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GOOD PROFESSOR

法政大学
理工学部 機械工学科

新井 和吉 教授

あらい・かずよし
1961年東京生まれ。’85年法政大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了。’88年東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻博士課程修了。’88年横浜国立大学工学部助手。’93年日本大学生産工学部助手。’95年法政大学工学部機械工学科専任講師。’96年同助教授。’02年同教授。’08年学部改組により現職。
この間’02年豪シドニー大学在外研究。日本機械学会畠山賞(’83年)。手島工業教育資金団研究奨励賞(’89年)。日本材料科学会論文賞(’89年)。同前学会末澤賞(’94年)。
主な著作に『高圧ガス保安技術』(高圧ガス保安協会)『最新 ミキシング技術の基礎と応用』(三恵社)『材料の科学と工学』(裳華房)などがある(著作はいずれも共著)。
新井先生が主宰する「複合材料研究室」のURLアドレスはコチラ →
http://www.a.k.hosei.ac.jp/

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宇宙開発の未来を救う世界初の新構造材

新井研究室のある「研究実験棟」
現在建設中の新「研究実験棟」

宇宙といえば夢と冒険のロマンに思いをはせる人は多くないだろうか。
しかし、じつは宇宙空間には超高速で周回するおびただしいスペースデブリ(宇宙ゴミ)が存在し、その衝突を回避しながら人工衛星や宇宙船は飛行しているのだそうだ。
ロマンどころか一触即発なのだという。

この「宇宙ゴミ問題」を専門的に研究しているのが、法政大学理工学部機械工学科の新井和吉教授である。
この分野におけるわが国の第一人者だ。

「’57年に旧ソ連が打ち上げた人工衛星スプートニク以来、今日までにロケットが約5000回、人工衛星では約500個が打ち上げられています。その大半は寿命が尽きてスペースデブリとなり果てています。あるものは原形のままで、あるものは衝突による粉砕破片となって超高速で周回しているのです。その低軌道の周回速度は7.6~7.8km/秒といわれています」

そう説明しながら新井先生は、実際の衝突実験に使用した宇宙用構造材のアルミニウム合金の板を見せてくれた。
この合金に0.66gのデブリを6km/秒の速度で衝突させると、デブリは宇宙船を覆う1.2mm厚のバンパー合金を貫通し、宇宙船本体の4.8mm厚の壁合金にも径約2cmの穴をあける。
船内気密が第一の宇宙船にとっては致命的な大事故につながりかねないことになる。

「現在の技術レベルでは10cm以上のデブリであれば、地球上ですべて捕捉してデータベース化しています。問題はそれ以下の無数の小さなデブリの存在です」

バードストライク対策や野球用ヘルメットへも応用

法政大学小金井キャンパスの正門
高速衝突実験機の説明をする新井先生

そのため新井研究室では、10cm以下のデブリ衝突について、宇宙用構造材の材質を換えながら実験とシミュレーションを繰り返している。
当然ながら、新井先生の研究項目には宇宙用新構造材の創製も含まれる。

「いま主に使用されるアルミ合金はすぐれた素材ですが、さらに良い素材を求めて研究しています。次世代の素材としてはカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)が有力で、現在種々の改良が加えられているところです。宇宙用の構造材は軽量であること、250度に及ぶ温度差にも耐久性を発揮すること、それにデブリとの衝突があってもダメージの少ないことなどが求められます」

すでに新井研究室では、CFRPに、ある液体を加えることで防御性能の向上がみられることを発見している。
もちろん世界初のことだ。

なお新井先生は、このデブリ衝突の研究から派生して、航空機のバードストライク(鳥衝突)や野球用ヘルメットの衝突についての研究もしている。
いずれも人命にかかわる貴重な研究の数々になる。

「すべては安心・安全のためのモノづくりになります」

そう新井先生は語る。

基礎から最先端分野までチームで取り組める技術者を

この機器で衝突シミュレーションをする

つぎに新井先生が所属する法政大学理工学部と機械工学科について、その特徴などを伺った。

「理工学部は、旧来の学科別縦型のカリキュラムから学科横断型の学際的カリキュラムになっています。つまり、学生は他学科の科目であっても多くの科目が自由に履修できるのです。いまや車をつくるのに機械工学の知識だけでは十分ではありません。電気・電子やシステム工学・経営コストについても知らなければなりません。そうした時代の要請によるものですね」

法政大学理工学部は「機械工学科」「電気電子工学科」「応用情報工学科」「経営システム工学科」の4学科からなる。
機械工学科の学生でも、電気電子工学科や応用情報工学科・経営システム工学科の講義を自由に受けられるのだ。

つづいて新井先生の話は機械工学科そのものの特徴に移っていく。

「まず、座学と実習の緊密な連携が挙げられます。教室で学習したことを、実際の機械に触れたりモノをつくったりして実感できることですね。また機械工学は、工学の基礎的な分野を担うとともに最先端分野も扱いますから、その両者をバランスよく教育できます」
「意思伝達能力の養成にも力を入れています。現代のモノづくりにおいて、1人だけで出来ることなどまずあり得ません。数十人(ときには数百人)でプロジェクトを組むこともあり、技術者・研究者間のコミュニケーションは重要なスキルになりますからね」

なお、法政大学機械工学科は2つの専修からなっている。
機械工学専修と航空操縦学専修だ。
このうち後者は、機械工学を学びながら航空機の操縦免許取得をめざすという全国的にも珍しいユニークな専修として知られる。

「2つのそうぞう力」を養いつつ自ら考えながら動く

法政大学機械工学科における学部生の研究室配属は3年次後期からで、新井先生の研究室でも例年12~15人の学部生を受け入れている。

「3年次後期に配属になると、まず機械工学について基礎力学から復習し、あわせて先輩大学院生や学部生の研究実験を手伝って、その手法を身につけてもらいます。そして4年次になると、それぞれのテーマで卒業研究に入ることになります」

なお新井研究室の卒研のテーマには、先に述べた衝突実験や新素材開発のほか、「攪拌」(かくはん)や「サンドエロージョン(粒子衝突)」などもある。
こうした学生・院生たちへの指導方針について聞くと――

「自ら考えて自ら動くというのが基本となる指導方針ですね。よく『百聞は一見にしかず』といわれますが、わたしは『百見は一動にしかず』と言っています。ほかの人が工作機械を操作しているところを百回見ても、操作できるようには決してなりません。自ら動いて操作してみることしか方法はないのです」
「わたしは研究室のモットーに『2つの“そうぞう力”を養う』というのを挙げています。『創造力』と『想像力』のことで、将来エンジニアとしてモノづくりに携わっていくためには、この両者の力が必要不可欠だと思うからです」

こうした実践的な考え方・研究手法は新井先生自身が学生時代から大学院生時代にめぐり会った4人の恩師から受けたものだとも。
それを21世紀のいま学ぶ理工系学生たちに継承しているのだ。

こんな生徒に来てほしい

やはり「そうぞう力」豊かな人ということになりますか。
わたしの小学生時代、クラス目標に「なぜだろう。考えてみよう。わかった」と掲げられたことがありました。
これは、いまだに忘れられません。
これに「うれしい」をつけ加えて、そのうれしさの意味が実感できる人にぜひ来てほしいと思いますね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。