早稲田塾
GOOD PROFESSOR

芝浦工業大学
システム理工学部 電子情報システム学科

井上 雅裕 教授

いのうえ・まさひろ
1954年東京生まれ。’80年早稲田大学大学院理工学研究科物理および応用物理学専攻博士前期(修士)課程修了。’80年三菱電機入社。研究所・研究開発センターなど勤務。’05年同社退職。この間’90年米ミシガン大学人工知能研究所客員研究員。’05年芝浦工業大学システム工学部教授。’09年より現職。博士(工学)・技術士(情報工学)。特許取得国内33件・海外4件。著作に『プロジェクトマネジメント・ツールボックス』(共監訳・鹿島出版会)、『電気工学ハンドブック 第6版』『ホームエレクトロニクス』(前著ともに分担執筆・電気学会)がある。井上先生の研究室「組込みネットワークシステム研究室」のURLアドレスはコチラ→
http://www.eis.se.shibaura-it.ac.jp/prof/?name=m.inoue

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「組込みシステム」研究の総合パイオニア

井上研究室のある5号館建物
芝浦工業大学大宮キャンパス全景

現代の最先端領域のプロジェクトや製品の開発事業では、各種の専門領域を横断的
に総動員して進められることが多い。
こうした手法を工学的に「システム工学」といい、芝浦工業大学システム理工学部はこのシステム工学を本格的に学ぶことができる学部として特筆される。

「システム理工学部は5つの学科から成っていますが、システム工学と情報処理を全学部で共通に学ぶのが大きな特徴です。つまり学生たちは所属する学科の専門知識を深く学ぶとともに、システム構築のための方法論やコミュニケーション、チームワーク、プロジェクトマネジメントなどについても広く学ぶことになります」

そう語るのは芝浦工業大学システム理工学部電子情報システム学科の井上雅裕教授である。

システム理工学部ではこれらを学生が無理なく修めるために、実践演習授業を先行させ、その後に理論を解説する講義で理解させ、さらにその理論を活用する演習を実施するユニークな方式を採用している。
これは教える側にとって工夫を強いられる面もあるが、学ぶ側である学生たちには技法と理論が実感できるとして好評だそうだ。

次いで井上先生が所属する電子情報システム学科の特徴についても伺った。

「電子情報システム学科では、携帯電話端末などに代表される電子情報システムについて学びます。たとえば携帯電話はハードウエアとソフトウエア、通信機能、画像処理などで構成され、ソフトウエアのプログラムソースコードは600万~1000万行にもなります。この学科ではこうした電子情報システムについて、ハードとソフトの両面から幅広く学べるのが特色です。選択科目の組み合わせ方によっては、ハード中心(あるいはソフト中心)のカリキュラムで学ぶことも可能です」

どこまでも学生目線に立って学ぶ意欲を促す工夫がされているといえよう。

近未来をめざす「組込みシステム」ネットワーク化

「第1学生クラブハウス」建物
「2009飛行船ロボコン」で芝浦Navi’は総合優秀賞を受賞

その井上先生のご専門はシステム工学における「組込みシステム」と「プロジェクトマネジメント」だ。
前職の電機メーカー所属時代から両テーマの研究に長年携わってきた。
その双方分野の日本における第一人者として定評がある。

「組込みシステムとは情報処理機能を個別に内包させたシステムのことです。自動車や携帯電話をはじめ、近年開発されている電気・機械関係の製品の大半にはコンピューターが内蔵されています。組込みシステムでないものを探すほうが大変なくらいです」

現代工業製品のほとんどが組込みシステム化されている中にあって、これからの課題はそれらシステム製品間のネットワーク化である。

「すでにゲーム機や携帯電話、あるいはエアコンとテレビが同じリモコンで操作できるなどのネットワーク化が図られています。身のまわりにある組込みシステム機器のネットワーク化をさらに進めて、防災を含めた安心・安全な生活に貢献できるトータルシステムの構築をめざしています」

井上先生の視線の先には、近未来型「ユビキタス社会」までもがしっかりと見据えられている。
もうひとつのご専門である「プロジェクトマネジメント」は、より実践的なプロジェクトを推進するための、教育指導方法についての研究となる。

学生教育に懸ける並々ならぬ研究室とゼミへの指導

「ニュートンリンゴの木」の穂木を接ぎ木したもの(手前)
ちょうどキャンパス内の桜が満開であった

組込みシステムやプロジェクトマネジメントの最先端研究で知られる井上先生は、その学生指導に懸ける情熱にも並々ならぬものがある。
たとえばプロジェクトマネジメント指導では、アメリカ製の人材育成ソフトを取り寄せ、それを井上先生流にアレンジして応用使用している。

「プロジェクトマネジメントの指導において、工程計画やコスト計画などは比較的教えやすいのですが、リーダーシップ理論などは口頭で指導しても実感として伝わりにくいものです。会議などでリーダーシップを発揮するためにはどうすればいいのか? 会議を場面にしたシミュレーションソフトを使用してリーダーシップの発揮を仮想環境で体験し、実際に研究室での活動で実践します。この演習の開始前と終了後に『自己』『同僚』『教員』の3者でリーダーシップの発揮度を評価していますが、教育効果としては上々ですね」
(現在のところ「シミュレーション会議」の指導は大学院生以上で、学部生には理論の講義だけがなされている)

システム理工学部電子情報システム学科の学部生の研究室配属は3年次末の2月から。
井上研究室の受け入れは毎年6~7人だが、希望者は10人を超えるため選抜になっている。

「選抜は、わたしと研究室の学生全員との面接で選抜しています。今年度の採用学生決定については両者の評価がピタリと一致しました」

また井上研究室では週2回全員参加のゼミ演習を開いて、各自の研究について、報告とディスカッションが行われる。
毎回のゼミ内容を交代でサーバー上に記録するのが学部生たちの役目ともなる。

「年度初めのころなど、先輩大学院生たちの研究内容や専門用語が分からないために全くゼミ記録の体をなしません。そこで次のゼミでは、皆で前回のゼミの記録内容を確認して、間違えている記録や理解していない記述を直していきます。これを毎回繰り返すことで、自分自身の研究分野のことばかりでなく、他メンバーの研究内容についての理解が深まっていきます。ひいては研究室全体のディスカッションが非常に活発になってきますね」

そうした指導のもと、井上研究室のメンバー6人(大学院生を含む)からなる研究チーム「芝浦Navi’」が昨年快挙を成し遂げた。

「芝浦Navi’」は飛行船のハードおよびソフトウエアを独自開発し、実モデルによる自律航法にも成功。
’09年10月に開催された「飛行船ロボコンテスト」(情報処理学会主催)で、みごと総合部門「優秀賞」を受賞したのだ。

「この飛行船の自律航法には、システム工学と組込みシステム、それにプロジェクトマネジメントまで、この研究室のすべてが凝縮して生かされています。それが評価されただけに私自身にとっても大変うれしい受賞でした」

こんな生徒に来てほしい

物事に対して積極的に取り組める人ですね。そのためには前向きであること。研究や実験には失敗がつきものです。失敗をポジティブにとらえることが出来ること。失敗や壁は人間を成長させてくれます。また、仲間たちと共同研究していくための人間性もぜひ持ち合わせていてほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。