早稲田塾
GOOD PROFESSOR

慶應義塾大学
文学部 図書館・情報学専攻

岸田 和明 教授

きしだ・かずあき
1964年東京生まれ。’91年慶應義塾大学大学院文学研究科図書館・情報学専攻博士課程中退。’91年図書館情報大学図書館情報学部(現筑波大学図書館情報専門学群)助手(文部教官)。’94年駿河台大学文化情報学部助教授。’02年同教授。’06年より現職。この間’01~’08年国立情報学研究所客員助教授および教授(兼任)。’04~’10年放送大学客員教授(兼任)。著作は『情報検索の認知的転回:情報捜索と情報検索の統合』(共訳・丸善)『情報検索の基礎知識・新訂版』(共著・情報科学技術協会)『情報検索の理論と技術』(勁草書房)など多数。
岸田先生が主宰する「岸田和明 HOME」のWebアドレスはコチラ →
http://www.slis.keio.ac.jp/~kishida/index-j.html

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人間的にアプローチする「情報検索」とは

岸田研究室のある「研究室」棟
慶應のシンボル・図書館旧館

慶應義塾大学文学部には「図書館・情報学」というユニークな専攻がある。
同専攻のOBで現教授でもある岸田和明先生が今回紹介する一生モノのプロフェッサーだ。
最初に、所属する図書館・情報学専攻の特徴から伺っていこう。

「図書館・情報学といいますと、日本ではあまり馴染みのない学問分野ですが、欧米やお隣の韓国などでは広く研究されています。本学に図書館学科が開設されたのは1951年で、戦後アメリカの指導によって開かれたものです。さらに’68年からは情報学も扱うようになって、図書館・情報学科になりました。学科名に『図書館』『情報』が付いたのはわが国の大学ではここが最初でして、その歴史的な伝統は自負するところですね」(その後2000年に文学部の改編があり、学科から専攻になる)

学科発足当時「情報」といえば、ほぼすべてが図書館に集積され、図書館から発信されるものでもあった。

「コンピュータそしてインターネットの出現によって、情報=コンピュータというのが主流になってきました。ですが、個人的な見解としては、情報探索行動を人間的な側面から研究しているのがこの専攻の大きな特徴ではないかと思っています」

海外資料に自由にアクセスできる「言語横断検索システム」

現在の「慶應義塾図書館」

岸田先生自身のご専門は「情報検索」と「図書館評価」である。まずは「情報検索」についてご説明いただいた。

「人々が必要な情報をコンピュータにより引き出す仕掛けが情報検索です。高校生のみなさんにも『Google』『Yahoo』などでおなじみの、サーチエンジンのことですね。この情報検索システムについて、速く動作させてきちんと機能させるためにはどうしたらいいのかを研究しています」

岸田先生は文学部教授であり、こうした研究は工学的ハードウェア面というよりも、ソフトウェア面からのアプローチが主だ。その最新の研究成果に「言語横断検索システム」の開発がある。

「これは英文の論文などを検索したいときに、日本語のキーワードを入力しても引き出せるシステムのことです。わたしもこの研究の一端に加わっているわけですが、現在その手法の検証を終えて実用化を待っているところです。すでに特許に関連するものは実用が始まっています」

英語を苦手とする人にとっては、この言語横断検索システムの実用化は大きな朗報になろう。
岸田先生のもう一つのご専門は「図書館評価」である。

「これは図書館の業務機能やサービスについて評価しようという試みです。といいましても、図書館について公正な評価をするのは案外にむずかしいことです。いかにしたら公正な評価が効率的にできるのか? その方法論について統計学的な観点から研究しています。具体的には、それぞれの図書館利用者にアンケート調査をして満足度を数値化する方法、あるいは蔵書の貸し出し記録から評価を測る方法などを研究しています」

日本全体の図書館評価の実態については、全国公共図書館協議会によって’08年から’09年までの2年にわたって大々的に調査された。
その中心的なアドバイザーを務めたのが岸田先生である。

「実際に評価の実態を調査したのは協議会の委員の方たちで、わたしはその方法について助言するという立場で参加しました。それぞれの図書館の個別性は、その立地(都市部か農村部か)などによって違ってくるので、それに応じて評価計画を立てる必要があるようです」

このほか、最近では「電子図書館」における情報検索システムのあり方についても研究しているという。

だれもが納得する根拠・データを示す実証的研究が基本

中庭奥の南校舎は建て替え中

慶應義塾大学図書館・情報学専攻の専門ゼミ演習が始まるのは3年次後期からで、例年各研究室とも5~10人程度でゼミは行われている。
学生定員50人ほどに対し教員スタッフが充実している同専攻ならではのことであり、学生には非常に恵まれた環境といえよう。
その岸田ゼミの運営手順については――

「わたしのゼミでは、まず3年次の半年間をかけて『研究とは何か』をレクチャーしています。実際の論文を輪読しながらディスカッションを重ねて、『研究とは何であるか』『研究にはどんな方法があるのか』などを身に付けてもらいます。4年次の4月末までには各自の卒業論文のテーマを絞り込んで、研究に入るという段取りになります。卒論のテーマはゼミ生自身に自由に決めてもらいます。いろいろ悩み考えながら自らテーマを決める過程こそが重要だと思うからですね」

慶應義塾大学図書館・情報学専攻での卒論は個人研究であることが決まりで、グループ研究は認められていない。

「図書館・情報学専攻での卒論は実証的な研究であることが重視されています。単に文献を集めて引用しただけでは論文として認められません。できるだけ多くのデータを集めつつ、それを詳細に分析したうえで、実証的に自分の主張するところを訴えるというのが基本になります。何かを主張するときには、他の人々が納得する根拠で示すのが大切だということです。その場合、客観的なデータで示すことが一番説得力のある根拠になりますね」

岸田先生が学生指導で心掛けていることについては次のように語ってくれた。

「まず、自ら考えて研究実践していく自主性を育てること、それこそが私の指導方針といえましょうね。困難にぶつかったときなど私のほうからも助言はしますが、困難を克服する主体は学生自身であると教えています。ですから、あえて手取り足取りという指導はしていません」

こんな生徒に来てほしい

大学に進学するからには4年間しっかり学ぼうという人に来てほしいですね。
入学早々からサークル活動やバイトばかりに精を出して、勉強は二の次というのでは困ります。
4年間で何かをつかみ取るんだという気概がほしいです。
そのうえで図書館学や情報学について興味をもつ人に来ていただけると、なお結構ですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。