早稲田塾
GOOD PROFESSOR

成蹊大学
法学部 法律学科

藤井 樹也 教授

ふじい・たつや
1966年兵庫県生まれ。’88年東京大学法学部卒。’93年京都大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。’93年京都大学大学院法学研究科助手。’95年三重大学人文学部専任講師。’96年同助教授。’01年大阪大学大学院国際公共政策研究科助教授。’02年米スタンフォード大・エール大などのロースクールで在外研究。’05年筑波大学法科大学院助教授。’07年同准教授。’09年より現職。
主な著作に『「権利」の発想転換』(成文堂)『憲法 Cases and Materials』シリーズ(有斐閣)『憲法(新版)』(前著ともに共著・青林書院)などがある。
藤井先生が運営する公式WebのURLアドレスはコチラ →
http://www.law.seikei.ac.jp/~fujii/

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憲法をめぐる日米英における比較研究

藤井研究室の入る10号館
成蹊大学キャンパス全景

今回紹介する一生モノのプロフェッサーは、成蹊大学法学部法律学科の藤井樹也教授である。
まずは先生が所属する法律学科の特徴から伺った。

「学科の規模が大きくないせいか、学生と教員の距離が近いという印象をもっています。学生たちが気軽に教員の研究室を訪ねて、教員のほうもすぐにその場で相談に応じたりしますからね。1年次前期から、憲法と民法の専門科目の授業と、入門ゼミが始まるのも特徴でしょう。授業では早い段階から専門科目の一般的な講義を受けて、少人数制のゼミ(演習)では指導教員を中心に個別的に詳しく検討していく、という方法がとられています。これは大学に入ったばかりの新入生にとっては親切な対応だと思いますね」

また1年次後期から始まる専門ゼミでも、1クラス最大で約30人までと少人数制が貫かれており、これも同学科の特徴だろうとも語る。
そんな藤井先生のご専門は「憲法学」。
研究テーマとしているのは「英米憲法と日本国憲法との比較」である。

「一般にこの国における憲法問題といいますと、第9条問題とか改憲問題とかが取り沙汰されがちですが、憲法学で取り上げる問題には他にもさまざまなものがあります。日本国憲法は人権論と統治機構論の2つの分野からなりますが、わたしは主に人権論を中心に研究しています」

こんなに違う! 日米英における憲法判例

歴史を感じさせる成蹊学園本館
成蹊大学生の知の泉・情報図書館

人権の保障については日米双方の憲法ともに高らかに謳っている。
しかし、一般に想像される以上に両者の規定は体裁からして大きく違っているという。

「アメリカではどのような問題が起こっていて、米国憲法が保障している権利はどう解釈されているのか? そして同じ問題を日本ではどう解決しているのか? そうしたテーマを比較研究しています」

日米の権利をめぐる問題で、様相が著しく異なるテーマのひとつとして「銃所持」がまず挙げられよう。

「日本をはじめ多くの先進諸国では銃所持を厳しく規制していますが、アメリカではこれが国民の権利として保障されています。アメリカ連邦憲法修正2条には『人民が武器を保有し携帯する権利はこれを侵してはならない』と明記されています。殺人事件の遠因として銃所持を規制しようという動きはアメリカにもありますが、思うように進展していません。その一因はこの条文があるからです」

銃規制に関してアメリカ連邦最高裁判所は、’08年と’09年に注目すべき2つの判決を下している。
銃所持について、ひとつは「過剰な法規制は違憲だ」という判決で、もうひとつが「規制を拡大する法解釈を認める」という判決であった。

「銃規制という点でテーマが共通する2つの事例で、連邦最高裁が一見すると正反対の判断を下したのです。これは憲法規定に正面からぶつかっていくと前者の判断になり、いろいろ工夫をして憲法の規定に衝突しないようにすれば後者の判断が導き出されるということにもなります」

法律について憲法違反の判断を最高裁が下すことなど、日本では珍しいことだ。
しかし法律・憲法をめぐる国ごとの文化的事情等には、事ほどさように大きな違いがあるのだ。
こうした憲法をめぐる判例や課題について、日米間およびイギリスまで含めた比較研究が藤井先生の研究テーマになっている。

「イギリスは憲法典をもたない不文憲法の国ですので、統治形態など日本とはかなり違うところが多くなります。それでも社会問題などは似たようなことが起こってきますから、それらを双方の国がどのように解決しているのかを比較しています」

最新の判例を読むことで始まる憲法学ゼミ

成蹊正門へと続くケヤキ並木

成蹊大学法学部法律学科の専門ゼミは1年次後期から始まるが、藤井先生が担当しているのは3~4年次のゼミである。
そのゼミの具体的な内容については――

「わたしのゼミでは最新の憲法判例の講読をテーマにしています。3・4年次とも前・後期に分けて、各期に1年分の判例を講読することにしています。ですからゼミの2年間で直近4年間の判例を知ることができることになります。授業で使う憲法の判例集もありますが、どうしても収載されている判例は出版以前のものばかりです。そこで最新の判例を読むことで、教科書では得られない知識を補うようにしているのです」

藤井ゼミではそれぞれの判例について、グループ別に裁判での事実関係と判旨(判決の内容)、それに関連する過去の判例と学説を調べ、さらに視覚資料も集めて発表するスタイルで進められる。
新しい判例を扱うだけに、ゼミ生たちの記憶に残っている裁判事例も多く、みんな関心は高くて熱心だという。
あらためて学生たちへの藤井先生の指導方針については次のように語ってくれた。

「伸びる人というのは、好奇心が旺盛でいろんなことに関心を示す人ですね。未完成なところが多少ある人のほうが大学では伸びるような気がします。そういう人は気持ちもまっサラで、新しい知識をスポンジのようにどんどん吸収していきます。そんな可能性豊かな人の後押しができればと思っています」

また、藤井先生は視覚資料などを多用して、少しでも学生たちの興味をひく授業内容を常に心掛けているという。

「これまでいろんな大学で授業をしてきましたが、そのたびに学生の反応を見ながら講義内容を工夫してきました。わたしの今日の方法は、これまで授業を受けてくれた学生たちから教えられたと思っています。少なくとも、わたしの講義を受けたせいで憲法が嫌いになるというような学生が出ないようにしたい(笑)――そのように思ってやっています」

こんな生徒に来てほしい

まず、ある考え方に固まっていない人。
勉強の好き嫌いはともかく、好奇心をもって物事に取り組める人。
好奇心をもって勉強に取り組みながらも、どこかに「遊びの心」があって余裕のある人。
挙げればキリがないですが、そんな人がいいですね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。