちろう
1957年東京生まれ。
’88年上智大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程中退。
’88年東京医科歯科大学教養部専任講師。
’94年米ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究科修士課程修了。
’00年獨協大学外国語学部英語学科教授。
’09年より現職。
主な著作に『身体化する知』(せりか書房)『パフォーマンス研究』(訳書、人文書院)『ビルマ少数民族』(訳書、明石書店)がある。

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「パフォーマンス」「ツーリズム」の視点から人間・社会に迫る

高橋研究室のあるキャンパス中央棟
オープンキャンパスにて講演する高橋先生

獨協大学は’09年4月から外国語学部に「交流文化学科」を開設しスタートさせた。
新学科が標榜するキーワードは「ツーリズム」(tourism)。
この学科立ち上げの中心を担った高橋雄一郎教授が今回の一生モノのプロフェッサーだ。

「ツーリズムを謳っているからといって単なる観光学科などではありません。むしろ観光ツーリズムの先を考える学科として理解してほしいですね」

開口一番そうキッパリ述べたうえで高橋先生はこう続ける。

「現代はヒトやモノ・情報・資本・思想が国境を越えて移動していく、交流文化の時代です。そのプロセスで文化同士が衝突し混じり合って変化していきます。ツーリズムを超えた、より広い視野に立ってそれらを研究するのが交流文化学科となります」

「専門課程は、①ツーリズム②トランスナショナル文化(越境する文化)③グローバル社会の各コースから成ります。そして、広くグローバル社会でリーダーシップを発揮できる人材の育成を目的としています」

さらに高橋先生は、交流文化学科の5つのポイントを以下のように挙げてくれた。

①英語教育(卒業までにTOIEC800点以上取得)
②英語プラスワン(英語以外の第2外国語の習得)
③ツーリズム(本来的なツーリズムから持続可能な「旅」の創造)
④トランスナショナル文化&グローバル社会(新しい世界のかたちの探求)
⑤留学&インターンシップ(短長期留学や国内外ツーリズム産業での実践研修への支援)

いうまでもなく、獨協大は外国語教育の充実ぶりに定評がある。
その中心となる外国語学部卒業生の20%が、ツーリズム産業に就職するという実績をもつ。
その2つの特長をさらに融合させて、新たな地平を切り拓こうという意気込みもうかがえる。

共同体のパフォーマンスを通して帰属意識が育まれる過程を探る

オープンキャンパスに向かう高校生たち

先生のご専門は「パフォーマンス研究」と「ツーリズム研究」である。
まずは聞き慣れない「パフォーマンス研究」のことからお聞きしていこう。

「パフォーマンスといいますと、演劇とか映画などを思い浮かべる人が多いでしょうか? わたしは共同体のパフォーマンスが社会や文化を作り出している点に着目して、文化人類学的な視点から研究しています」

「たとえば、入学式や入社式や成人式などの社会的儀式から、新年の一般参賀や終戦記念日などの国家的な儀式までをパフォーマンスとしてとらえます。そうした『共同体の儀式』を通して、そのアイデンティティー(帰属意識)や、共有される記憶・歴史感覚などがどのように醸成されていくのかを探っています」

そうした儀式を繰り返す過程のなかで、身体感覚として醸成され絡みついて、自分が何者であるのかが理解されていく。
ただ、これが極端にまで行き過ぎると、かつてのナチスドイツや戦前ニッポンのようなファシズム(全体主義)への道を歩むような危険をも内包している。

それらの危険性もふくめて、客観的に見つめる目が必要だと高橋先生は説く。

ツーリズムとパフォーマンスの接点から隠蔽された何かをあぶり出す

獨協大学キャンパス全景

一方の「ツーリズム研究」は――

「これにつきましては、ツーリズムとパフォーマンスの接点を探っています。旅先などでよく博物館に巡りあったりしますが、その博物館の展示テーマですとか展示方法などについて、気になってしょうがないわけです」

「たとえばカナダやオーストラリアなどの、多民族・多元文化の社会における博物館などの展示のバランスはどうあるべきか? こうしたことをパフォーマンスや表象・文化・ツーリズムのつながりの中でとらえて研究してきました」

こうしたツーリズム研究でいったい何が見えてくるのか――
高橋先生は逆説的に次のように説明してくれた。

「博物館などの展示内容は、その時代や社会によって、その社会を構成する人々によって、あるいは時の権力者の意向によって、様々に内容が変化していきます。何を見せたくて何を見せたくないのか? そうやって国家や社会や諸概念が作られていきます。ここで注意しないといけないのは、抑圧されている人々や歴史上の不名誉な出来事などは、意図するとしないとに関わらず、隠されてしまうということです」

同じようなことが観光ツーリズムにもいえる。
とくに「パッケージツアー」など、設定されたコースにおいて顕著だという。
こうして、ツーリズムとパフォーマンスの両者の接点から隠蔽されたものをあぶり出していく――
ここから高橋先生独特の各研究テーマへと発展していくのだ。

自らの社会常識を常に疑うリテラシーを持っていてほしい

キャンパス内で建設中の「新教室棟」

獨協大学交流文化学科は09年にスタートしたばかりで、いまのところ1年次学生のみだ。
したがって3~4年次学生を対象にした専門ゼミ演習はまだ始まっていない。
そこで、2年後に始まる高橋ゼミの構想を聞いてみた。

「やはりツーリズムがテーマになろうかと思います。いまも話しましたように、一般のツーリストコースには組み込まれないような地域の歴史や人々・文化などについて、ゼミの学生たちといっしょに勉強していきたいと考えています」

「まだ具体的な内容は漠然としていますが、高校の修学旅行で沖縄に行く学校が最近多くなってきたので、『沖縄』『修学旅行』『平和学習』といったところをキーワードにして、何か面白そうなことが出来ないかと思っているところです」

いまのところゼミの定員は各学年10人程度が予定されている。
また09年のいま、高橋先生は以前の所属である外国語学部英語学科のゼミ演習を担当している。
あらためて学生たちへの指導方針については次のように語る。

「大学とは学生自身が問題意識をもって自ら勉強するところです。教員はその補助者に過ぎません。学生たち自らが問題を解決していく過程で、方向を間違えている学生の軌道を修正し適宜助言をしていきます」

「授業で心掛けているのは、難解で専門的な話をするのではなく、学生たちと一緒に問題を共有し、解決方法を一緒に考えていくことです。身のまわりの生活から問題意識をもつように指導しています」

そんな高橋先生のWebサイトにこんなくだりを見つけた。

「美味しい料理と酒が好き。そんな生活ができるのも、自分が北側のめぐまれた人間だからで、そういう世界は変えていきたい」

こんな生徒に来てほしい

やすやすと大人の言うことを信用しない人がいいですね。
つまり、社会の常識を常に疑う態度を持っていてほしいということです。
人間はある環境のなかで育ちます。
自らの「外部」のことは見えにくく、自分たちの生活が当たり前だと思いがちです。
しかし、外の世界にはまったく違う考え方や違う生活をしている人たちも多くいます。
本当にこの生活でいいのか? まったく別の生き方はあり得ないのか?
常にそうした疑問をもって、別の生き方を模索できるという人に来てほしいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。