早稲田塾
GOOD PROFESSOR

中央大学
総合政策学部 総合政策研究科

平野 廣和 教授

ひらの・ひろかず
1955年東京生まれ。’81年中央大学大学院理工学研究科博士前期課程土木工学専攻修了。’81年三井造船入社。’93年中央大学総合政策学部専任講師。’95年同助教授。’98年同教授。日本風工学会学会賞(論文賞・’05年)。主な著作に『震災と都市――阪神大震災をめぐって―』(中央大学出版部)『流体力学ハンドブック 第2版』(前著ともに共著・丸善)『データ処理入門「2010年度版」』(中央大学総合政策学部)などがある。
Web上の「平野研究室」のURLアドレスはコチラ→ http://www.fps.chuo-u.ac.jp/~hrsk/

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揺れを安全に止める「耐風工学」「防災科学」「橋梁工学」

平野研究室の入る「11号館B棟」正面
同じく「11号館B棟」(建物の横側から)

中央大学総合政策学部の平野廣和教授がこれまで成してきた仕事は、そのどれもが大きなスケールだ。成してきた仕事のスケールも大きい。

「前職の造船会社勤務時代には、大鳴門橋をはじめ下津井瀬戸大橋や明石海峡大橋・来島海峡大橋など長大橋梁の耐風設計業務【注1】に従事しました。本四架橋3ルートすべて従事できたわけですが、いずれもかなりシンドイ現場でしたね」

さらに、95年に阪神・淡路大震災が発生する。
すでに中央大学助教授職にあった平野先生だったが、神戸市にあるJR六甲道駅舎の復旧工事の陣頭指揮を執ったりもする。

「長大橋梁の耐風設計と震災の復旧工事を経験して、揺れているものをいかに安全に止めるか? それが今のわたしの研究テーマになりました。専門的には『耐風工学』『防災科学』『橋梁工学』それに『環境シミュレーション』となっていますが、どれも揺れているものをいかに止めるか? そのテーマから派生したものばかりです」

宇宙開発実験のひとつに、重量5トンの無人カプセルを700メートルの高さから自由落下させて無重力状態をつくるというのがある。
問題は落下してくるカプセルを700メートル下でどのように軟着陸させるかだが、この装置も平野先生が考案した。

「わたしが考え出したのは、じつは自動車のエンジンピストンがシリンダーに入る原理と同じなのです。カプセルがストッパー装置に入ると空気の圧縮でブレーキがかかり、同時にその空気を抜いていって速度がゼロに近づいたところで、ディスクブレーキがつかんで止めるという方式にしました。最終的な実験は炭鉱の廃縦坑【注2】を利用しましたが、これは大成功でしたよ」

この装置を「空気制動層」と呼ぶのだそうだ。
「まぁとにかく、造船会社で働いていると様々なことが経験できて面白かったですよ」
そう言って笑顔をみせる平野先生であった。

中央大学の教員に転身してからも、平野先生は民間企業とのさまざまな共同研究開発に取り組んでいる。
高速道路における渋滞監視カメラ画像のブレを防ぐ「防震ダンパー装置」や、地震の影響で火災を引き起こす懸念のある「浮き屋根式石油タンク」のスロッシング現象を減衰させる装置【注3】、さらに長大橋梁における車や列車走行音の防音壁――等々スケールの大きなものが並ぶ。
いずれも世界初の装置・システムであることは言うまでもない。

文字どおりの文理融合が日々実践されていく総合政策学部

多摩キャンパス全景
広々とした多摩キャンパス新校舎群

その平野先生ご自身がいま、大学で所属しているのは総合政策学部である。
この学部は「政策」「文化」「外国語」「情報」を学びの4つの柱として掲げる学際的な学部として知られる。
中央大学総合政策学部のアピールポイントについて先生に語ってもらった。

「まずは間口の広い学部であるということですね。経済や経営から法律・文化人類学・歴史学・美術史それに理工系まで、非常に幅広い分野について学ぶことができます。たとえば、わたしの専門は理工系なのですが、その研究室にも多くの文系の学生が学んでいて、なかには理系の大学院に進んで工学の博士号に挑戦している人もいます。文字どおりの文理融合が日々実践されているのが、この学部だといえるのではないでしょうか」

そもそも大学受験時に文系か理系か二者択一を強いるのは無理があるというのが平野先生の持論でもある。

「たかだか17、18歳で、その後の人生を左右するような決断ができるのか? あるいはその決断を迫るのは酷ではないかと思うのです。むしろ、それからの人生のほうが長いわけですから、大学の4年間で自分の可能性をいろいろ探ってほしい。それに打ってつけなのがこの学部だといえます」

先に挙げられた文系で入ってきた学生が理系才能を開花させた例や、あるいはその逆の例もあって、それらもこの総合政策学部の特徴だろうという。

なお平野先生は「中央大学キャリア教育委員長」の職にもあって、2010 年度から全学にキャリアデザイン科目を導入させている。
時あたかも文部科学省から大学キャリア教育の必要性の示唆があり、中央大学ではそれを先取りする形にもなった。

「ゆとり世代」にも親身に向き合ってくれる一生モノのゼミ演習

多摩キャンパス4号館「クレセントホール」
多摩都市モノレール「中央大学・明星大学駅」

つぎに総合政策学部での専門ゼミ演習について聞いた。
同学部では2~4年次学生が専門ゼミの対象になり、平野先生の研究室では例年各年次6人ほどのゼミ生を受け入れている。

「わたしのゼミでは、2年次ゼミ生には風車とソーラーパネルを組み立てて、風力発電の装置づくりをやってもらいます。3年次ゼミ生にはキャンパス内人工池の水質の検査と管理、4年次ゼミ生は毎年度テーマを変えて、昨年度は夏の打ち水効果の検証をテーマにしました。さらに4年次には卒業論文の作成もあります」

こうした装置づくりや検査管理・検証などに文系出身も多いゼミ生たちがどう関わってくるのか? 個人的にもとても興味深かったと平野先生は語る。

「とくに人工池の水質検査は1年間継続しなければならなくて、水質管理については夏に藻が発生するから水抜きして掃除をしなければなりません。ところが、みんな率先して検査や管理の作業をしてくれます。とくに文系のゼミ生ほど楽しそうにやっています。彼らは"ゆとり教育世代”のいわば第1期生で、理科の授業で計測などしたことがないらしく、そういう意味でも非常に新鮮なのかもしれませんね」

こうしたことから理系の学問領域に目を開いていく文系ゼミ生も少なくないという。
あらためて学生たちに対する平野先生の指導方針についても話してもらった。

「元気のある学生で、自分自身のことをきちんと語れる人を育てたいと思っています。そのために個々の学生とよく話し合うことをモットーにしています。それによって年長の人や上司との会話の訓練にもなって、就職活動における面接や卒業後に仕事に就いたときに役立てばという想いからです。こうしたことは一夜漬けでは身につきませんからね」

【注1】耐風設計業務…建物や橋といった建築物が台風などの強風災害に耐えられるかどうかを計算し、設計に反映させる業務。建築物が大きくなり形状が複雑になるほど耐風設計は難しくなる
【注2】廃縦坑(はいたてこう)…使われなくなった炭鉱内の垂直に掘った坑道のこと
【注3】「浮き屋根式石油タンク」のスロッシング現象を減衰させる装置…ナベに落としぶたを置いたような「浮き屋根式石油タンク」は、やや長周期の地震の波長に共振し、タンク内の石油が大きく揺れてしまう現象=スロッシング現象=を起こすことがある。浮き屋根が大きく傾くとタンクから気化した石油があふれ出し、大火災の原因となる。平野先生は「揺れているものをいかに安全に止めるか?」という自分の研究テーマに当てはまる課題であることに気づき、その対策に取り組んだという

こんな生徒に来てほしい

一生をかけて自分は何をやりたいのか? それを早く見つけてほしいですね。
いま高校で学んでいることの中にも必ずやりたいことの何かキッカケがあるはずです。
それを早く見つけることが重要です。
それは案外身近なところにあったりもします。
受験生というのは、ややもすると狭くて視界の悪い「タコ壺」に入ってしまいがちです。
そこから一歩出てみて、広い視野で人生や世の中について眺めてほしいと思います。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。