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GOOD PROFESSOR

国際基督教大学
教養学部 言語教育デパートメント

富山 真知子 教授

とみやま・まちこ
1975年国際基督教大学教養学部語学科卒。’79年米カリフォルニア大学ロサンゼルス校大学院修士課程第2言語としての英語教育修了。’88年米ペンシルベニア州立大学大学院博士課程応用言語学修了。以後アメリカでの英語教授経験をへて、’91年東洋女子短期大学講師。’92年東洋学園大学助教授。’96年同教授。’98年国際基督教大学教養学部語学科准教授。’01年同教授。’08年学部改編により現職。
大学英語教育学会賞(’07年)。主な著作に『ICUの英語教育』(編著・研究社)『第二言語習得研究の現在』(大修館書店)『Second Language Attrition in Japanese Contexts』(イギリスで出版・前著ともに共著)などがある。

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能動的に英語で学ぶための「英語教育」「言語学」

富山研究室のあるICU教育研究棟
国際基督教大学正門

国際基督教大学(ICU)といえば、外国語教育とくに英語教育のレベルが高いことで知られる。
その英語指導の中心的存在が、今回紹介する同大学教養学部の富山真知子教授である。

「外部の評価はともかく、ICUとしては、英語は『学ぶための道具』であるというとらえ方をしています。ですから『英語を学ぶ』のではなく、『英語で学ぶ』ことを目的にしています。そのために1~2年次の学生を中心に『英語教育プログラム』(ELP)に沿って教育指導し、習熟度の高い英語を身につけてもらいます」

ELPは非常に難易度の高い英語教育プログラムとして知られる。
富山先生もかつてはELPプログラムの主任を務めていた。

「たしかに決して楽なものとは言えません(笑)。ICUが求める英語とは、原書の専門書が読みこなせる語彙(ボキャブラリー)力と読解力、それに文法力になります。第2言語である英語をそのレベルまで習得するためには、それなりの努力が必要です。ただ幸いにと言うべきか、ICUに進学してくる学生たちはELPを受け入れられる資質がある人ばかりですので、指導する私たちも教えがいはありますね」

さらに、このELPプログラムをマスターすれば社会・世界に出てから必ず役立つスキルに将来なるはずとの確信を富山先生はお持ちのようだ。

もうひとつICUを特徴づけているものに「リベラル・アーツ教育」がある。
いかなる教育なのか? 富山先生にご説明いただいた。

「リベラル・アーツについてはいろいろな解釈と考え方があります。よく誤解されますのは、専門を深めないでいろんな学問分野をつまみ食いするものだという偏見ですが、それはまったく違います」
「私たちの考えるリベラル・アーツとは、『思考』をキーワードにして、世の中の事象を客観的に見る目を養い、それらを自分のなかで統合し分析して自分なりの考え方にまとめる力、あるいは問題が発生したときにその解決に向けて筋道の通った方法を見つける力――それらを身に付ける教育だといえます」

このリベラル・アーツ教育は、先のELPプログラムとも不即不離の関係にあるという。

「ELPは、ICUの教育理念であるリベラル・アーツを実現するための一環として存在しています。1~2年次にELPを集中的に特化して『学びのための英語』を身につけ、そのあいだに3年次以降に自分が学ぶべき専門を見極めてもらうという方法です。これがICU独自の特徴にもなっています」

では、具体的には何を学ぶのか?
ICUでは、文理の別に縛られない広い教養分野から32に及ぶメジャー(学科コース)が用意され、学生はその中から自分の興味と関心のあるメジャーを選択して学び、リベラル・アーツ教育が体現されていく。

話せるだけのネイティブスピーカーは言語喪失しやすい

戦後史の積み重ねを象徴する大学本部棟
他大で見ないほどに開放的なキャンパス

ここで富山先生自身が担当しているのは「言語教育メジャー」である。

「言語教育メジャーでは、①母語としての日本語②第2言語としての英語③第2言語としての日本語――が教育と研究の柱になっています。ここでは文学作品などを通して教育や研究をするのではなく、言語そのものに着目した言語学を基盤にしています。わたしが担当しているのは②の『第2言語としての英語』教育でして、学生には英語をどのように教えたらいいのかという理論と実践の講義をしています」

富山先生の場合、この英語教育の実践過程がそのまま学術研究のテーマになっていくことになる。
さらに、先生にはもうひとつの研究テーマがある。
それは「言語の喪失」だ。

「これは非常に新しい研究分野になります。たとえばネイティブスピーカー並みに外国語を話せていた帰国子女が、日本に帰国してしばらくすると外国語を忘れてしまうという現象があります。何故こういうことが起こるのか? それを長期的に追跡しながら心理学的視点で研究しています」

グローバル化が進む時代において非常に興味深い研究だといえよう。
まだ研究途上だが、いくつかの傾向はわかってきたと語る。

「小学校の低学年までに帰国した人や、話すことだけを覚えて読み書き能力を身に付けていない人ほど忘れやすい傾向があるようです。ただ、これは人によってばらつきもあり、一概にはいえないのですが……」

この分野はまだ研究者が少なく、富山先生はパイオニアとして牽引する立場にある。
その後の研究成果に大いに期待したい。

自らを客体化させていく研究プロセスこそが大事

三鷹・武蔵境・調布の3駅と結ぶバス便

ICUではゼミ演習制を採っていない。
そのため教員と個々の学生が交わるのは4年次の卒業論文指導の際となる。
富山先生も例年5~10人の学生たちに卒論指導をしている。

「各学生の卒論については、わたしの専門である英語教育・言語学の分野からそれぞれが希望するテーマで作成するというのが原則です。ただ、それが卒論にふさわしいテーマであるのかどうか、研究論文として成立するのか? そうした疑問のあるときは、わたしの方からテーマや研究手段についてサゼスチョンすることもあり得ます」

卒論指導でいちばん苦労し気を付けていることは、いかに研究の焦点を絞り込んでいくかだという。

「学生の自由に任せておきますと、常識論・理想論だけで論述したり、あれもこれもと論点を取り込んでしまう傾向になりがちです。そこで、卒論のテーマが決まったところでプロポザール(研究提案書)に概要を書き込んで提出するのを義務づけています。この『書く』という行為は自らを客体化させますから、研究や論文作成でテーマを絞り込むのにとても有効なのです」

あらためて最後に学生に対する指導方針について語ってもらった。

「わたしが第一に重視するのはプロセスですね。たとえば卒論にしても完成したものをポンと提出するだけでは認められません。1年間かけた研究のプロセス、先行研究の調査からデータを集めて分析し統合して結論を導き出すまで――その過程こそが重要になります」

こんな生徒に来てほしい

ICUが求める学生像に「自覚的学修者」というのがあります。
自立(自律)性のある人ということで、これがないと本人が困ります。
これは高校までの、上から与えられる学習環境とはまったく違うという認識が必要です。
「受動的学び」から「能動的学び」への転換ともいうべきもので、そうした心の準備をして来てほしいですね。
だからといって、いまの高校での学習をおろそかにしても構わないということではありませんよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。