早稲田塾
GOOD PROFESSOR

東海大学
情報理工学部 情報科学科

内藤 誠一郎 主任教授

ないとう・せいいちろう
1948年茨城県生まれ。’74年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。’74年日本電信電話公社(現NTT)電気通信研究所入所。’83年米メリーランド大学客員研究員。’85年NTT基礎研究所研究グループリーダー。’99年NTTコミュニケーション科学基礎研究所研究部長。’00年東海大学工学部電気工学科教授。’01年より現職
電子情報通信学会学術奨励賞(’82年)。NTT研究開発本部長表彰報道特別賞(’89年)
主な著作に『パターン認識の新たな展開』(電子情報通信学会)『神経情報科学入門』(コロナ社)『錯視の科学ハンドブック』(東京大学出版会)などがある(著作はいずれも共著)。
内藤先生のURLアドレスはコチラ→
http://www.snaito.et.u-tokai.ac.jp/snaito/

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「フリッカー視覚処理」計測法の世界的研究者

内藤研究室の入る9号館建物
「重力レンズ錯視」の一例図

「情報」に特化した専門学部として世に知られる東海大学情報理工学部は、「情報科学科」と「コンピュータ応用工学科」の2学科からなる。
今週登場願う内藤誠一郎先生は情報科学科の主任教授である。
まずは学部と学科の特徴から伺った。

「この学部の前身は『電子情報学部』で、発足当時は6学科からなっていました。’08年に情報通信系の4学科が学部として独立し、現行の2学科による『情報理工学部』になったという歴史的経緯があります。『情報科学科』は生命・脳科学・生体など理学的研究を特徴とし、『コンピュータ応用工学科』はロボット・機械メカニックなど工学的研究を特徴としています」

両学科とも専門技術の習得だけでなく、豊かな人間性の育成も教育目標に掲げている。
内藤先生はITを中心とした工学系の画像処理技術開発に長く携わってきた。
しかし、その開発研究には限界を感じるようになっていたとも語る。

「つまり原理的なことが十分に解明されていないのに、画像処理のアルゴリズムを新たにつくり出しつづけるのは無理があると感じました。それで人間に立ち返って、視覚から認知のシステムについて知るべきだと考え、そちらの研究に方向転換したのです」

そうした経緯もあって、いまの内藤先生のご専門は「視覚情報処理」と「認知科学」なのである。
なかでも最近のおもな研究課題としているのは「錯視」だ。

「錯視」とは、人間が目で見たときに起こる錯覚のことで、図形や線が周囲の形によって実際とは違って見えることをいう。
左に掲げたのは内藤先生が発見した「重力レンズ錯視」の一例を図で示したものである。
このなかに隠れている平行四辺形が君には見えてくるだろうか?

「錯視というのは形や色の認識を間違えることですから、その間違いの原因について追究していくことで、視覚から認知に至るヒトの脳のシステムが解明されると考えられています。曲がっていないものが人間の目に曲がって見えるというのは、脳の機能の何らかの仕組みを示しています。それを欠陥ととらえるのではなく、逆に仕事の能率がよくなるなどへの効果が期待されています」

工学研究と理学研究との違いを実体験的に総括してみると

東海大学湘南キャンパス点描
美しい並木の緑陰が涼しい

この「錯視」に関連して、内藤先生の研究テーマは「色彩の等輝度画像」についてへと広がっていく。

「わたしの研究は視覚機能の入り口にあたる初期視覚系の研究になります。色彩の等輝度画像による研究というのは、明度が同じで異なる色を用いてその見え方についての実験や分析をするものです」

そのひとつに画像をフリッカー(ちらつき)加工させると、視覚機能に特異な障害が起こる現象(かつてテレビアニメ「ポケットモンスター」のフリッカー画像を視聴していた子どもたちが光過敏性発作を引き起こしたことでも知られる現象)がある。
その計測が世界中の研究者の懸案事項であった。

その計測方法のアイデアを、世界に先駆けて発見したのが内藤先生なのだ。
この新発想の将来への具体化についてはこれからの研究課題になる。

研究者生活を工学研究からスタートさせ、いまは理学分野での研究に転向して世界的実績を成し遂げてきた内藤先生だが、こんな述懐も聞かせてくれた。

「いうまでもなく工学の研究はモノづくりが基本です。あえて極端ないい方をすれば、工学研究の評価は将来いくら儲かるのかで測られるところがあります。その一方で理学の研究のほうは、人間や自然のなぞを解いて、純粋にサイエンスの進歩に貢献する色合いが濃いともいえます。両者は共通するようで、互いに相容れないところもあります。わたし自身は科学的解明のほうに価値観を見い出して、理学研究にいそしむことにしました」

1年生でも「雷プロフェッサー」研究室入りの道は用意される

キャンパス内にはドトールコーヒーも
最寄り駅は小田急「東海大学前駅」

東海大学情報科学科の学部生が各教員主宰の研究室に配属になるのは3年次後期からだ。
その配属人数は各研究室均等割りが決まりで、毎年度それぞれ10~12人が配属になる。


「3年次後期に研究室配属になると、まず週1回のゼミ演習で英文の文献講読を行ないます。それと並行して、それぞれの卒業研究のテーマを決めていきます。本人が希望するテーマを原則にしていますが、なかなか最近の学生は自分から『これをやりたい』というものも出てこないんですね(笑)」

卒研テーマについては内藤先生のほうから与えられることにもなっているようだ。
あらためて常日ごろの学生指導方針については次のように話してくれた。

「いわゆる『ゆとり世代』の学生たちの学力リテラシーにバラつきがあるのは事実なので、それぞれの学生に合わせた指導を心掛けています。一所懸命に研究に打ち込む姿勢さえあれば、学力とは関係なく評価するようにもします。また全体に英語力の弱い学生が目立つようになってきましたので、英語力をつける指導にも力を入れるようにしています。ゼミで英語の文献講読を重視しているのもその一貫です」

ちなみに今年度から東海大学情報科学科では新1年次学生の入門ゼミが各教員の研究室でなされるようになった。
従来型のマンモス教室での講義ばかりでなく、最前線である研究室の空気に新1年生のうちから触れるのはなかなかに面白い試みといえよう。

「大学教員の人間性に触れるという意味でもよい試みだと思います。その代わり遅刻してきたような学生には容赦なく怒鳴りつけて雷を落とすようにしています。そんな躾のような基本的なことから、大学生相手に指導しなければならないのかとも思いますけどね(笑)」

というわけで、新入生にとっては「非常に怖い」という印象がインプットされてしまっているらしい。
苦笑しつつも内藤先生はさらにこう続ける。

「実はわたしが学生だったころの指導教授というのが非常に怖い先生でしてね。勉強の初歩から礼儀作法に至るまで怒鳴りつけながら教え込まれました。しかし、そのおかげで社会に出てから大いに助かった経験があります」

そうした教え方を継承するのも教員としての義務だとも語る。

そんな一生モノのプロフェッサーたる内藤先生の姿がいまも印象に残る。

こんな生徒に来てほしい

正直いって、若者たちのハングリー精神欠如を感じてしまうことが昨今多くなりました。
ただ教える側がニッポン的現状を嘆いてばかりでいても能がないのも事実でしょう。
そこで、やる気さえあれば2年次の学部生でも(場合によっては1年次の学部生でも)研究室入りを認めるようにしました。
どうか、自らの夢に少しでも近づくために一生努力し続けることを惜しまないでほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。