早稲田塾
GOOD PROFESSOR

武蔵野大学
人間関係学部 社会福祉学科

川村 匡由  教授

かわむら・まさよし
1946年、静岡県生まれ。’69年立命館大学文学部卒。読売新聞記者などを経て、’94年つくば国際大学産業社会学部教授。’98年武蔵野女子大学現代社会学部教授。’99年早稲田大学大学院人間科学研究科博士学位取得。博士(人間科学)。’03年武蔵野大学に校名変更。以後、現職。
「福祉デザイン研究所」代表。地域サロン「ぷらっと」主宰。行政書士有資格者。山岳紀行家。
著作は『地域福祉とソーシャルガバナンス』(中央法規)『社会保障論』『新・介護保険総点検』(以上ミネルヴァ書房)など多数。
「川村匡由+福祉デザイン研究所」のURLアドレスはコチラ →
http://www.geocities.jp/kawamura0515/

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「現場発信の福祉」の実践的研究

川村研究室のある武蔵野大学7号館
武蔵野大学の正門

今週の一生モノのプロフェッサーとしてご紹介するのは、「武蔵野大学にその人あり」と知られる人間関係学部の川村匡由教授。
社会福祉、とくに社会保障・高齢者福祉・地域福祉に造詣が深く、研究実践者でもある。

具体的には、福祉の研究所や地域サロンを主宰・運営し、各種団体の委員なども多数務め、これまでに著した著作は160冊に及ぶ。
元社会福祉士試験委員で、現在も学会活動や各種委員会・会議、研修・講演、現地調査で全国、さらに海外にも飛ぶ。


そんな川村先生の社会福祉活動の規範は、①高齢者を孤立させない②活動組織のネットワーク化を図る③地方の活性化を考える――の3つに集約される。

では、それぞれの理念と実際について、先生のことばを交えながら紹介してみよう。

①高齢者を孤立させない
「今この国では伴侶を失い、子どもと離れて独居する高齢者が増え続けています。街なかで孤立して暮らす高齢者が安心して生活できるよう、環境を整えなければいけません。しかし行政サービスにも限界がありますので、もっと地域の人と人とのつながりによって助け合っていかなければなりません。今であれば、団塊の世代が中心になって支えるべきです。その彼らが高齢になったときには、さらに次の世代が支えるというように、老若で順送りしていくのが理想的でしょう」

川村先生が代表を務める「福祉デザイン研究所」は、高齢者問題や地域福祉について、全国の研究者が調査・研究しているところとして、つとに知られる。

また、東京・武蔵野市に開設された地域サロン「ぷらっと」(現在は土・日曜のみ開所)では、高齢者がひとりで文字どおり「ぷらっと」立ち寄って交流することができる居場所だ。
この「ぷらっと」を、川村先生は高齢者を孤立させないための「宅老所」と位置付けたいとしている。

②活動組織のネットワーク化を図る
「その地域の福祉活動組織をネットワーク化させて情報交換し合い、行政が無視できない大きな存在にさせる必要があります。情報交換についても、単に中央の情報を地方に送るだけでなく、地方の情報を中央・行政に送る双方向性の視点が大切ですね」

川村先生は大学教授の肩書きのほか、関係学会会員や自治体の委員会委員など15の肩書きを持っている。
いずれも組織のネットワーク化を図り、自分の理論を実践し検証するフィールドワークのひとつだ。
また、武蔵野市で組織化された「シニアネットむさしの」などにも参画し、ネットワーク化を実際に始めてもいる。

③地方の活性化を考える
「地方における高齢者問題で深刻なのは『限界集落』(65歳以上の人が人口の半数を超える集落)の存在です。ただ、そうした集落でも、観光と福祉を結び付けることで活性化・再生が可能なケースは多いとも考えています」

実際、「観光+福祉で再生への道筋を」という川村先生の呼び掛けにより、スイスの限界集落再生の先進事例を参考に、群馬県の某限界集落において再生の道を探る現地調査が始まっている。
このほか、全国の関係自治体を対象に「平成の大合併」による地域福祉への影響調査も行っている。

福祉現場を知る院生との交流が盛んなゼミ演習

緑陰うれしい武蔵野大学キャンパス
2年次ゼミコンパでのスナップ

’03年、武蔵野大学は、それまでの武蔵野女子大学から現在の校名に変更し、男女共学化が図られた(男子学生の入学は’04年度から)。
川村先生は――

「共学化した第1期卒業生が卒業してまだ間もないですから、その彼らが社会の中堅で活躍するようになって、はじめて武蔵野大学の新たな伝統が一般に認知されていくのでしょう。ですから、今はその伝統を一生懸命につくっている時期だと思っています」

なお新生・武蔵野大学では、学生が規定の全単位を取得しても、GPA評価(アメリカの大学における学生評価の方法)が所定の基準点に達しないと卒業できない制度を採用している。
これは、少子化による「大学全入」といわれる時代にあって、「学生の質」をこれ以上落とさないという大学側の決意表明でもある。
それがまた、武蔵野大学の新たな伝統をつくっていくことにもなっていくのだろう。

1人ひとりの現場から学んでいく福祉研究実践

地域サロン「ぷらっと」の拠点
「ぷらっと」地域住民と交流の席で

武蔵野大学社会福祉学科の「専門ゼミ演習」は3年次から始まる。
川村ゼミでも例年10人前後の学部生を受け入れている。
その多くは高齢者福祉や地域福祉・国際福祉を選択するという。

「わたしのゼミの特徴は、大学院生との交流を盛んにしていることです。院生のなかには福祉現場を経験している社会人が多いので、ゼミのときでも合宿でも一緒に交流するなどして、いろいろと影響を受けているようです」

3年次のゼミでは、前期に社会保障と高齢者福祉・地域福祉に関し論理的な思考力を養う。
後期には、福祉施設等に実際に出向いての現地調査やインタビュー取材、論文の執筆法などの共同研究を進める。

そして、4年次の1年間は個人研究として卒業論文の作成に当たるほか、就職活動や大学院進学の指導も行なう。
こうした学生たちへの指導方針について川村先生は次のように語る。

「どんな時代や世の中になっても希望を失わないこと。『人生到るところに青山あり』の気概で精いっぱい努力すること――こうしたことを常に言い続けています。さらには、一人ひとりの人に寄り添う心を持って現場を大切にすること。頭でっかちにならず『現場から学べ』ということが福祉においては大事です」

ここで、川村先生から、「就職活動ワンポイント・アドバイス」をひとつ。
「就活には必ず名刺を携行すべし」

くわしい説明は割愛するが、就活でのオリジナルな名刺の効用は想像以上のものがあるという。
元ジャーナリストとして世事の裏の事情まで知り尽くす川村先生ならではの実践的なハウツー伝授だ。

また、川村先生の趣味は山歩きだという。
ただ何事にも心血を注いでしまう先生だけに、この趣味もかなり本格的に凝っているようだ。
『ふるさと富士百名山』(山と渓谷社)など3冊の著作、さらにWebサイトでの山のエッセーも発表しているほどなのだ。

こんな生徒に来てほしい

健康でやさしい気持ちさえあれば、だれでも福祉の道はひらけます。
決して楽な道ではありませんが、その努力は必ず自分に返ってきます。
じつは福祉分野は学際的な領域でして、法律から哲学・政治・経済まで学ぶべきテーマが意外なほどたくさんあります。
それなのに、福祉を現実にめざしてくる学生にはやや線の細い人が多くて、それが気になるところではありますね。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。