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GOOD PROFESSOR

東京外国語大学
外国語学部ロシア・東欧課程 東京外国語大学大学院 総合国際学研究院国際社会部門

鈴木 義一 教授

すずき・よしかず
1961年千葉県生まれ。’87年東京大学経済学部卒。’90~’92年ロシア国立人文大学にソ連政府国費留学。’94年東京大学大学院経済研究科第二種博士課程単位取得退学。’94年東京大学経済学部助手。’95年東京外国語大学外国語学部講師。’99年同助教授。’08年同教授。’09年より大学院重点化により現職。主な著作に『西洋経済史学』(東京大学出版会)『歴史における「修正主義」』(青木書店)『国民国家と市民』(山川出版社)などがある(著作はいずれも共著)。
「鈴木義一研究室」のURLアドレスはコチラ → http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ysuzuki/

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壮大な実験・社会主義経済を総括するロシア研究

鈴木研究室のある「研究講義棟」
正門からの東京外国語大学キャンパス

語学研究系の最高峰・東京外国語大学の学部生のカリキュラムを見ると、1~2年次学生は7課程26専攻語から主専攻語を選択して集中的に学び、同時にその言語の地域に関する科目を履修していく。
また3~4年次学生は「言語情報」「総合文化」「地域・国際」の3コースからいずれか1コースを選択して履修する(ほかに大学院に連動した特化コースもある)。

今回の一生モノのプロフェッサーは東京外国語大学大学院の鈴木義一教授で、学部2年次学生の「ロシア語」講読を担当し、3~4年次の学生には「地域・国際コース」で講じている先生だ。
現役高校生にとっては、近隣国の言語でありながら日頃なじみの薄いロシア語だが、その学びの要点から聞いていこう。

「ロシア語は、ほかの欧米語などと比べても文字がかなり違うので当初は戸惑うかもしれませんが、とくに習得が困難な言語ということではありません。文法構造も英語などとは違いますから、学習の初期段階で挫折しないようにすることですね。多少時間をかけてでも基礎的なところをしっかり身につけることです。基礎さえ身につけば後は楽になります」

一方の「地域・国際コース」の特徴については次のように説明してくれた。

「このコースの内容は社会科学の分野になります。ロシア地域について学ぶ場合、他大学と本学の一番の違いは、社会科学以外の教員や科目との相互関係があるということです。地域・国際コースであれば主にロシアの社会や政治について学びますが、他コースのロシア文学や文化の専門的なことも学べます。それにより社会科学の視点に限らない広い視野での学習を可能にしています。そのへんが特徴といえるでしょうね」

鈴木先生はロシア・東欧課程の地域・国際コースのなかで「国際開発協力系」に属する。
この系の内容についても伺った。

「基本的には経済学のカテゴリーになります。いわゆる経済学部で学ぶ経済学とは違って、開発途上国やその他の地域の実態に即して経済を学ぶところに特色があります」

いまも最低限の生活を国家が保障すべきという意識は残る

キャンパス中央の「翔」オブジェ

さて、鈴木先生の専門は「比較経済史」と「現代ロシア経済」である。
「比較経済史」の分野では「1930年代におけるソビエト連邦の計画経済の形成と変容、そして資本主義の経済体制との比較」が研究テーマになる。

「’91年までの地球上には、旧ソ連に代表される社会主義国と、我々が暮らしている資本主義国の2つの体制がありました。わたしの研究は、双方の体制について経済学の手法で比較するものです。とくにソ連における第1次・第2次五ヵ年計画期について研究してきました」

前世紀の世界中の人々の暮らしと意識を大きく規定していた社会主義と資本主義という両体制には、大きく違うところと共通する点の双方があるという。

「まず政治体制と経済体制が異なるのはもちろんです。なかでもソ連に代表される計画経済は、国家が経済活動をすべて管理するもので、その点が大きく違いました。ただし福祉国家は双方の体制が影響し合うなかで成立したものですし、経済体制が違っても案外共通する点もあります。また、社会主義の時代の人々の行動様式もよく見れば合理的な説明ができることが多いのです」

もうひとつのご専門「現代ロシア経済」においては、「ソ連崩壊後のロシアの経済制度や社会意識の変化」を研究テーマにしている。

「91年に旧ソ連が崩壊し、同時に市場経済への転換が行われました。短期間のうちにどのようにして政治・経済の新体制をつくり上げたのか? またそれは経済の実態や暮らしている人々の意識にどのような影響を与えたのか? そうした諸問題についての研究になります」

株式や投資についての知識も何もない旧社会主義圏の人々の中に、いきなり証券取引所がたち上がっていった。
いまや「BRICs」の一角として、新世紀の世界経済をリードすることが予測されるほどの、膨大なパワーを潜ませる市場経済システムが組み立てられていく話から、鈴木先生ご自身の研究成果について話は展開する。

「市場経済化については、それを推進した当時の政権のエリートたちが思うほど簡単ではなかったこと、資本主義国ではあたり前の制度が市場経済化にとって必要不可欠で、それは自動的に出来るものではないことなどが明らかになってきました」

「また人々の意識の変化については、激しい変化のなかで社会意識が世代間で大きく違うということがあります。一方であまり大きく変わらないようなタイプの意識もあります。国民の最低限の生活を国家が保障すべきという意識は、いまでも多くの人々が共有しています」

「ちょっとの背伸びで届きそうなこと」に挑戦する気持ち

東外国語大学キャンパス内の並木路

東京外国語大学の専門ゼミ演習は3~4年次学部生が対象である。

これまで鈴木ゼミでは平均で10人前後だったが、今年度は過去最高の18人を数えた。

近年のゼミ全体の研究テーマは「旧ソ連地域の移行期における政治経済体制」である。

「まず私のゼミではロシア語文献の読解と情報の検索・処理のスキル向上をめざします。そして3年次の11月ごろまでに、各自の卒業論文のテーマを決めて研究・作成に入ることになります。卒論が書き上がったら、ゼミ生同士でペアをつくってお互いの論文を読み合ってコメントする合評会を行なっています」

これにより論文の質を高めるということだ。
あらためて学生たちへの指導方針については次のように語る。

「ひと言でいえば、少し背伸びをして何かに挑戦してみようという学生を育てたいですね。現状に甘んじることなく挑戦する姿勢……たとえばロシア語専攻の学生でしたら、ロシア語の原書を手にするようなことです。あまりに大きく荒唐無稽な夢を描くと、その夢に押しつぶされてしまうかもしれないので、少しだけ背伸びをして挑戦していく気持ちが大切だと思います」

そうやって少しずつステップアップしていくことで、いつかは遥かなる高みに立てるというわけだ。
これに加えて「好奇心を忘れずに自分を知ること」の大切さも強調する。
いずれも「ロシア経済」研究の専門家である鈴木先生ならではの心に響くことばの数々である。

こんな生徒に来てほしい

まずは若者らしく好奇心旺盛な人、自分の現状の能力より少し上のことに挑戦しようという人ですね。
地域・国際コースでは海外の国や地域について研究しますが、ニッポンの常識がほかでも常識として通じるとは限らないことが分かってくると思います。
そうしたことを理解して事実として受け入れる姿勢のある人に来てほしいと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。