早稲田塾
GOOD PROFESSOR

立教大学
コミュニティ福祉学部 コミュニティ政策学科(コミュニティ福祉研究所所長)

福山 清蔵  教授

ふくやま・せいぞう
1948年鹿児島県生まれ。’73年立教大学大学院文学研究科教育学専攻修士課程修了。’79年立教大学文学部助手。’88年同助教授。’95年同教授。’98年同大学コミュニティ福祉学部教授。’09年コミュニティ福祉研究所所長。著作は『入門カウンセリングワークブック』『お母さんはカウンセラー』(前著ともに日本・精神技術研究所)『電話相談の実際』(共著・双文社)など多数。
Web上の「福山研究室」のURLアドレスはコチラ →http://www.rikkyo.ne.jp/web/z3000135/index.htm

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ニッポンの自殺・虐待を根源的になくすには

福山研究室のある新座キャンパス5号館
ゼミではグループワーク形式が基本

今週ご紹介する一生モノのプロフェッサーは、立教大学コミュニティ福祉学部コミュニティ政策学科の福山清蔵教授である。
まずは同学部と学科の特徴から話していただいた。

「大学の福祉学部といいますと、福祉や心理の専門職の国家資格取得をめざして学ぶところだと思われがちです。ところが本学は福祉の前にコミュニティという語がついていまして、福祉についてもっと広い視点でとらえようという狙いがあります。つまり福祉の対象者を高齢者や障害者・生活困窮者に限定するのではなく、従来の福祉についての概念にとらわれない教育や研究に取り組むという思想がベースになっています」

立教大学コミュニティ福祉学部のなかで、所属する「コミュニティ政策学科」については次のように語る。

「これも普通の政策学科ですと、行政学や政治学・法学などを学ぶ学科をイメージされると思います。本学の場合は、やはりその前にコミュニティという語が付いており、人の生活や共同体のあり方などについて教育・研究することが主眼になっています。そのため多様な研究領域の先生方が所属され、自治体の政策やNPO・NGO活動の研究を専門とする先生をはじめ、社会学や心理学・経営学・宗教思想・宗教心理学などの先生方までもがおります」

さらに特徴的なのは、コミュニティ政策学科のゼミ演習の充実ぶりだ。
1年次の基礎演習から、2年次の必修ゼミ、3年次の専門ゼミ、4年次の卒業論文ゼミへと続き、全学年に切れ目なくゼミ演習が用意されている。

さて、福山先生ご自身の専門分野について具体的にお聞きしていこう。
まずは、これまでの研究領域の変遷から伺った。

「わたしの本来の研究テーマはカウンセリングでした。11年前にいまの学部と学科が立ち上げられ、そこで福祉とカウンセリングをつなぐテーマとして、児童虐待について研究するようになりました。現在、養護施設に保護されている児童の7割が虐待経験のある被害児だとさえ言われております。そのような児童が受けた心の傷をどう癒やしてケアするのか? こうしたことを臨床心理学の立場から研究してきました」

これらに加えて、災害被害者の心の問題、あるいは年間3万人を超えて推移する自殺者の問題などにも関心を寄せ、それらも研究テーマとしてきた。

コミュニティ再構築なくして自殺・虐待の予防はない

立教大学新座キャンパス
新座キャンパスの中心・1号館

福山先生を語るうえで欠かせないのが、教職とは別に中心的に関わってきた「いのちの電話」(東京)のボランティア活動である。
大学院修了時から活動するようになり、今年で38年目になるそうだ。
ここでは電話相談員の養成と訓練という役目を担っているという。
過去には、17年間にわたって訓練委員長を務めたこともある(現在は理事)。

「3年前にコミュニティ福祉学部のカリキュラムが大幅に見直され、その機会にわたしは『コミュニティサポート論』という科目を立ち上げました。これは自殺予防について考える科目で、この種のものが日本の大学で講じられるのはおそらく初めてのことではないかと思います」

これより前に先生は1冊の本と出合っている。
親が自殺をし、残された子どもたちの手記を集めたもので、そこには心に深い傷を負った子どもたちの姿が綴られていた。
この本に心を打たれた先生は、そうした子どもたちをつくり出さないためにも自殺の予防が大切だという考えに至り、「コミュニティサポート論」の科目新設へと結実したのだ。

「それまで自殺予防は医師やカウンセラーの役目だと考えられ、うつ病など精神障害への治療方法などについて論じられるばかりでした。それよりも前の段階を重視するのが私の立場になります。つまり、うつ病の罹患・発症を予防することこそが自殺防止につながるという考え方、さらには周りのコミュニティの人々が支えていくことが大切という考え方ですね。こうした考えに至ったのは、それまで研究してきたコミュニティや福祉における心理学などが、自殺予防の問題を中心にして一つにつながったからなのです」

福山先生の投じたこの根源的な一石は、いまや大きな波紋となって広がりつつある。

卒業生をも巻き込んだ「人とのつながり」のなか福祉を学ぶ

新座キャンパス図書館
キャンパス内にあるチャペル尖塔

立教大学コミュニティ政策学科のゼミ演習が、1年次から4年次まで全学年で用意されていることは前述した。
福山先生ご自身は2年次から4年次までのゼミを受け持っている。

「2年次は必修ゼミで、フィールドスタディーが中心です。わたしのところでは教室内でのグループワーク形式にしています。これは学生同士の距離を近づけるために、みんなで協力しないと前に進まないグループワークをわざと採用しているのです。3年次はさらに少人数のグループにして、それぞれでテーマを決めて討議しリポートにまとめてもらいます。さらに各グループによるゼミ論文の提出も義務づけています。グループワークにこだわるのは、そのほうが力を伸ばせるとも思うからです。4年次になると1年間かけて個別の卒論の作成ということになります」

福山ゼミで特筆すべきこととして、OB・OGの協力が絶大なことは挙げざるを得ない。

「わたしのゼミの夏合宿は2年次の学部生から大学院生や卒業生までもが参加して、総勢50人以上になります。OBたちには病院の精神科勤務の人やスクールカウンセラーをしている人などがいて、彼らが合宿中のプログラムを考えてくれています。学部生にとって社会人である卒業生らと話し合える合宿はいい刺激と経験になっていますね」

3年次が作成するゼミ論文にも、卒業生たちからコメントを寄せてもらってもいるという。
あらためて学生たちへの指導方針については次のように語る。

「いまの学生からは、横のつながりが希薄になっていることを感じますね。互いに遠慮なく話し合えて人と人がつながることの愉しさは、学生時代にぜひ体験すべきと思い、本来の研究以外にも各種のイベントなどを積極的に催すように仕向けているわけです」

こんな生徒に来てほしい

わたしたちの学部は単なる福祉系の学部ではありません。
これまでのように、手助けを必要としている人々への援助についてだけでなく、災害被災者や家族の問題などまで広い視点から研究しています。
たとえ高校生であっても、社会というものは様々な人々の支え合いによって成り立っているということは理解していてほしい。
そして、そうしたことを大切にして生きていけるセンスをもった人にぜひ来てほしいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。