早稲田塾
GOOD PROFESSOR

神奈川大学
工学部 物質生命化学科

横澤 勉 教授

よこざわ・つとむ
1957年千葉県生まれ。’85年東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程化学工学専攻中途退学。’85年東京工業大学資源化学研究所技官。’88年同助手。’91年神奈川大学工学部応用化学科専任講師。’93年同助教授。’99年同教授。’06年同学科名称変更により現職。この間に’97年米イリノイ大学在外研究員。主な著作に『大学院有機化学 第2版』『基礎高分子化学』(前著ともに東京化学同人)『21世紀の化学シリーズ 第二巻 有機化学反応』(朝倉書店)がある(著作はいずれも共著)。
横澤先生が主宰する「横澤勉研究室」のURLアドレスはコチラ →
http://apchem2.kanagawa-u.ac.jp/~yokozawalab/index.html

  • mixiチェック

世界初「縮合系高分子精密合成法」に成功した先駆者

横澤研究室のある「23号館」
神奈川大学横浜キャンパスの正門

神奈川大学工学部物質生命化学科教授の横澤勉先生は、世界で初めて縮合系高分子の精密合成法の開発に成功したパイオニアとして知られる。
具体的な内容について先生ご自身から説明していただこう。

「学生時代から、わたしは有機合成化学の研究を専門にしてきました。有機化合物とは、炭素を含有している物質の総称です。それらを化学的に合成してつくり出す研究がわたしの出発点です。大学教員になってからは高分子合成の研究へシフトして、最近はそちらの方が中心となっています」

合成される高分子には、石油からつくられるナイロンやポリエステルなどがある。

「そうした素材は、分子の長さがまちまちで一定にそろえることは不可能とされてきました。これをCGCP(連鎖縮合重合)という方法を用いて初めて成功したのが、私たちの研究室です。この成果が分子量のそろったポリアミドやポリエステルの合成となりました」

さらに、横澤先生の研究室では「π共役系高分子」の長さを一定にする試みにも成功した。
π共役系高分子は電気が流れる高分子であり、すでに太陽電池や有機EL(エレクトロルミネッセンス)の素材として使われ始めている。
この高分子の長さや末端を制御する方法を見つけたので、世界中でこの分野の研究が一層盛んになったそうだ。
こうした画期的な開発について先生は次のように語る。

「わたしの元々の専門は有機化学でした。したがって、そこで使われる研究の考え方や手法を高分子合成の研究へと応用して、成功した開発といえましょう。ですから、わたしが最初から高分子合成を専門にしていたら、こうした発想の研究は生まれなかったでしょうね」

有機化学から高分子合成の研究に転じたことが、新たな視点からの世界的な研究開発につながったわけだ。
このエピソードの示唆するところは大きい。

卒業研究で気づく学問本来の愉しさ

横浜キャンパス点描
キャンパス内には公開緑地もある

「工学部に化学系の学科をもつ大学は多くあります。しかし本学の学科ほど、各々の分野で学会賞などを受賞した優秀な教員が集まっているところは数少ないかと思います。研究レベルも高いと自負しております。どの先生も研究や実験に慣れていますから、卒業研究における指導が的確に行なわれるわけですね。これも大きな特徴のひとつといえます。講義中心の3年次までは、大学間の差はあまり出ません。目に見えて表れるのは、4年次の卒業研究です。世界初の研究や実験に挑むわけですから、それなりの実績がある研究者でないと的確な指導ができません。その点、本学の学科は、先ほど申し上げたとおり各学会で認められた先生方が導いていくわけですからね」

例年かなりの数の卒研が、学会でも発表されているとの事実からも質の高さがわかる。
ただ惜しむらくは、そのすばらしさが受験生などに正当な評価を受けているとまで言えないところでもある。
そのあたり歯がゆさを覚えるとも語る。

「学会関係者とか企業の採用担当者などの評判は、すこぶる良いのです。つまり玄人受けする学科といえるかもしれません。カリキュラムも1年次から実験科目を充実させており、本気で学ぼうと進学してくる学生の満足度はかなり高いですね」

受験生の皆さんには、神奈川大学のオープンキャンパスなどで、実際に見たり体験したりすることをお勧めしたい。

物質生命化学科の研究室配属は学部3年次後期からである。
各室に10人前後が振り当てられる。
理系としては多いと感じられるかもしれない。
ただし同学科は各室とも教授または准教授と、助教または助手による2教員制を敷いているため、卒研指導に手抜かりなどはないそうだ。

「この学科では、しっかり卒業研究をして、きちんとした卒業論文を書き上げるという方針を徹底しています。3年次に研究室へ配属されたら、週1回ずつの『輪講』と『実験』。輪講では英語論文の解釈を学びます。実験では基礎的な実験方法、さらには研究室でのルールなどを覚えてもらいます。そして4年次に進級したら、すぐに卒研に入れるよう万端の準備を整えていきます」

卒業論文の提出を終えると、専門教員の査読をへて、自身の研究を学科の学部生や教員の前で披露する「卒業研究発表会」が開かれる。
これもまた卒業研究審査の対象になる。

「その点で卒研審査はかなり厳しいといえましょう。3年次までは試験のための学習だけでいい。ところが4年次になれば、自発的にいろいろな意義ある勉強を見つけ出さなくては卒研にしっかりと取り組めません。また実験を通して大勢の人とつきあうことになりますから、社会性も身につけなければなりません。結果として、それまでにない濃い1年間を4年次では体験することになります」

横澤先生ご自身の指導方針について聞くと――

「4年次の卒研を経験して初めて、研究の面白さに目覚める学生が多いようです。そうした学生には大学院への進学を推奨しています。進学して思う存分に真理を究めてみようと取り組むのもいい経験だと思うからです。学部からそのまま社会に出ると、そうした機会も多くありませんからね。人生80年といわれる時代に、修士課程で2年間、博士課程までいても5年間です。つまり、人生の80分の2か5にすぎません。しかも就職の間口さえ大きく広がるのですから」

こんな生徒に来てほしい

大学に進学する目的は何か? それをよく考えてきてほしいですね。
この国では、出身学部に関係なくいろいろな職種に就職できます。
それに対して欧米では、大学のどの学部で学んだかで将来の職種も限定されていくシステムが多いようです。
けっして日本式の方法が悪いというわけではありません。
ただ、グローバル化していく時代に、いつまでも日本式が国内で続くとは限らないでしょう。
自分の将来のこともよく考えて、学部や学科の選択をしてほしいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。