早稲田塾
GOOD PROFESSOR

首都大学東京
システムデザイン学部 情報通信システムコース

貴家 仁志 教授

きや・ひとし
1957年山形県生まれ。’82年長岡技術科学大学大学院工学研究科電子機器工学専攻修士課程修了。’82年東京都立大学(現首都大学東京)工学部電気工学科助手。’93年同電子・情報工学科助教授。’00年同大学院工学研究科電気工学専攻教授。’05年改組により現職。この間、’95年豪シドニー大学客員研究員。現在、電子情報通信学会次期ソサイエティ会長。アジア太平洋・信号情報処理学会副会長。電子通信情報学会最優秀論文賞(’08)。同学会フェロー。
著作は『ディジタル画像処理』『ディジタル信号処理』『マルチレート信号処理』(いずれも昭晃堂)など多数。
Web上の「貴家・西川研究グループ」のURLアドレスはコチラ →
http://www-isys.eei.metro-u.ac.jp/Members/kiya

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デジタル技術による映画システムの世界的研究

貴家研究室のある日野キャンパス1号棟
首都大学東京日野キャンパスの正門

今回紹介するのは、デジタル信号処理の世界的エキスパートとして知られる、首都大学東京システムデザイン学部教授の貴家仁志先生である。
専門分野の話を聞く前に、貴家先生自身が所属するシステムデザイン学部の「情報通信システムコース」の特徴から伺った。

「情報通信システムを物流にたとえますと、物流における航空や陸上・海上などの輸送路のインフラに相当するのが、インターネットや無線になります。物流において飛行機や自動車・船舶に相当するのが、コンピューターや携帯電話となります。運搬する荷物のほうはコンテンツやメディアということです。つまり、情報通信システムはこの3つの柱から成っているのです」

首都大学情報通信システムコースの最大の特徴は、その3つの柱が同時に学べることである。

「将来IT関係の専門家になるにしても、この3つの柱を学んでおくことが大切になります。自動車をつくるのに、積載する人や荷物や道路の構造などを知らないわけにはいきません。情報通信システム分野でこの3つの柱について学ぶ上でも、同じことがいえます」

そう語る貴家先生の専門分野「デジタル信号処理」についても聞いていこう。
まずは「概論」からである。

「わたしが研究している信号処理では、『情報』を、自然界にある音声とか振動なども含めたものとしてとらえていきます。それら『情報』は、すべて電気的な信号に置き換えられて処理されていきます。ですから、情報が電気的な信号として通信されるときは、さらに別の信号に乗せられて運ばれます。つまり、情報通信とは『波(信号)を波で(信号)で運ぶもの』といえるのです」

貴家先生は、デジタル技術による映画システムの研究開発を手がけてきたことで世界的に知られ、この分野ではトップリーダーとしての地歩を築いている。

「映画のデジタル化というのは信号処理の大規模実験工場ともいえます。映画は先端的でありながら、歴史的・伝統的な面もあります。ほかのコンテンツに比べても、製作や上映において、ある意味ぜいたくさが許容される面があります。それでいて編集処理ではチャレンジ性も要求される面もあって、研究対象としてもコンテンツとしても大いに興味深いですね」

困難を前にすればするほど研究意欲もどんどん湧いてくる

首都大学日野キャンパス全景
2号館建物

いま貴家先生は、この映画コンテンツを製作から編集・配信・上映までデジタル化させて一元管理する、総合システムの構築という壮大なテーマに挑んでいるという。

「ただし映画のデジタル化については、画像の高品質の確保、膨大なデータを送信するときの圧縮および伸張技術、著作権あるいは情報セキュリティー問題など、解決しなければならない課題も山積しています」

このうち膨大なデータをいかに圧縮して送信するのか? その技術処理がいちばん頭を悩ませるところだという。

もうひとつ、貴家先生の研究テーマには「情報のラッピング(包装)」がある。

「基本的にデジタル情報とは『0』と『1』からなる粒で出来ています。これらを送信したり記憶させるためには、圧縮(あるいは暗号化)させてラッピングする必要があります。現行の方式では、ラッピングされた情報の一部分を見たり加工しようとすると、ラッピング全部を解かなければなりませんでした」

ラッピングを解くと、コンテンツは丸裸の無防備の状態になってしまう。
さらに、中身のコンテンツ情報が壊れたりするリスクが高まるという問題も発生してくる。

「そこで情報をラッピングしたままの状態で、検索したり加工したりすることが出来ることが望まれます。これらの問題は映画デジタル化のセキュリティー問題とも関連します。現在の研究レベルとしては、いくつかの特別な場合には成功しており、それをすべてのデータに対して適用できるように研究を続けている段階です」

この分野で世界的なリーダーとして活躍する貴家先生の前には、前人未到のさまざまな研究分野が待ち構えているのだろう。

前人未到テーマを研究する「禁断の木の実」を味わってほしい

日野キャンパスにはモダンな校舎が多い

首都大学東京「情報通信システムコース」の学部生は、3年次後期から各教員主宰の研究室に配属になる。
ただ、3年次では「研究室インターンシップ」という仮配属の制度である。
これは各研究室の雰囲気や研究に慣れることを目的とした制度である。

「正式な配属は4年次からで、その1年間をかけて卒業研究に臨みます。各研究室とも例年4~5人の学生を受け入れています。どうしても学生が配属を希望する研究室にばらつきが出てきますが、学生同士の自主的な話し合いによって各研究室とも平均的に割り振られていくことになります」

貴家研究室での卒研のテーマ決めにあたっては各自の希望テーマが尊重される。
各希望課題に沿った大学院生の研究グループに属して、それぞれ研究に励む。

学生たちへの指導方針について貴家先生は次のように語ってくれた。

「自ら研究したり調査したりすることの面白さを伝えたいと思っています。特にまだ世界でだれも知らないことを発見する喜びを伝えたい。もれなく研究することの愉しさを知る『禁断の木の実』を食べさせてあげますよ」

貴家先生はそう呵々大笑してから、こうも続けた。

「学生それぞれに備わっている『心のスイッチ』を入れてあげたいですね。この大学・研究室に来なかったら、こんな研究対象に興味など持たなかっただろうというような。そう思えるだけでも、若き貴重な日々を大学で過ごす価値には十分になるはずと信じます」

すでに貴家先生のもとから17人のドクター研究者が育っているという。

こんな生徒に来てほしい

いろんなことに興味をもって感動できる豊かな感性のある人ですね。
情報通信の分野は技術変化が激しい世界ですから、つねに次のヒントを探し続けられる人でなければなりません。
また、情報はリアルタイムにボーダレスに飛び交っていますから、自分とは異なる思想や文化・伝統を受け入れられる柔軟な感性も必要になります。
これまで情報というと、1人でPCに向かっているイメージがありますが、じつは異文化とのコミュニケーションがとれる高い能力をもった人材こそが求められているのです。
わたし個人としてはそういう人に来ていただきたいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。