早稲田塾
GOOD PROFESSOR

慶應義塾大学
経済学部

土居 丈朗 教授

どい・たけろう
1970年奈良県生まれ。’93年大阪大学経済学部経済学科卒。’99年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。’99年慶應義塾大学経済学部専任講師。’02年同助教授。’07年同准教授。’09年より現職。この間’01年米カリフォルニア大学サンディエゴ校大学院客員研究員。現在、一橋大学経済研究所客員研究員を兼務。ほかに財務省や内閣府、国土交通省の研究所・経済産業研究所・東京経済研究センターの委員・研究員も務める。
日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞(いずれも’07年受賞)。
著作は『地方債改革の経済学』『日本の税をどう見直すか』(前著ともに日本経済新聞社)『アリとキリギリスの日本経済入門』(ちくま文庫)など多数。
先生が主宰する「土居丈朗のサイト」のURLアドレスはコチラ→
http://web.econ.keio.ac.jp/staff/tdoi/index-J.html

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公共機関の「経済活動」を高める公共経済学

土居研究室の入る慶應義塾大学三田「研究室棟」
新たなシンボル「南校舎」建設が進む

今週の一生モノプロフェッサーは、わが国の経済学界における注目の若き論客の登場である。
政府省庁の各諮問委員など若くして数々歴任し、マスメディア等でも大活躍の慶應義塾大学経済学部の土居丈朗教授だ。
まずは、所属する慶應義塾大学経済学部の特徴から話していただこう。

「経済学の理論と応用をバランスよく教育していることでは国内の大学で一番と言っても良いのではないでしょうか。それは、経済学のあらゆる分野・理論から応用実践までをカバーできる教員が揃っているということでもあります。ここは日本最古の経済学部であり、その伝統と本学の看板学部であるという自負も特徴になるでしょうね」

また、OB・OGを含めた先輩と後輩の関係が濃密なのも慶應義塾大学経済学部の特徴だろうとも語る。
そんな土居先生の専門分野は「財政学」「公共経済学」「政治経済学」である。

といっても、これら3つは分断されているわけではなく、先生のなかでは一体のものとのことだ。
それぞれの研究内容について聞いてみると――

「政府や公共機関が日々行なっている外交や防衛・道路建設・教育などの行政サービスは主に税金で賄われています。これは見方を変えれば、政府・公共機関の経済活動であるともいえます。この経済活動をより効率よくするにはどうしたらいいのか? そうしたことを経済理論に基づいて研究しています」

ただ、これらは経済学・財政学からの視点だけではなく、政治政策や選挙制度などの視点も総合的に加味しなければならず、その様相は非常に複雑だとも語る。
各種の政府委員や経済研究所の研究員も務める土居先生は、具体的な財政政策へのさまざまな提言も行ってきた。

論客としてズバリ「消費税増税」を直言する理由

三田キャンパスの中心「中庭」
慶應義塾大学創設者を記念する「福澤公園」

そこで先生に、バブル経済崩壊から世紀をまたいで今日に至るまでの、この国の公共財政政策について分析していただいた。

「バブル経済が崩壊して不況になると、政府は大型の公共投資を実施しました。これ自体は経済学の理論上も間違っていません。ただ、投資先を、いわゆる過疎地域を重点的にし過ぎたため、その実行効果が思うようにならず好況に転ずることは適いませんでした。さらに大半のゼネコンがバブル期につくった負債のため経営体力を弱めていたことも、景気浮揚につながらない原因ともなりました」

そこに誕生したのが「構造改革」を旗頭に掲げた小泉純一郎政権である。

「小泉政権は国の借金を増やすだけの公共投資を止め、革新的な技術開発をめざす企業のテコ入れをして、その体力を増強するという政策を打ち出しました。これが世界的な好況と重なって、輸出関連産業を中心に売り上げが増えて、日本に好景気をもたらすことになりました。しかしこの政策は、一部好況で潤う富裕層と、好況・改革から取り残される層とに国民を二分することにもなったのです」

それがいわゆる格差社会を生んだとして批判の的となり、’09年の政権交代につながったというのが土居先生の見立てである。
ところで、土居先生は消費税増税を含む税制改革を訴えてはばからない代表的な論客のひとりでもある。
その主張を伺ってみよう。

「来る2015年から団塊世代の年金受給が始まろうとしていますが、その財源についての議論が未だなされていません。はっきり申して、消費税5%のまま乗り切ることはできないでしょう。増税は回避できないところまで来てしまっているのです。であるなら、増税幅をできるだけ低く抑えるなどの対策を事前に様々とることが望ましいわけです」
「このまま大衆世論に迎合して手をこまねいて回避しつづければ、2030年代には消費税30%時代が来ないとも限りません。我々に残された選択肢は2つしか残されていません。明日少しだけの増税をして小さな不況を我慢するのがいいのか? 明日の増税は見送って明後日になって大増税をして未曾有の不況・大恐慌に飲み込まれるのかということです」

互いに刺激し合い高め合っていく経済学のゼミ

最寄り駅のひとつのJR田町駅

慶應大学経済学部のゼミは3・4年次の学部生が対象で、3・4年次合同となる。

ゼミ内容は3年次ゼミ生の文献輪読から始まる。
文献輪読というと1冊の専門書を全員で講読するところが多いが、土居ゼミでは少し様子が違うそうだ。

「わたしのゼミでは、まず3年次のゼミ生に、個別で経済学の関心のある分野を聞いていき、そのテーマに関する書籍や論文を選りすぐってそれぞれ1つずつ読んでもらいます。その成果はゼミの時間に順番に報告され、4年次ゼミ生も交えた全員でディスカッションするのが基本スタイルです」

この方法により同年次のゼミ生間に互いに刺激し合い高め合っていく雰囲気が醸成されていく。
なお輪読発表に慣れない3年次ゼミ生のために、4年次ゼミ生がアドバイザーで個別に付くシステムなども土居ゼミの特徴らしい。

次いで3~6人のグループに分かれて、11月の学園祭「三田祭」での発表に向けたグループ研究を行っていく。
この学園祭における発表論文は「日本政策学生会議論文コンテスト」に応募されるのを恒例としていて、土居ゼミはその受賞常連組だという。
昨年度は最優秀賞をみごと受賞している。
インタビューの最後にあらためて学生たちへの指導方針について伺った。

「まずは自らの力で論理的に考えられるようになることですね。4年次に作成する卒業論文は自分ひとりの力で考えて書き上げなければなりませんから、その力を付けておく必要があります。学生の自由意志を尊重したいので、わたしの方からはあまり細かいことは言わないことにしています。ですから、学生はゼミで何をしたいのかなどをはっきりさせておく必要があると思います」

こんな生徒に来てほしい

やはり自らの力で論理的に考えられるようになりたいと思っている人ですね。
高校生まではその心構えさえあれば結構で、論理的思考の完成は大学に入ってからで十分だとも思っています。
大学に入って1・2年次の授業は地道な基礎固めのものですから、あまり面白くないものもあるかもしれません。
しかし3・4年次になって学問の奥深いフロンティアに入っていくために欠かせない基礎ですから、これによく耐えてほしいですね。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。