
國學院大學
経済学部 経済ネットワーキング学科
古沢広祐 教授
ふるさわ・こうゆう
1950年東京生まれ。’74年大阪大学理学部生物学科卒。京都大学大学院農学研究科(農林経済)博士課程研究指導認定。農学博士。目白学園女子短期大学助教授をへて、’95年より現職。「環境・持続社会」研究センター(JACSES)代表理事。
著作は『共生時代の食と農』(家の光協会)『共生社会の論理』(学陽書房)『地球文明ビジョン』(NHKブックス)など多数。
「FURUSAWA SEMINAR SITE」のURLアドレスはコチラ→
http://kuin.jp/fur/kaleido.html
「環境」「持続社会」問題への学際的アプローチ


経済学というと座学中心のイメージが強いが、経済学部にあって「現場主義」を標榜するユニークな学科が存在する。
國學院大学経済学部経済ネットワーキング学科がそれだ。
同学科教授の古沢広祐先生にその特徴などについて伺った。
「本学の経済ネットワーキング学科は、経済学をベースにして、隣接するさまざまな諸学問の領域を学際的に取り入れて、多様な問題について総合的な視点で研究しています。この学科のスローガンは『現場で学ぼう』で、学際的研究と教育の柱になっています。課題を多角的にとらえるために、現場を知って現場から学ぶという方針です。その取り上げるテーマは、『地球環境と開発』『地域経営と福祉』それに『情報メディア』まで非常に多彩ですね」
とくに「フィールドスタディ』の授業では、日本国内はもとより中国や東南アジアの諸国にまで赴く。
まさに「現場主義」が体現されているわけで、これまでの経済系諸学科にはあまり見かけない画期的な学科といえよう。
「いま世界は激しい変動のなかにあります。その現場にあって、立ち、見て、考える――その意義は大きいと思いますね」
そう語る古沢先生自身は現在、学外のNPO法人「環境・持続社会」研究センターの代表理事を務めている。
この研究センターでは、『環境』と『持続社会』についての研究成果を現場の政策等に反映できるように、研究リポートやシンポジウム・セミナーを通して提言をしている。
これまでに『開発援助プロジェクトに関する政策協議』『開発による環境への影響の回避・最小化』『炭素税問題』『温暖化政策』への提言などを発表してきた。
「環境社会学」「エコロジー」「農業経済学」そして「共存学」


実はその「環境」と「持続社会(サスティナブル)」が、古沢先生の専門分野だ。
「『環境の世紀』といわれる21世紀にあって人類活動の拡大で地球環境の問題が深刻化しています。そこで私は、『気候変動問題』『食料と農業問題』などを研究テーマにしています。食料と農業問題の研究を通して、我々人類の生活や生命に直結する問題も見えてきました。環境破壊を防ぐために、有機栽培による農業の普及も推進しています」
もうひとつの研究キーワードは「持続社会」だ。
「持続可能社会の循環・定常を実現するためには、どのような実践をすればいいのか? 環境政策として何をするべきか? こうしたことが研究テーマになります。たとえば炭素税(環境税)を導入して低炭素化社会を目指すようなことですね。こうしたことは、国際的な協力のうえで実施しないと意味がありません。その一方で、地球上の人口の半分以上が飢えに苦しんでいる現実もあります。その国際援助のあり方についても並行して考えなければなりません」
古沢先生がひとつの課題について研究していると、派生的にさまざまなテーマが浮上してきて、研究フィールドは自然に広がっていくという。
現在のところ先生が手がける研究領域を列挙すると、「環境社会経済学」「地球環境・エコロジー問題」「農業経済学」「NGO・NPO・協同組合論」ということになる。
「このほど学内の研究開発推進センターに『共存学』という学際的研究のプロジェクトを立ち上げ、そのリーダーを務めています。いま国際社会には宗教、政治、経済、文化、歴史的な事情などで対立しているところがありますが、立場の違うお互いの存在を認めて尊重し合い、そのうえで共存の道を探っていく。そうしたことが重要だろうと考えて研究を始めています」
これまでの古沢先生の広範な研究領域に、またひとつ「共存学」が加わったわけだ。
ゼミ演習にもまた「現場主義」「自主性」が貫かれる

國學院大経済学部の専門ゼミ演習は、3・4年次学生が対象である(2010年度から2年次後期からが対象となる予定)。
その選抜方法は古沢先生と現在のゼミ生による面接だそうだ。
経済ネットワーキング学科の方針が「現場主義」であるなら、ゼミもまた「現場主義」が貫かれている。
環境問題などをテーマにしたいくつかのイベントへの参加や、農村体験を中心にした夏合宿などの実体験メニューがそのゼミ活動のなかに組まれている。
これに3年次はグループ研究、4年次には卒業研究・論文の作成が加わってくる。
「夏合宿はゼミ生の数が多いので、3年次と4年次の合宿を別々に行なっています。合宿場所も時々変えて、ときには集合日時だけを決めて、各自で現地に集合してもらうこともあります。数年前の豊岡(兵庫県)での合宿のときは、『青森から豊岡へヒッチハイクしています!』の看板でアピールしながら頑張ってヒッチハイクでやって来た青森出身のゼミ生もいたくらいです」
ゼミの合宿先に各自で現地集合するというのは面白い試みである。
ちなみに09年の夏合宿は、3年次が八千穂村(長野県)での有機農業、4年次は昭和村(福島県)での地域おこしを実地体験した。
3年次のグループ研究は、①企業と環境②生物・森林・農業③循環型まちづくり④国際問題――の4グループに分かれて研究し、最終的にはゼミ生がそれぞれで「ゼミ論」にまとめる。
そのゼミ論をさらに深化させて4年次の卒業研究・論文につなげるゼミ生も多いという。
そうした学生指導について古沢先生は次のように話してくれた。
「学生たちの自主性を育てたいと思っています。それもただ突き放すのではなく、学生たちが研究し考えるための題材や情報はこちらから提供します。その中から各学生が『感じる』問題について自主的に考えてくれればいいと思います。大学4年間でこれを研究したと実感できるものにしてほしいですね。わたしのゼミ生についていえば、各自が自分なりのテーマを見つけて積極的にやってくれています」
こんな生徒に来てほしい
大学とは、専門を深めていく場であると同時に、いま実社会で何が起きているのか、そうしたことに対する「感性を磨く場」でもあります。
そのためにも、若い人たちには世界を見る目をしっかり養ってほしいですね。
それには机の上の勉強も必要ですが、実社会の活動のなかに飛び込んでいく積極性も大切です。
私たち経済ネットワーキング学科にはそうしたチャンスも用意されています。
- 公開日: