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GOOD PROFESSOR

東京理科大学
薬学部 生命創薬科学科

北村 大介 教授

きたむら・だいすけ
1959年佐賀県生まれ。’88年佐賀医科大学大学院医学研究科医学博士課程修了。’88年九州大学生体防御医学研究所助手。’94年同助教授。’95年東京理科大学生命科学研究所教授。’97年同大学院生命科学研究科教授。06年同大学薬学部生命創薬科学科教授(兼任)。この間88 ~ 91年独ケルン大学遺伝学研究所博士研究員。著作には『How the Immune System Recognizes Self and Nonself』(共著・スプリンガージャパン)がある。
北村先生が主宰する「生命科学研究所分子生物学研究部門・薬学部生命創薬科学科分子免疫学研究室」のURLアドレスはコチラ →
http://www.rs.noda.tus.ac.jp/~ribsjm/kitamuralab/indexj.html

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世界初オリジナル実験でBリンパ球細胞のなぞに迫る

北村研究室のある生命科学研究所
09年度研究室メンバーでの集合写真

今週の、一生モノプロフェッサーは東京理科大学教授の北村大介先生だ。
東京理科大学生命科学研究所に所属する北村先生は、兼任で同大学薬学部生命創薬科学科の教壇にも立つ。
まずは生命科学研究所についてから説明してもらおう。

「ここでは私立大学の研究施設としては珍しい『免疫学』に特化した研究をしています。免疫とは、生体内に侵入した異物に対し特異的な抵抗性を発揮する仕組みのことで、その免疫についてさまざまな角度から学際的に研究している研究所です」

さらに同生命科学研究所は大学院生命科学研究科も併設しているが、出身大学や出身学部はさまざまだ。もちろん北村先生も院生たちの指導教育にあたる。
もうひとつの活躍の場である、薬学部生命創薬科学科の特徴については次のように話してくれた。

「ほとんどの私立大学薬学部では薬剤師養成を目的とする6年制の学科が中心なのですが、本学では研究者や医薬創成にかかわる人材の養成を目的とする4年制の本学科の学生数が6年制学科より多いことが一番の特徴でしょうね。この生命創薬科学科で扱うのはヒトに関する生命科学で、その最終的な目標は治療にあります。そのため4年間かけて薬学だけでなく、医学・分子生物学・免疫学などの生命科学もみっちり学んでもらいます」

なお東京理科大学薬学部には薬剤師養成を主たる目的とする6年制の「薬学科」も開設されている。

日本人初の「遺伝子ノックアウトマウス」の作成者

東京理大野田キャンパスの正門
東京理大薬学部校舎

北村先生自身の専門は免疫学そのものである。
その主な研究テーマは「Bリンパ球細胞」(B細胞)についてだ。

「現在の研究の中心は、リンパ球の一種であるB細胞の分化、その細胞分化の制御機構について調べています。B細胞というのは、生体内に抗原(菌やウイルスなど)が侵入すると、抗原受容体を介して認識し、増殖分化して記憶B細胞をつくり出します。異物の侵入で一度目は発症しても、次からは抗体がつくられて発症しません。つまり記憶B細胞によって体が免疫を獲得したからです」

このときの細胞分化がどのような制御のもとで進むのか? 先生は「胚中心様B細胞培養系」によりその謎に迫る手法をとる。

「この胚中心様B細胞培養系というのは私の研究室が開発した実験システムで、免疫反応が起こっている体内でのB細胞の増殖と、その過程で起こる細胞分化をシャーレ上で再現する培養システムです。おそらく世界で初のシステムだろうと思います。これと従来の動物実験を組み合わせることによって、細胞分化を指令するシグナルは何か? 細胞内部でどの遺伝子が動作して記憶B細胞や他の細胞に分化するのか? そうしたメカニズムの解明が期待されています」

この胚中心様B細胞培養系は、そうした遺伝子研究レベルの謎解きだけでなく、応用研究への期待も大きい。
一例を挙げれば、分化の途中で抗原に特異的なB細胞を取り出して、特異的な抗体をつくり出すようなことだ。
いずれにしても、体内という見えないところで起こっていた免疫応答についての大半の実験がシャーレ上で行なえるようになるだろうという。
まさに画期的かつ世界的なシステムなのである。

北村先生は最初臨床医をめざして医学部に入学したが、大学院時代に基礎医学の研究者になろうと方向転換。
そしてドイツの大学研究所在籍中に、日本人としては初の「遺伝子ノックアウトマウス」の作成に成功したことでも知られる。

「遺伝子ノックアウトマウスというのは、ES細胞(胚性幹細胞)の内部にある任意の遺伝子を破壊し、その細胞を使用して誕生させた任意の遺伝子が欠損したマウスのことをいいます。90年代初頭にこうしたマウスをつくった例は世界でもあまりなく、日本人では初のケースでした」

そんな北村先生が、医学部をめざす受験生諸君に自身の経験を踏まえてのアドバイスもしてくれた。

「臨床医学に関しては、大学の医学部でさえあれば教育内容や施設に各校とも大差はありませんし、臨床医になるのに出身大学は大した意味はありません。要は個人の資質の問題で、向上心と誠実さがあればどこの医学部で学んでも良い医師になれると思いますよ」

こうした免疫学の世界的プロフェッサーからの言葉に勇気づけられる医大志望受験生も多いことだろう。

研究者リテラシーを身につけるための「勉強会」も開催

利根川運河から望む野田キャンパス

東京理科大学生命創薬科学科では、4年次から各教員の研究室に配属になり、1年間かけて卒業研究にいそしむ。

「研究室入りした学部生は、まず先輩大学院生たちの研究グループに入って見習いをします。3ヵ月ほどして研究や実験に慣れたところで、研究グループのテーマの一部を任されるようになります。そして、自らの研究テーマを設定して卒業研究に入るという段取りとなります」

なお同大生命創薬科学科の大学院進学率は8割を超える。
学生個々の研究や実験も1年間の卒業研究のためというよりも、3年先の修士課程修了までを見据えたものが多いそうだ。
こうした学生・院生に対する北村先生の指導方針について聞いてみると……

「自分自身の頭で考え、問題点を発見し、自分で解決方法を考え、自身で実行して解決していく。こうした研究者なら当然もつべき能力・リテラシーは少なくとも身につけてほしいと思って指導しています。問題点を見い出すことすら一方通行の講義ではほとんど体験していないことですから、まずそこから力を入れて指導しています」


「わたしの研究室では、勉強会というのを常に開いています。学部生を対象にした『学生勉強会』では、英語の論文を読みながら英文読解力や実験の基礎知識を学びます。院生以上は各自が選んだ論文をみんなの前で発表する勉強会で『ジャーナルクラブ』と名付けています。さらに研究室のメンバー全員が参加する『プログレスレポート』もあり、いずれも毎週1回ずつ開いています」

こうした指導の一端は、北村先生のWebサイトでもかいま見ることができる。
新入生へのアドバイスや含蓄の深いエッセーなど、現役高校生にとっても役立つ内容が満載だ。
ぜひ一度アクセスしてみてほしい。

こんな生徒に来てほしい

若者らしく発想力が豊かで、かつ辛抱強い学生に期待します。
単に感覚的なだけでなく、思考面でも柔軟で集中力の強い人ならより良いですね。
自己主張が強すぎるとか他人とは違う発想をしてしまうというような人のほうが、実は研究者向きな人であったりもします。
そういう人を大切にする社会というのが重要だと思いますね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。