早稲田塾
GOOD PROFESSOR

埼玉大学
経済学部 社会環境設計学科

三宅 雄彦 教授

みやけ・ゆうひこ
1969年福岡県生まれ。’00年早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。’95年早稲田大学法学部助手。’02年埼玉大学経済学部専任講師。’04年同助教授。’09年より現職。
主な著作に『社会環境設計論への招待』(八千代出版)『憲法のレシピ』(前著ともに共著・尚学社)『憲法学の倫理的転回』(信山社・近刊予定)などがある。
「三宅雄彦のページ」のURLアドレスはコチラ →
http://verfassungslehre.hp.infoseek.co.jp/

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「哲学」に基づく行政法・憲法学研究

三宅研究室の入る経済学部研究棟

41歳。三宅雄彦教授が在籍している埼玉大学経済学部は、他大学の経済学部とはやや様相を異にしているという話から始まった。

「本学の経済学部は、かつての文理学部を引き継いだもので、社会科学の総合学部という位置付けになっています。したがって現代社会が抱える諸問題について、学際的な視点で研究している学部です」

埼玉大学経済学部は「経済学科」「経営学科」「社会環境設計学科」の3学科からなる。
なかでも社会科学的研究の色彩が濃いのが社会環境設計学科だ。
三宅先生は同学科の所属だ。

「社会環境設計学科では、我々を取り巻いている社会環境について経済学・経営学・法学・政治学などの手法を通して検討しています。たとえば環境政策や社会福祉・社会保障、さらに女性の子育て支援についての学際的な観点からの研究、あるいは近隣の自治体との政治学・行政学の共同研究などもあって、全国的にも非常にユニークな学科ではないかと思っています」

ちなみに埼玉大学経済学部では入学時に学科選択はしない。
入学からの1年間は経済学や経営学・法学の基本科目を学ぶ。
そのうえで2年次から学科を選択して専門の学びに入るスタイルをとる。
学生たちにも、この1年間の「猶予期間」で目標がしっかり定められると好評のようだ。

ニッポン的論理の再検討から始まる「公務員改革」

小雨けぶる埼玉大学正門

ところで三宅先生自身は法学者である。
その専門は「行政法」と「国法学」(憲法学とほぼ同義)だ。
行政法における具体的な研究内容は、おもに行政機関が国民に対して行政サービスを実施するときのルール適用のあり方、そのルール活用の実態についての研究が中心となる。

「人が罪を犯すと、法の規定によって逮捕され、裁判にかけられて刑罰が課せられます。このとき法律に基づく刑罰の制度があるから犯罪の抑止につながっているかといえば、そう単純な話ばかりとはいえません。成文化された法律や刑罰以前に、『犯罪を行なってはならない』という道徳観や倫理観が人々の心のなかに内面化していることも大事な視点となります。そうしたことも研究しています」

さらに、こんな研究例についても話してくれた。

「新しい法律ができたり改正されたりすると、官報によって国民に伝達する『公布制度』というものがあります。これまでは――官報で伝達することで事たれり――とされてきました。しかし、その法律内容について国民がしっかり認識しないと、法律自体が存在しないことと同じという議論も成り立ちます。そこで欧米(とくにドイツ)の制度や学説を参考にしながら、公布制度を通じて国民が法律を知ることの意味について改めて読み替えるという研究を行っています」

こうして三宅先生の論考は、法律一般の枠から哲学的ともいえる領域にも入り込んでいく。

「これまでこの国の常識として法律学と哲学とは関係のないものと見られがちでした。しかしドイツなどの事情を研究していますと、じつは法律学と哲学とは密接な関係にあることが分かってきます。つまり『哲学に学びながら法律学を解釈する』というわけです。わたしもこの方法を用いて研究を進めていきます」

そんな三宅先生の新たな研究テーマは「官僚」制度だという。
なかでも注目されるのが「公務員改革」についてだ。

日本における官僚・公務員の給料を「俸給」といい、かつてその年金は「恩給」と呼ばれてきた。
わざわざ民間労働者の給料・年金と違う規定をするのはなぜか?
その根底には、官僚は国家機構のなかに組み込まれた存在であり、利潤を追求する私企業の労働者とは違うというニッポン的共通認識がある。

「官僚の本義は国益(国民全体の利益)の追求にあり、だからこそ高い倫理観が求められるのであって、効率性を少しぐらい犠牲にしても大した問題とはならない――こうした考え方が明治以来の日本では当然視されてきました。しかし『公務員に効率性を第一義に求めることは、国民全体の利益の追求を犠牲にしはしないのか』、これを根本的に検討し直さないままで、真の公務員改革など出来るはずもない――これが結論としてわたしの主張するところです」

このほかEU(欧州連合)や国際的な機構などの成り立ち、あるいは精神科学的教育学との関連における憲法理論の再構築――など関連テーマにも旺盛な研究意欲を見せている。

「法律学の心」をオーソドックスに学んでほしい

埼玉大学の「経済学部棟」建物

埼玉大学社会環境設計学科の専門ゼミ演習は2~3年次学生が対象で、4年次は卒業論文の作成になる。

「わたしのゼミでは法律学をオーソドックスに学ぶという姿勢でやっています。具体的には、2~3年次合同でグループをつくってもらいます。それぞれが最高裁判所の判決を取りあげ、その裁判が下級審から最高裁判決に至るまでの経緯を追い、それをレジュメにまとめて発表していきます。それらをゼミ生全員で討議するというスタイルですね」

2~3年次ゼミ生が合同でグループ研究することで、ゼミ内に先輩と後輩のいい関係も醸成されていく。

あらためて学生たちへの指導方針については――

「この社会環境設計学科を卒業してロースクール(法科大学院)などに進む人は少なく、公務員になるか民間企業に就職する人が大半です。そういう人たちに、わたしのゼミで法律の何を学んでほしいのか? それは、他人の意見を聞いて理解し、人を思いやる心を育ててほしいということに尽きます」

たとえ地方公務員となっても立法の仕事に携わることもあり得るだろう。
また民間においても、ますます法律の条文解釈のあり方が企業・市民活動の方向を決めることにもなってきている。
はからずも将来そうした決定的な立場となったとき、法律一般への基本的なリテラシーのある無しで、その成果に大きな違いが出ることだろう。

「わたし自身も含めてビジネス・社会経験に乏しい教員は、社会一般について経験的な話をすることがあまり出来ません。どうしても理念的・抽象的・体系的な話が多くなってしまいます。言い方を替えれば、それは青くさい法理論なのかもしれません。しかしまた、その青くささをじっくり伝えることも大学教育では重要なことではないか? そう開き直ってやっているわけですね(笑)」

こうして「法律学の心」を一般学生(法曹界志望以外)に教える意義について熱く語ってくれた。

こんな生徒に来てほしい

高校時代の勉強について、大学の受験科目だけを勉強するのではなく、すべての科目に関心と興味をもって勉強してほしいですね。
大学での勉強、あるいは社会に出てからも、自分の関心がない分野にかかわる機会は意外と多いものです。
ですから何事にも興味をもって、しっかり学んでおくことが大切だろうと思います。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。